第18話

暗殺者は部屋を出る時に一度だけ、警告するようにジロっとこっちを睨んできてから、お風呂へと向かった。


部屋に1人になった俺は、L〇NEの友達もいないスマホを開いた。そしてどうでもいいYou〇ubeの動画を漁る。そして少し冷静になった後に考えてみる。


今頃、暗殺者はシャワーのお湯を浴びてるんだろうなぁ。まぁ、暗殺者ちゃんに殺すって言われちゃったし、今日のところは諦めるか。だって俺は覗きなんてしょぼい犯罪は犯したくないし。


そもそも覗きなんてしなくてもベッドの上で見れるだろ、近々。紳士の俺は暗殺者に嫌われたくないし。やめよう。そんな最低なこと。


でもさ、なんで俺は全集中でゆっくりと部屋のドアを開けてるのだろう。そして慣れた足つきで脱衣所にまで向かう。これは某大国の大使館に忍び込んだ時にも使ったものである。


それくらいの大きなミッションを今の俺にはかかっている。暗殺者の綺麗な裸を見てみたい。そんな純粋な気持ちだけで、行動をしている今年で20歳。


暗殺者のことだからしっかりと鍵を閉めていることだろう。俺にとっては鍵なんて閉めていても意味はなさない。脱衣所の鍵は、ほんの数秒で開く。


「夢の楽園への扉は今開いた。これが海賊たちが目指しているラ〇テルなのかもしれないな」


そんなことを呟きながら、音を出さないようにしてゆっくりと扉を開く。完全に侵入できた。そう思った時に、扉からすっと、髪の毛を頭の上でお団子にした暗殺者が顔を出した。


「はぁあああ。そんなことだと思った。相模が覗かないわけないと思ってたし」

「.......あっ、お世話になっております。これからも息子がお世話になります」

「.......相模は死にたいの?」


そう言ってその場にあった石鹸を武器に使おうとする暗殺者。


「いや、そんなえろい格好されたら話もまともに聞けない」


暗殺者はバスタオル一枚のみを体に巻き付けて、俺の前に立っている。俺の言葉に少し不満そうになった暗殺者は不服そうに呟く。


「どうせ私は貧相な体ですよーだ.......」


そう言って暗殺者が下を向く。そして少しだけ悲しそうな顔をした。そして自分の胸にポンっと手を置く。そんな顔が嫌で俺は暗殺者に向かって飛び込んでいた。


「暗殺者の控えめな胸も大好きだ!」


そう言って、俺は暗殺者をぎゅっとしに行くと、暗殺者のバスタオルがひらりと落ちる。暗殺者の裸が見えてしまう。


それはいい事なのに、何故か俺は必死でバスタオルを戻そうとする。見えてしまっていけない、そう思ってしまった。


暗殺者は落ちていくそのままに、バスタオルを捕まえに行った俺の事を抱きしめる。


「捕まえた」


そう言ってニヤリと笑った暗殺者。バスタオルの下にはいつもの戦闘服を着ていた。


「くそぉ.......騙したな暗殺者!」

「これが色仕掛けってやつです」

「じゃあさっきの寂しそうな顔も嘘だったのか?」


俺がそういうと、少し恥ずかしそうに目を逸らして、小さく呟く。


「.......ちょっとだけ本当」


クールな顔を作っているが、逆にそれが可愛さが倍増してしまう。思わずこちらまで顔が赤くなる。俺は自然と口が開いていた。


「マジで好き、暗殺者。じゃあさ、覗きは失敗したからさ、一緒に入ろっか」

「棺桶なら一人で入ってください」


そう言って、俺の首根っこを掴むと脱衣所の外へとポイッと放り出されてしまった。


「次見たら、口聞きませんから」


そう言われてしまったので、もう覗くことは絶対にできない。暗殺者と話せないなんて死んだ方がマシだ。


暗殺者が扉を閉めようとした時に俺は暗殺者に向かって、


「お墓は一緒に入ろうな!」


俺がそう言うと、暗殺者は舌をべー、と出してパシャリと扉を閉めてしまった。


その後に暗殺者が動揺して、脱衣所からは大きな物音がしたのは、また別の話。


♣♣

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