第22話
俺たちは家に帰ってきてから、荷物をカウンターにおいて、テレビをつける。ソファにすいこまれるように倒れ込む俺と、ソワソワして下着をとる暗殺者。
「じゃあ早速、着てくる」
「なんだ?いちいち報告して。生着替えを見て欲しいなぁって思っているのか?もしかして暗殺者ちゃんは変態さんだな」
「.......」
ツッコむ元気もないという顔をしてから、黙ってリビングをでた。多分、脱衣所にいったんだと思うけど。
それにしても本当に暗殺者と一緒に住むことになるんだったら部屋とかも、ちゃんと考えないとな。
部屋は十分にあるけど、寝室とかは一緒がいいな。でも俺の一任で決められるものでは無いし、暗殺者と話し合って決めるか。
軽い足取りでスタスタと帰ってくる暗殺者。俺と同じようにソファに倒れ込む。そして安心した声色で。
「落ち着いた。さすがにスースーしたままで過ごすのはちょっとスリルはあるけど、良いってもんじゃないしね」
「暗殺者ちゃんが変な性癖に目覚めなくてよかったよ」
俺がそういうと、疑問を浮かべたような表情になる暗殺者。
「私には変態になって欲しいんじゃないの?」
「いやー、暗殺者ちゃんには真っ当に生きて欲しいと思ってるよ?その中でも俺を好きになってくれたらとおもってるだけ」
俺がそう言うと難しいのね、とだけ呟いて俺の横にちょこんと座った。
そしておもむろにテレビリモコンを手にとると、ポチポチとボタンを押してチャンネルを変える。
「久しぶりに見るテレビ、何年ぶりくらいかな」
「俺もあんまりテレビは見なくなったんだよな、今はスマホもあるし」
「まぁ、私は持ってないけどね。全部、あっちに置いてきちゃったし」
そう言ってこちらを向いてクスリと笑う。あっちというのは、もともと住んでいたところだろう。暗殺者にも前の生活がある。
「今、帰ったら殺されるだろうな。作戦失敗したわけだし、もう荷物は取りに行けないよ」
「殺されるってマジか、使えなくなったら用無しって事か」
「まぁ、そういう世界なわけだし仕方ないんだけど」
そう言って、何かを忘れるようにポチポチとチャンネルを変える。俺は作戦を失敗したことがなかったが、失敗したやつを何人も知っている。
それでも俺はそいつのことを救いに行ったし、救おうとしてダメだったやつもいたが、仲間で殺し合うなんて、絶対に違うと思う。
「私の帰る場所はなくなっちゃたし、どうしようかな。これから」
そう言って暗殺者はため息をつく。ぎこちない作り笑いをする暗殺者の手に、俺の手を重ねる。
「ここが暗殺者の帰ってくる場所になるといいな、なんて思ったり?」
そう言って笑いかけると、少しだけ涙目になった暗殺者は不敵な笑みを浮かべながら、話す。
「傷心につけ込むなんてゲスな野郎。でも今は付け込ませてあげる」
そう言って、俺の胸に飛び込んでくる暗殺者。俺は暗殺者の細い体をぎゅっとつつみこむようにして、抱き寄せる。抵抗することなく体を俺に預ける暗殺者。
体を縮こませて、俺の胸の中で安心したように息をする。そして上目遣いでこちらを見ると、ツンデレ口調で暗殺者は、
「べ、別に相模のことを好きなわけじゃないから。まだ唐揚げの方が好きだし」
そう言ってニワトリのパッケージのキャラクターを指す。瞬時にそのニワトリを憎たらしいやつだと思うようになった。暗殺者がいなくなったら、すぐにゴミ箱に捨ててやった。
♣♣
星が欲しい。
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