第27話
俺は気づけば寝ていたみたいで、朝になっていたみたいだった。昨日の夜は限界になるまで、志乃ちゃんと話をして.......。
昨日の夜まで、横にいたはずの志乃ちゃんの姿が見えない。寝ぼける頭で少し考えてから、非常にまずい状態にあることを理解する。
「もう、起きたのかな、え、待てよ!?」
完全に油断した。このままこの家を出ていくことができるじゃないか。逃げられたかもしれない。そんな不安に駆られながら、大急ぎでリビングへと向かう。
志乃ちゃんがいなくなったら生きる意味を失ってしまう。それほどに志乃ちゃんに依存している。
「志乃ちゃん!」
勢いよく、リビングのドアを開くとエプロン姿で味噌汁の味見をしている志乃ちゃんが目に入る。
そしてお味噌のいい匂いが俺の鼻を擽る。朝は食べないのが俺の主義なのだが、お腹がなって止まらない。
「おはよう。朝ごはん用意してるからちょっとまってて」
「志乃ちゃんがいて良かった」
安堵の声が思わず漏れてしまう。志乃ちゃんは少し戸惑うような顔をしてから、なぜ俺が焦っていたのか理解したのか、からかうような小悪魔のような表情になって。
「私が逃げると思ったの?そんなに焦って可愛いじゃん」
「そりゃ、焦るだろ。今の俺は志乃ちゃんが全てなんだから」
俺がストレートな言葉をかけると、少し困るような顔をしてから恥ずかしそうに返事を返した。
「そ、そう。あ!あと味噌汁を作ってるのは、別に好きな人の心を掴むのはまずは胃袋からなんて思ってなくて。健康にいいかなって思ってだし」
昨日の夜の話を思い出してか、言い訳をする。別に、味噌汁を作っている理由なんて聞いていないのだが、自分から話してくれる志乃ちゃんを可愛いなと思う。
どちらにしても俺を思ってだし、本当に愛らしい。
「なんか志乃ちゃん、新妻みたい」
「新妻なんてまだ早いし、そんなことを言ってると逃げるよ」
「ごめんって。なんか手伝えることある?」
俺がそう聞くと、周りをキョロキョロとしてから志乃ちゃんは少し恥ずかしそうに頬をかきながら。
「昨日はあんまり眠れなくて、早く起きちゃったからほとんどしちゃったんだよね。だから手伝って貰うことはないよ」
「眠れなかったってやっぱり寝にくかった?」
志乃ちゃんは横に首を振ってから、少しため息をついたら勢いに任せて自分の気持ちを言葉にする。
「緊張して眠れなかったの、悪い?男の人と寝るなんて初めてだったから」
その言葉に俺は心から嬉しくなる。俺ってやっぱり独占欲強いんだなって改めて認識する。
「その割には手を繋いだりとか積極的だったけど?」
「そんなの、声震えながら言ってたに決まってる。ほら、早く歯を磨いてきて朝ごはん、食べよ?」
そう言って味噌汁を机に置きに行く志乃ちゃん。そんな志乃ちゃんに透かした素振りで今日の予定を伝える。
「今日は志乃ちゃんの服でも買いにいこっか」
「.......」
ジロっーとなんとも言えない目で、こちらを見てくる志乃ちゃん。何かほかの言葉を待つように。本当に志乃ちゃんには敵わない。
「デートに行こっか、志乃ちゃん」
「はい、わかりました」
そういうと、志乃ちゃんはちょこんと椅子に座ると、俺の帰りを待つようにテレビをつけた。一方、俺は浮かれきった足取りで洗面所まで向かった。
♣♣
星が欲しい。
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