第46話

太陽の光で意識が覚醒する。健康的にも良い起き方をして気分があがるが、そんな目覚め良い朝は衝撃的事実によって、覆される。


「志乃ちゃんがいない!?」


昨日まで横にいたはずの志乃ちゃんがそこにはいない。飛び起きて、リビングの方に向かうがいない。キッチンを見に行くが、やっぱりいない。


トイレもお風呂も探すが、そこにいない。志乃ちゃんなんて存在していなかったかのように、何もかもなくなってしまっている。


俺は途方もなく立ち尽くして口からこぼれる言葉を止めることも出来なかった。


「出ていっちゃったのかな……」


そりゃ、やっぱ嫌だったよな。こんなやつと一緒に過ごすなんて。そもそも馬鹿げていたんだ。暗殺者とターゲットが恋をするなんて。


「好きだったのは俺だけだったって、ダサいな……。勝手に舞い上がって、一人で恋愛して志乃ちゃんは俺に気を使ってくれていたんだろ?」


そんなふうに現実逃避をしている時にふと、目をやったところに、サメのぬいぐるみがこちらを見ていた。


手にとってみると、そこには志乃ちゃんがいた気がした。大事そうに抱え込んでいるようなそんな気がした。


そして俺から自然と涙がでる……。ださい。ださい。こんな姿、志乃ちゃんが見たらなんて言うだろう。笑ってくれるだろうか?


今は、そんなことも確認できないのに……。


今さら、俺から離れないで欲しい、って言うのは遅すぎたんだ。


「けいすけ?……どうしたの!?」


多分俺がドタバタしていたから、目が覚めてしまったのだろう、師匠が俺を見て駆け寄ってくる。


「……志乃ちゃんがいなくなったの?」

「ごめん、師匠。かっこ悪い姿見せて……」


俺が枯れかかった声で返事をすると、俺の不安を吹き飛ばすかのように笑った師匠。


「今さら、何言ってるの?そんなものお互いみせあきてるでしょ?」


そう言って俺の方を強めに叩く。ジンジンと肩が痛みを訴えるが、今ではそれは心地よい。しっかりとした意思が戻ってきた。


「そもそも逃げたか、どうかも分からないでしょ?そこら辺、散歩しているだけかもしれないし、心配し過ぎなんだよ、相模くんは」

「そうですよね、志乃ちゃんだって1人の人間なわけだし、俺の事を好きだったら帰ってくるだろうし」


俺がそう言うと、腕を胸の前で組んでいた師匠は大きくうなづいて見せるのだった。


「そうそう!私たちには信じて待つしかできないからさ」


師匠が言うのだから間違いない。俺はなんで信じてあげられなかったのだろうか、自分が愛した女の子を。


彼女は帰ってきてくれる。そんな自信が腹の底から湧き上がってきた。


「でもさ、志乃ちゃんが出ていって家がどこか分からなくなってるかもだから一回、外探して見る?……一緒に」

「はい!ついでに朝〇ックも買ってきましょうか。志乃ちゃんの分も」

「そうだねー!」


そう言って、俺たちはパジャマを着替え始めた。そして俺たちは志乃ちゃんがいないまま朝の散歩へと繰り出すのだった。






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