第31話

女物の服って可愛いのが多いなぁ。ふわふわ系は志乃ちゃんは多分着てくれないだろうな。


志乃ちゃんならボーイッシュかな?それもそれでありだな。そんな妄想を全開していると、店員さんが声をかけてきた。


「お客様?彼女さんが可愛い服を着て待ってますよ?というか、正直、彼女さんのこと好きでしょ?」

「当然です」


俺がそう答えると、ニヤニヤとしている店員さんは感心したような声を漏らす。


「おぉ、素直ですね。そんなに愛してくれる人がいるなんて羨ましい限りですよ」

「まぁ、本人からは嫌がられてるんですけど」

「あぁ……そういうことですね。ほら、彼氏さん行きますよ」


少し落胆したような声を呟いた店員さんに少し疑問を持つがよく分からなかったので、気にしないことにした。


「相模ぃ……。こんなのは私じゃないと思う」


そう言ってカーテンからひょっこっと顔を覗かせる志乃ちゃん。そんな可愛らしい姿に店員さんも俺もニッコリである。


しかし見ない訳にはいないので、志乃ちゃんの覚悟が決まるまで待つ。志乃ちゃんは下で小さく手を握ると勢いよく、カーテンを開く。


「ど、どうかな……?やっぱり変?」


フリルがついたスカートに脚を通す志乃ちゃん。綺麗に引き締まった彼女の白い脚が白いスカートとマッチして、本当にミルクのような美しさを表現している。


ベージュのパーカーは少し大きめで萌え袖のようになっている。細い体を隠すようなビックサイズだが、体のラインは分かる。


そして恥ずかしそうに目をキョロキョロさせている志乃ちゃん。


「……何か言ってよ」

「ごめん、見惚れてた。上手く言えないけどすごく可愛いよ、志乃ちゃん」

「ありがと」


そんな会話をした後に志乃ちゃんに着せられた何着かの服は全て似合っていて、全て購入してしまった。


正直、仕方ないことだと思う。店員さんも尊いとしか言葉を発してなかったし。


「こんなにもありがとうございます。パジャマは今日の夜、着る」

「下は勝負下着でよろしくお願いします」

「それは無理。あと、ちょっとトイレ行ってくる」


そう言ってパタパタとトイレの方へと向かっていってしまう志乃ちゃん。それを待つために柱にもたれかかりながら、帰ってくるのを待つ。


少し時間が経つが、帰ってこない。心配になるが正直少し遅れているだけなのかもしれないし……。


も、もしかしてあんなに可愛い志乃ちゃんが一人で歩いていたらナンパされちゃったりして……。


そんな風に思っていると、女の人の声が聞こえて元気よくふりかえってしまう。が、それは志乃ちゃんではなく、金髪のオシャレなお姉さんみたいな人だった。


「お兄さん?この後、暇かな?お姉さんと一緒にご飯食べない?奢っちゃうよ?」

「人を待ってて」

「男の人?男の人ならその人も一緒でいいからさ、ほらうちの連れ。可愛いでしょ?」


そう言って指を指すお姉さん。その先には大人っぽいお姉さん達がスマホを触っている。これはいわゆる逆ナンってやつか。正直めっちゃ惹かれるけど。


嬉しい。俺には志乃ちゃんがいるしなぁ。丁重に断ろうと思っていた時、俺の大好きな人の声が聞こえる。


「その人、私の彼氏だから。手、出さないで?」


怖い顔した志乃ちゃんが割って入った。




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