6.麻琴ちゃん男の娘

 ソファーに手を付き、久間に覆い被さり見下ろす。


 子ウサギのように震える唇が可愛くてつい、その唇を塞いでしまう。


 自分の唇が私の唇で塞がれたことに気付いてから、久間は顔を真っ赤に染める。


「ねえ、あの絵を描いたとき何を想像したの? 麻琴の口? 首? 手? 胸? それとも、もっと下?」


 指先で順番に触れていく。その度に体を震わせ反応する様を見てゾクゾクしてしまう。一気に襲いたい気持ちを必死に押える。


「ねえ、麻琴にメッセージ送ったとき、何か期待した?」


「な、何もっ!」


 否定の言葉をいい終える前に口を塞ぐ。舌に触れる唇の柔らかな感触を残し離すと、久間は名残惜しそうな目で見つめてくる。


「麻琴の噂、知らない?」


 私の言葉に久間の瞳が一瞬ブレ、戸惑いを映す。


 首筋から鎖骨、胸元を撫でると、久間は震え耐えながらも甘い吐息を僅かに吐く。


「麻琴とヤレるかもしれない。そう思ったでしょ」


 私の質問に戸惑いながらも否定しない久間の首の後ろに手を回し、覆いかぶさると耳を甘く噛む。


「麻琴に会えたら麻琴を抱ける。そんな噂知ってるんじゃないかな?」


 久間は体を小刻みに震わせつつも、その瞳にある光は期待の光。


「それ、ほんとうだよ」


 耳元で囁くと久間の体に電流でも走ったかのように、ビクッと大きく跳ねる。


「でもね、久間くんが想像しているようなことにはならないの」


 続けて耳もとで囁く。


「だって麻琴、男の娘だもの」

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