第47話
息が出来なくなって、意識が突然覚醒する。不規則に揺れる地面。頭がズキズキと痛い。私は誘拐されて……。
そう気づいた時には、手はくくられてあって地面に転がされていた。また、私はしくじってしまったのか……。
「もう、暗殺者辞めよう……」
かつては組織最強とまで謳われた私はこうして二回も捕まって、本当に情けない。いつまでもクヨクヨしていても仕方ない。が、私には疑問があった。
なぜ私は誘拐されているのだろう?と言うものだった。任務を失敗したから殺すために誘拐なんて、面倒なことはしないだろうし。
「もしかして……いや、もしかしなくてもだ」
自分で言うのもなんだが、相模は私に少なくとも悪い印象を持っていない……いや好きなんだろう。
その情報がバレているとしたら……?私という存在の価値が出てくる。相模はまんまと餌に釣られて、姿を現すだろう。
「いや全然いい……はず」
だって元々は殺すつもりだったんだし、相模が殺されたって、構わない……と思う。そもそも私にセクハラ紛いのこともしてきたし。
急に乗っている車にブレーキがかかる。もしかして相模が助けに来てくれたのか、という些細な期待をしてしまったが、ただ到着地に着いただけだった。
「……相模に助けて欲しいなんて、思ってないし」
そんなことを呟くように、自分が考えたことにツッコミを入れていると手錠に繋がった紐が引かれて、車の外に出される。
トラックの荷台から降ろされると目の前には太陽の光を、めいいっぱいに浴びた金髪の少年がこちらを向いて笑っている。
「久しぶりですね、No.18。元気そうで何よりです」
そう言って挨拶をするのは私が知っている人。小さい頃からの相棒だった。まだ幼かった顔はいつしか青年に変わり、美少年という言葉を体現したような人になっていた。
「No.23……なのか?」
「はい」
そう言って返事をする彼に私は当たり前のようにお願いをする。
「私をここから逃がして!こんなところで捕まるわけには……!」
「無理です。あなたを捕まえたのは僕ではないですし、任務をただ黙って実行する。そう教えてくれたのはあなたじゃないですか」
そう言って真顔で返答するNo.23。いつでも冷静にと教えたのは私で、彼を見ていると私を見ている気分に陥った。
「それにあなたはそんな情けを簡単にかける人ではありませんでした。あいつに変えられてしまったと思うと心が痛みます」
右手を胸において、痛がる仕草を白々しくする。しかしNo.23はあいつと言ったがやはり……。
「やはり相模が関わってるんだな」
「さぁ?どうでしょうねー。ほら行きますよ、へっぽこ暗殺者さーん」
だるそうに私のことを引っ張る。こいつは強い……。長年、相棒だった私だから分かる。手を縛られている今、下手に動くことは出来ない。
彼が連れていく場所はだいたい分かった気がした。案の定、私が予想していた場所へと彼は連れていった。
扉を開くと血なまぐさいが嗅ぎなれた場所。私の居場所のような場所だった。
「No.18の大好きな場所だよ?」
拷問道具が並べられていて、誰の血かも分からない、血飛沫がそこら辺にぶちまけられている。
かつては見る側にいたはずが、いつからこっち側に来てしまったんだろうな……。捕まったこうなるのが、普通なんだ。あいつが異常だっただけで……。
「ほら、座って。何をされるか、分かっているでしょ?」
「あぁ……」
不敵に笑ってみせるがただの強がりであることは、彼にはバレているだろう。ニタニタとこっちを向いて笑っている。かつての相棒からの拷問。
「じゃあ、何から話してもらおうかな?」
「君の質問に答えてあげるわけないだろ?」
どうせ爪を剥がすんだろ?知っている。私がよくやっていた拷問のひとつだ。痛みなら耐えてやろう。
私が気合を入れ直すと、No.23は少し残念そうな顔をした。
「じゃあ遠慮なく」
そういうとペンチを持つわけでもなく、私の上の服を脱がそうとした。私が拍子抜けた顔をすると、彼は真顔でこういった。
「上からの命令でね……?カメラを回せってさ」
服を取られて私は上半身が下着だけになる。昔に女を捨てた私にとっては、なんの恥ずかしさもないはずだった。
「こんなことをしても何にもならないぞ」
「このカメラで撮った動画、相模に送るから」
そんなことを言った。私はこの先を悟って絶望した。
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