第19話

タオルを肩にかけて、リビングのドアを開ける暗殺者。そして感謝の言葉を俺に投げかける。水も滴るいい男と言うが、暗殺者は女バージョンである。


「お風呂、ありがとう。広くてびっくりした。シャワーしか使わなかったけど」


無駄に広い家を買ってしまったと後悔していたが、暗殺者のために買っていたと思えばいい買い物だったと思う。


「おっけー。後で俺も入るよ」


軽く返事を返す。髪の毛が少し水で光っている暗殺者が脱衣所から出てくる。俺はいつもきているジャージを暗殺者に渡した。さすがに洗濯済みのやつです。


暗殺者が背が小さいという訳では無いのだが、俺が身長が高いので、少しだけダボッと着たジャージが、えろさを加速させる。

彼シャツならぬ、彼ジャージ。写真で撮りたい気持ちに襲われるが、さすがにやめておこう。


暗殺者はどこかソワソワしながら、そこら辺をウロウロしている。落ち着かないようなそんな素振り。


「なんだ、ソファにでも座れよ。あぁ、手錠がないと落ち着かないのか?暗殺者ってドMちゃんだもんな」


俺がそういうと、暗殺者は俺の事を蔑む目で見てから、小さくため息をついてから立ったまま話した。


「手錠かけない相模はさすがに馬鹿だと思う。1度でも、自分のことを殺そうとした人を家に野放しにするとか」

「別にいいだろ。暗殺者は俺の事を殺さないだろ?」

「そんなの分かんない。でも今はないかも」


そんな曖昧な返事を返す。暗殺者は必死で悩んで、俺の事を心底嫌っても、最後は俺の事を好きになってくれればいい。


そんなカッコつけたようなことを思っていると、指先をいじいじさせながら、少し明後日の方向を見ながら、あることを提案した。


「ちょっとコンビニに行きませんか?」


なんて少し気まずそうに切り出す暗殺者。こんな夜遅くにコンビニに行くなんて、絶対に目的はひとつしかないだろ。


「お前.......そんなに逃げたいか?俺がそんなに嫌か.......?」

「嫌なわけない。むしろ.......。と、とにかく行きませんか」

「俺は別に買いたいものはないけど、逃げられたら困るしなぁ。買いたいものがあるなら、買ってくるぞ。何が買いたいんだ?」


暗殺者は気まずそうに、目をそらす。口をパクパクさせて、言うかどうか迷っているみたいだった。


「いや買いに行かせて。逃げませんから!」

「お前、人を見て涎を垂らしてるライオンの前に人を食わないからって言われて立てるのか?それと同じだ」

「私は真面目なライオンだから逃げない。なんなら、私と手錠で結んでていいから.......」


そう言って、手錠を手渡す暗殺者。暗殺者と手錠越しに繋がれるだと?それに風呂上がりのいい匂いがする暗殺者ちゃんと、だぞ?


「でも俺が買いに行けばいいじゃないか。なぜダメなんだ?」

「下がスースーしてるの.......」


そう言って、ズボンを抑える暗殺者。そして顔を真っ赤にして、しゃがみこんでしまう。俺はバッチリと察する。そりゃ、俺の家に暗殺者が買いたいものはあるわけない。


というわけは今、暗殺者はノーパンなのか.......。なんてエッチな暗殺者なんだ!どストライクすぎて泣けてくる。


「一緒に行こっか。夜のコンビニに」


手錠を手に取るが、夜の街に手錠をつけて歩くなんてことしていたら職質は間違いなしだろう。職業上、俺達にはダメなのでそれは却下する。なんかを心の中で決めた俺は、勢いをつけて暗殺者の手を握る。


「ひゃうっ///」


そんな情けない声を上げて驚くが、軽く俺の手をぎゅっと握り返してきた。下を向く暗殺者にニコニコしながら笑いかけると、暗殺者はツンツンした声で、


「.......こっち見ないで」


なんて可愛い声をあげる。そんな可愛い暗殺者と街頭照らす、ロマンチックな街へと繰り出すのだった。


♣♣

星が欲しい。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る