第60話

チュンチュンッ!青空が広がる日本。スズメの鳴き声で起きるというなんともベタな展開を迎えていた男がいた。


「これが言わゆる、朝チュン……」


一人で感動するのも程々に、横で規則よく寝息を立てている女の子に目を向ける。綺麗な白色の肌に思わず目を奪われる。


そして透き通るような美しい髪に自分の指を通すようにして撫でる。あんなに反抗していた猛獣が今は俺の胸の中にいるなんて……。


「ていうかまじで可愛すぎるだろー!」


俺は辛抱たまらずに、抱きしめてしまう。志乃ちゃんは苦しそうに顔をゆがめてから、目を覚ます。


「悪い、起こすつもりはなかったんだけどさ、志乃ちゃんが誘惑してくるから……」

「ん、んん?……おはよ。相模。そして朝からえっちだね」

「それは志乃ちゃんもだろ……」

「でへぇ……っ///」


そう言って、志乃ちゃんは俺の腰に手を回す。自分のものと言わんばかりに、締め付けるのだった。


「今日は遊園地に行こっか。志乃ちゃんが行きたいって言ってたしさ。平日だし、空いてるだろ」

「ゆうえんち……。行きたいっ!は、早く準備しよう!寝てる暇がもったいない」


そう言ってベットから出てしまった。もっとぬくぬくゴロゴロしていたかったのは山々だか、楽しそうな志乃ちゃんがそこにいるので良しとする。


◆◆

俺たちはホテルを出て、遊園地へと向かうためにタクシーに乗った。俺たちが携帯で遊園地のパンフレットを眺めていると、運転手のおじいさんが話しかけてきた。


「今日はご夫婦で遊園地ですか?」

「夫婦っ!?ち、違います。私たちはなんと言うか……あれです」


人一倍の反応を見せた志乃ちゃんが慌てて、否定する。このまま夫婦ってことでも良かったのだが、まだ志乃ちゃんはその気じゃないらしい。


なんだろう、友達とかか。俺とは恥ずかしいよな……。


「私たちは、カップルです。私はその人の彼氏です!」


そう言って握っている手を運転手さんに見せるようにしてあげるのだった。俺は驚いて志乃ちゃんの、顔を眺めると真っ赤になっていた。でもその顔はニタニタという言葉が似合う顔をしていた。


「彼女とか言っちゃったよ、相模!」


ニコニコして俺に報告してくる志乃ちゃん。なんかデレが加速してません?それに追いつくのは到底俺には無理なので、俺もテンションをぶち上げていくことにした。


「俺は志乃ちゃんの彼氏か……たまらん。こんな美人の彼氏なんて光栄だなぁ」


そんな風に俺たちが惚気けていると、運転手さんは大きく笑った。


「おー!お熱いですな。いい思い出になることを祈ってますよ。じじいも奥さんに会いたくなってきました!今日は早上がりします。」


そんなことを言っていた。俺たちはこの人みたいに爺さんになるまで、愛し合っているだろう。


だって俺には志乃ちゃん以外、ありえないから。


◆◆

星が欲しい。


よろしくお願い致します!


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