第35話

俺たちはゲームセンターをでて、太陽が沈みかけている道へと歩き出した。暗かったらホテルで一夜を、と思っていたのだがあえなく俺の野望は砕け散った。


「なぁ、時に志乃ちゃん?そのサメのぬいぐるみと俺じゃどっちが好きなの?」

「比べられないに決まってる。相模は道端の石とサメを比べたりするの?」


そう言って真面目な顔で俺の事をディスってくる志乃ちゃん。フォゲーくんはこちらを勝ち誇ったような表情で見てくる。


さっきまで可愛いと思っていたサメが非常に憎らしく思えてきた。相手にしてもらえなくて、道端の石を蹴って帰っていると、すぐに俺の家へと着いてしまった。


家と言ってもマンションなんだけど。いわゆる高級マンション。借りてるだけだけどな。居場所がバレたら、すぐに違う家に引っ越さなければならないし。


この家も時期にバレるだろうから、新しい住処を探さなければ……。そんなことを思っていると、マンションの前に俺の知った顔が立っていた。


「やぁ、相模くん。こんにちは。こんばんわ、かな?」


黒い帽子で髪の毛を隠しているが、所々で見え隠れする紅い髪。そんな髪をした人は俺の人生でこの人だけだった。


「……ご無沙汰しております。師匠」

「師匠、なんてやめてくれ。もう相模くんの方がよっぽど強いじゃないか」

「それは師匠の教え方が上手かっただけで」

「お世辞は結構だよ。で、なんだが。その横の可愛らしい子は誰だね?」


そう言って師匠は志乃ちゃんと間を詰める。その動きはいかにも、一般人ではない。しかしこの動きに驚かない志乃ちゃんも、やはり普通では無いのだ。


「ほほぅ。これは上玉じゃないか!顔も可愛くて肝も座ってるときたか!それに私のタイプだ!」


そう言って抱きつこうとする師匠。それを驚きながらもかわす志乃ちゃん。(現役暗殺者)


「驚いたね。君、ただものではないね。相模くん、どういうことか、説明して欲しいかな?」

「まぁ、入って下さいよ。師匠には後々、説明するつもりでしたし」

「……相模、この人怖い」


そう言って呟く志乃ちゃん。怖いというのは多分生理的にだろうな。命の危険を感じるだろうな。


「それに綺麗な人……。この人が」


綺麗な人と志乃ちゃんが言ったが、まさにその通りではある。


歳は多分、俺の一個上だったと思うから21歳。それに胸も大きく、スタイルもいい。多分、日頃から鍛えているのだろう。


「なんだい、そんなにジロジロ見て。私に惚れちゃった?」

「ち、違いますよ、師匠。茶化さないでください」

「照れちゃって可愛いな、相模くんは」


そんなことを言いながら、階段を登る師匠。やはりこの人に勝てる気はしない。


「……相模」


何故か不安そうに志乃ちゃんが俺の名前を呟いたのだけが聞こえた。そして俺の袖を握る強さが少しだけ強くなったような気がした。


♣♣

休んでてごめんなさい。

星が欲しい。

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