第58話

ノリで帰ってきちゃったけど、あの後あそこはどうなったんだろう?師匠や、青年が何とかしてくれただろうか?


少しだけ不安になる心を抑えて、いまは横でにこにこしている志乃ちゃんを見る。このまま結婚届を出しに行きたい。


「その·····ゴムを買ったってことはするのか?あれを·····」

「まぁ、したいっちゃ、したいけど。志乃ちゃんが嫌ならしない。前にも言ったかもしれないけど、無理やりはしたくないから」


そう言って、安心させるように笑いかけてやる。が、志乃ちゃんは顔を赤くして、俺から目を逸らせる。


「私にい、言わせるの·····」

「言って欲しいけどな」

「·····相模はときどき意地悪だ」


志乃ちゃんは大きくため息をついてから、また立ち止まる。俺の手を握り直す。そして恥ずかしそうに、でも幸せを噛み締めるような満面の笑みで言うのだった。


「·····しよ、相模」

「··········……」


その言葉を彼女の口から聞きたいがために、俺は生きていた。彼女が俺の命を絶とうとしてきたときから。·····考え深いな。


そんなふうに志乃ちゃんの言葉を吟味していると、袖をクイッと強めに引いた志乃ちゃんが涙目で訴えかける。


「お、乙女にこんなことを言わせて、何か言ってよ·····」

「志乃ちゃんが可愛すぎて、脳内でもう1回再生してたら、反応が遅れた」

「も、もう言わないからっ///、はぁ·····」


そう言って、頬をふくらませながら腕を組んでしまう。おかんむりになってしまった志乃ちゃんをなだめるように、俺は顔をのぞき込む。


「·····うそうそ。大好きな志乃ちゃんとしたいよ。でも俺はそんな自信ないというか」

「·····知ってる。というか私に初めて言った言葉、覚えてる?」

「なんだっけ?あの時は志乃ちゃんが可愛すぎで絶対にお嫁さんにしたいって、血が十分に足りていない脳が必死に訴えていたから」

「·····ば、ばかぁっ///」


俺が引き気味に笑うと、志乃ちゃんは恥ずかしさを隠すために軽く肩を叩く。


弱い愛が感じられるパンチような気がする。何

言ってるか、分からないけど。俺も舞い上がっているんだ。許して欲しい。


「相模は『君の引き締まったエロい体で俺の初めてをもらってくれないかな?』なんて言ったんだ。童貞なのは出会った時から知ってる」

「え、えぐいこと言ってるな、俺。ぶっ飛んでる。まぁ、今もあんまり変わらないと思うけど·····あはは」


俺が自分のやばさに笑っていると、志乃ちゃんは否定の言葉を入れる。志乃ちゃん独特の透き通った声だ。


「でも私はそれで相模を殺さずに済んだ。で、いまは大切な人。相模が狂ってて良かった」

「そっか。じゃあ狂ったままでいい?」

「何を言ってるの?相模はもともと狂ってたでしょ」


そう言って、志乃ちゃんは笑った。もう吹っ切れた。今さら取り繕っても俺の全てを見せている志乃ちゃんには意味ないな。


「じゃあ志乃ちゃん、ヤラせて」

「それでこそ、相模ってなる私が怖い」


そんなことを言いながら、ラブホテルの場所を検索している志乃ちゃんを一生愛していきたい。


♣♣

なんか終わりそうな雰囲気出てますが、ちょい続きますよ笑

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