第48話

逆らうと送るとかじゃなくて、送ることが前提なら、これはもう確実に私を餌に相模を引き出す作戦でしかない。


私は絶対に屈してはいけない。それだけは分かる。できるだけ足掻いてやる。


「No.23。君は童貞の君が私に何をしようとしているのかな?」


とりあえずできることはなにかのチャンスを待つことだけ。そのためには、No.23の気を引くことくらいか。


「だ、誰が童貞ですか!僕は出会いがないだけで……。そもそも僕はお姉さんが好きなんです。なのに……こんなむさ苦しいところに」


彼は悔しそうに拳を握る。ここは筋肉ダルマしかいないから可哀想に。私はここにいればいるほど、女という概念はなくなっていった。


その中でも、私は1番強かったわけだけど。


「はぁ……こんな僕の話はどうでもいいんです。ぱっぱと終わらせますか」


そう言って、カメラをこっちに向ける。冷静な顔に戻った彼は相模を挑発するように、舐め腐った声で話し始める。


「こんにちはぁ!最強こと相模くん。あなたの大好きな暗殺者ちゃんはいるよ~、でもそろそろ僕のものになるかもね。ほら、助けてでも言ってみたら?」


そう言って笑いながら、私に話を振るNo.23。


手を出してからじゃないっていうことは、相模のことを恐れているっていうこと。私という人質をとることで、抵抗できないようにしようという作戦か。


「私は大丈夫だから助けに来ないで!来たら多分、殺されるから」


私が真面目にそう答えると、私の後ろに回った彼は私の顔をそっと撫でるようにして言った。


「私の初めてはなくなっちゃうけどね?」


背筋がゾッとするのを感じる。気持ち悪い……。こんなことなら相模でも良かったかなぁ。相模と過ごした時間は落ち着けたし。


「……あはは。楽しかったよ」


情けない笑みを自分でも浮かべているのは分かっている。そんな笑みを浮かべたあと、カメラを思いっきり蹴ったNo.23により強制終了される。


「感動とかウザイんですよ?あなたがそんな人に変わってしまったなんて悲しいです」


そう言って私の前でわざとらしく泣く仕草をする美少年。絵になるのもそれだが、今では軽く恐怖まで覚える。


「まぁ、No.18には手は出せないんですけどね?手を出して相模に抵抗されたら、組織が潰されるかもらしいから、上から命令出てるです」

「私で脅して抵抗させずに殺す気か」

「あなたはただの足でまといですね」


まさにそうだ。相模が助けに来ようと来なくても、迷惑をかけるんだろう。最低な女である。


「……愛してくれる人がいるって良いですね」


どこか悲しい目をした彼の過去を知っている私はなんの返事も出来ずに、ただただ黙ってしまった。



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