第28話

「ど、どうかな?」


そう言って恥ずかしそうに、今日のファッションを見せる志乃ちゃん。やはり彼女はスタイルが神ってる。そう言わざるをおえない。


ジーパンをここまで着こなせる人は志乃ちゃんしか居ないんじゃないかってくらい。身バレ対策にマスクをしているが、溢れ出す美しさは隠せていない。


それなのに志乃ちゃんは少し不服そうに、俺に愚痴る。


「やっぱし、かわいい服ではないよね。バレないようにしなきゃだし」


そう言って少し落ち込む志乃ちゃん。最近感情が分かるようになってきて嬉しいと思う。男の服だし、可愛さは求めないで欲しいと心の中で思う。


「俺はかっこいい志乃ちゃんも好きだけどな」

「そ、そうかな?そういう相模はまぁまぁだよ」

「そこは嘘でもかっこいいとか言うところだろ?」


そういうとクスッと笑うと、俺をからかうように呟いた。


「かっこいいよ、すっごく……」


かっこいい服装をしているが中身は志乃ちゃんのまんまで安心する。


俺はこの人の横を歩けるほどの男なのか、と思うが、そんなことは志乃ちゃんが決めるので考える必要は無い。


「それじゃ、行きましょうか」


俺たちは家の鍵を閉めて外に出る。太陽との久しぶりの対面に目がびっくりしてしまっている。それは志乃ちゃんも同じようで、思わず目を隠す。


「眩し!夜型だからちょっと辛いかも」

「同じくだ。インドアだからな、俺たちは」


そんなことを言いながら、バイクを車庫から出してくる。久しぶりの使用にバイクも喜んでいることだろう。報酬による金が有り余ってて同僚が買っていたバイクを衝動買いしてしまったものである。


しかし任務でもよく使ったし、いい買い物だと思っている。今ではこいつに愛情を注いでしまっているのだ。


「かっこいい……」


俺のバイクを見てそう呟く志乃ちゃんに、つい熱くなって感情的に返事をしてしまう。


「だろ?俺の相棒だ。こいつも志乃ちゃんを乗せれるから喜んでいると思う」

「安全運転でお願いしますね」


バイクに話しかけるように、安全運転をお願いする志乃ちゃん。2人乗りに理解がある人でよかった。断られたら電車で行くまでだったんだけど。


「後ろに可愛い子を乗せるのに、危ない運転はしない。何回もこいつで殺し屋から逃げまくってるんだけどな」

「それは災難だったね」


どこか他人事のように返事を返す志乃ちゃんを睨みながら、バイクにまたがる。軽快なエンジン音をたてながら、志乃ちゃんが乗るのを待つ。


長い足を使ってかっこよくまたがる志乃ちゃん。バイクの揺れに少しだけ驚きの声を漏らすが、その後は少し笑うくらいには余裕があるようだった。


「しっかり捕まっとけよ?」

「うん、分かった」


そう言ってぎゅっと俺の背中に抱きつく志乃ちゃん。自分の心臓の音が聞こえていないか、心配になるけど、バイクの音がかき消してくれるだろう。


「ちゃんと捕まったか?」

「なんですか、胸の弾力がないからしっかり捕まってると思えないって言いたいの?あぁん?」

「そんなこと言ってないけど?」


そういうと少し寂しそうに顔を赤くしながら、拗ねるように言葉を紡ぐ。


「だって私はこんなにドキドキしてるのに、相模はおっぱいがないから、ガッカリしてるんでしょ?」


そう言って自分の胸を触る志乃ちゃん。まぁそこには平野が広がっているわけで。でも、ドキドキしてないわけない。こんな美人を後ろに乗せて。


「俺の胸を触ってみ?」

「は、はぁ?嫌がらせ?ってな、何?」


俺は志乃ちゃんの手を取って、自分の胸にやる。素早く胸を打つその振動を感じたのか、志乃ちゃんはクスリと笑ってから、俺の体を掴み直した。


「相模も男の子なんだね……」

「当たり前だ」

「えっちだね」


そう呟く志乃ちゃんと同時に、そろそろ俺たちのイチャつきにイラついているだろう、相棒を発車させる。


「……俺がこんなことをするのは志乃ちゃんだけだけどな」


俺の呟きはバイクの音で掻き消させたと思う。でも微かに俺の事を抱きしめる腕の強さが強くなった気がした。


♣♣

星が欲しい。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る