第26話
深夜テンションの志乃ちゃんはウキウキしている。多分、翌日にはこのことを思い出して赤くなるだろうなぁと思う。
明日にはクールな志乃ちゃんになっているだろうから、お子様志乃ちゃんを満喫しよう。俺たちは暗いベットの中、手をつなぎながら浮ついた声で話し始める。
「じゃあ小さい頃の話でもしよっか。まずは私からだよね」
志乃ちゃんが話題提供をする。小さい頃か。小さい頃で覚えているのはあの人と過ごした日々くらいかな。
「私は気づいたら、狭い部屋の中にいたんだけどその中でも楽しかったのはお料理でね?」
「あぁ、だからあんなに美味かったのか。レストランとかと同じくらい、いやそれ以上だったかな?」
俺がそう言うと、少し照れくさそうに志乃ちゃんは否定の言葉を入れる。が満更でもないようにだった。
「そんなことないよ。私な料理を教えてくれた人が、料理で男の心をつかむのよって言ったから」
「まんまと掴まれてしまいました。料理の前に掴まれてたけど」
「また欲しくも無いものを掴んでしまった.......」
つまらないものを切ってしまったばりに、スラスラとセリフを言う志乃ちゃんには感激しかない。
けど良かった。小さい頃に志乃ちゃんのことをちゃんと見てくれてる人がいたのか。少し安心するのと同時に、幼いころの志乃ちゃんを知らないという焦り。
その人への嫉妬が溢れだしてきた。ただ身勝手な感情だと抑え込む。
「相模は初恋の人とかいるの?まぁいないよね、なんと言っても相模だし」
「普通にいるわ」
「へぇー、いるんだ。意外だね」
そう言うと少しだけ握っている手が強くなった気がした。暗いから志乃ちゃんの顔は見えないが、嫉妬にもえる可愛い顔をしているのだろう。
「小さい頃に俺に生きる術を教えてくれた師匠みたいな人。強くてかっこよくて、あの人みたいになりたいというのと横に並びたいっていう気持ちはあったかな」
「先生を好きな子供みたいだね。可愛いじゃん」
少し安心したように、軽い声で返事を返した志乃ちゃん。
師匠は今、何をしているのだろう。最近は会っていないな。いつもは俺の住んでるところとかを勝手に調べて乗り込んできたりとか、あるんだけど。
「多分、もうそろそろ師匠が家にくると思う。俺が施設に拾われた日だから。その日を誕生日だってお祝いしてくれてたんだ」
「優しい人ですね、師匠。家に来るってことは私はいない方がいいってこと。それはつまり、外に?」
そう言って、嬉しいそうにニヤニヤとする志乃ちゃん。
「んなわけない。俺の彼女として、紹介するに決まってるだろ」
「まだ、約束なだけでそんな紹介はまだ早いと思うなぁ。だから私は隠れとくね」
「それで志乃ちゃんがいいならそれでいいけど。師匠が志乃ちゃんのことを見たらめんどくさい事になりそうだし.......」
師匠は可愛いものに目がないから、多分志乃ちゃんのことをめちゃくちゃにするだろう。隠れてくれているなら、それはそれで良しとしよう。
俺だけの志乃ちゃんだからな。でも今の師匠はどんな人なんだろうか。やはりあのまま綺麗な人なんだろうか。憧れの師匠と会うのを楽しみに待つ相模だった。
♣♣
星が欲しい。
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