2.コラボ相手は赤髪の女の子
「くちゅん!」
「風邪ですかな?」
「う~ん、体調管理には気をつかってるんだけどなぁ」
私は鼻を押えながら、2回目のくしゃみがこないか身構えるが、気配を感じないので手を離して目の前にいる女の子を見る。
赤い髪は日の光に当たるとピンクにも見える。頭に大きなリボンと、耳下で左右に結んだおさげが特徴的な彼女は、大きな目を潤ませ心配そうに私に向けてくる。
「何ごとも体が資本! 麻琴ちゃんが風邪引いたら悲しむ人たちがいるんだよ! 私とか! 私や! 私なんか!」
「ごめん、ごめん。気を付けるから。心配してくれてありがと」
お礼を言うと「えへへ」と照れる彼女の名前は
これまでも何度か会ったことがあり、なんとなく気が合う私たちは、SNS上での交流しある時の会話の流れでコラボの話が持ち上がり、今日はその計画の話し合いを私行きつけの喫茶店で直接会話をしている。
お互い初のコラボ企画ということで話し合いにも熱が入る。
「麻琴ちゃんと私のコラボなんで、2人がコスプレして料理する動画ってのはありきたりかな? 捻りなしって感じ?」
「う~ん、別にコスプレはしなくてもいいんじゃない?」
「なんと! コスプレしないとは麻琴さんのアイデンティティー放棄発言!」
後ろにひっくり返りそうなほど大袈裟に驚く彩に可笑しくなって笑ってしまう。
「そんな大袈裟なものじゃないよ。今回は私がお呼ばれってことだし、彩ちゃんのチャンネルを見る人は、彩ちゃんが作る料理とトークを楽しみにしてると思うんだよね。明るく元気に進行しつつ、料理には真剣なのが彩ちゃんの売りだと思うんだ。そこにコスプレしても映せるのは最初だけで、手元を映して料理をするときは邪魔になる気がするんだよね」
「感激!! 私のことそんなに真剣に見てくれて嬉しいっ!」
彩は私の手を取り目をキラキラと輝かせる。本当に表情豊かで見てて飽きない子だ。それでいて料理に対する熱意と腕は本物なのだから人気があるのも頷ける。
私も彩のチャンネルで料理を参考にしたりするので、視聴者の気持ちは分かるつもりだ。
「彩ちゃんのトーク力について行けるように麻琴も頑張りたいし、今回は彩ちゃんの胸を借りて頑張るよ」
「えぇ、えぇ、サムネにもできやしない、全くない胸で良ければいくらでも貸しちゃいますよ!」
彩ちゃんは笑いながら自分の胸を叩く。
「そう? 彩ちゃんはあると思うけどな。麻琴の方がないよ」
「ええ!? 麻琴ちゃんの方がない? うそだぁ! 全然そうは見えないけどなぁ。 はっ!? まさか偽装とか!?」
「そうそう、偽装してるのっ!」
2人で一通り笑いあった後、コラボ動画の話を続ける。雑談を交えながら話し合い、企画をまとめた後喫茶店を出る。
「メールでのやり取りも楽しいけど、やっぱり直接会った方がもっと楽しいよね!」
全身を使って伸びをしながら言う彩の言葉に、同じ気持ちの私は頷いて別れ帰路につく。
家に帰って日課のメールや自身のSNSのチェックをするため専用のパソコンを立ち上げしばらく閲覧した後、画面を見て私は腕を組んで唸る。
『今日の服装も可愛かったね♡』
画面に映し出されているのは、今日撮ったであろう私の写真とメッセージ。
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