第29話 センス・ラビットート
センスはディゼルが手を止めたその一瞬で、腹部に光を帯びた蹴りをくらわせていたのだ。
その蹴りで、周囲の木々より10メルト程上空に打ち上げられていた。
「──ぐぅぅぅぅぅっ!!!! 何で教官がいるんだよ! それにあの女どもはギルドの受付をやってる奴らじゃねーか!!」
そう叫んだ後に、自分に蹴りをくらわせた張本人に視線を向けたが姿が見当たらない。
視界に捉える全てを確認したが全く見当たらない……。
「くそぉっ!! どこに行きやがったぁぁぁ!! あの銀髪女ぁぁぁぁぁ!!!!」
「──目の前しか見てないなんて視野が狭いな……」
「──!?」
ディゼルの頭上後方で、透き通るような声で少女は告げた。
その声に反応する様に振りむいた。
ついさっき、──本当に数秒前に、自分に蹴りを入れ、打ち上げたセンスがいつの間にか追い抜き、後方にいたのだ!
「お前!? いつの間に回り込んだ!!」
「だから、視野が狭いって言ったんだよ……。沈んどけ──」
センスはそう言うと、体を素早く一回転させ、獣幻の力の源である【
打ち上げられた時よりも強力なそれは、ディゼルを一直線に地上に叩きつけ、大きな衝撃と共にクレーターが出来上がっていた。
大ダメージを受けたディゼルはその場で完全に沈黙した。
ディゼルを沈めたセンスは地上にゆっくり降りながら下の様子を眺めていた。
「フィア姉とアミザ姉が吹っ飛ばした奴らは……まだ動いてやがるな……。まぁオレが地上に降りる頃には片付くだろ……」
センスからそう思われているとは知らず、立ち上がった冒険者の2人は、フィアとアミザに攻撃を仕掛けようとしていた。
「何あれ!? すごく丈夫じゃないっ? 結構おもいっきりの掌底だったのに……なんかショックだよ……うち……」
「それ分かるぅ〜……。私も結構魔力を込めた蹴りだったのに……。まぁ、ブランクかなぁ……? でも次は確実に眠らせてやるわ!」
そう決意すると、向かってくる2人の冒険者達に向かい、同時に行動した。
「このくそ女がーーーー! 叩き潰してやる!!」
さらに筋肉を黒く硬直させると、さっきとは比較にならない程の魔力を込め、倍ほどに巨大化した腕をアミザに放った!
だが、それを踊る様に躱すと、そのままの勢いで相手のこめかみ目掛け、最大出力ともいえる回し蹴りを叩き込んだ!
筋肉の男は回転しながら地面に叩きつけられ、ゴムの様に跳ね上がった──
アミザはそれを追う様にジャンプし、続けて頭を掴んで大きな音と共にそのまま地面にめり込ませた。
「もう、起きんじゃないよ……」
ひと言そう言うと、ピクリとも動かない男を見下ろしていた。
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