第16話
結局俺は暗殺者を応援する係に没頭した。チラチラこっちを見て、ため息を暗殺者はついていたが、嫌よ嫌よも好きのうちと言うのでポジティブに考えることにした。
「あともう少しで完成ですよ。この家ってダイニングテーブルみたいなところってある?」
「あるぞ。というか、家だけは馬鹿みたいに広いから大抵の部屋はあると思う。プールとかはないけど」
「だって、ずっとご飯を地べたで食べてたから」
別にバカにしていたわけじゃない、と否定の言葉を入れる暗殺者。そもそも地べたで食べていたのは暗殺者と一緒に食べたかったからで。
話しながらでもフライパンを上手に使っている辺りは長年の技である。俺的には少しおっちょこちょいの方が萌えるのだが、俺の奥さんになるならできるに越したことはないと思う。上から目線だけど。
「完成した、我ながら上出来」
ケッチャップのいい匂いがする。ちゃんとしたご飯は1ヶ月ぶりだろうか。忙しくて自炊する暇なんてなかったし。
「美味そうだなぁ。マジで暗殺者は料理できたんだ」
「出来ないと思っていたの?私は嘘はつかない」
そう言って、膨らみのない胸をポンっとたたいた。19歳ならもう望めない夢だなぁと考え深く頷く。別に俺は気にしないし大丈夫なんだけど。
バカにされてることに気づいたのか暗殺者は顔をしかめる。
「まだ胸は大きくなる可能性、ありますから。それに暗殺者と言う仕事では邪魔なだけだし」
「ハニートラップできないじゃん。その身体じゃ.......」
「できるに決まってる」
そう言って、暗殺者は体をふらっとさせて俺の方にもたれかかってくる。そしてほんのり頬を赤くさせて、上目遣いで俺の方を見る。
「今夜はめちゃくちゃにして欲しいなぁ.......♡」
「喜んで!じゃあ早速」
そう言って暗殺者を軽々とお姫様抱っこの形にして持ち上げて、ベッドへと向かおうとするが腕の中でじたばたと暴れるので、下ろすことになった。
「はぁはぁ。私はハニートラップができるってことを証明したかっただけ。本当は思ってない....から」
「まじかよ.......。俺のことを認めてくれたのかと思ったのに。でもえろさはめっちゃ感じた」
そういうと俺のことを蔑むような目で、そして腕で胸の辺りを隠すようにしてから、ため息をついた。
「ケチャップでさ、俺にハート、描いてよ」
「メイド喫茶じゃないんですから、無理です」
「今度、メイドのコスプレ衣装、買ってきてあげるね」
「.......着ませんよ?」
「無理やり着させる」
「.......えっち」
俺のオムライスにはヘンタイと、カタカナで綺麗に描かれていた。俺が暗殺者を見ると、親指をグッと立てていた。
♣♣
星が欲しい。
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