5.スタジオへ(捕獲)

「ここは?」


 楽器や、マイク、音響の機器が並ぶ部屋でキョロキョロと、落ち着きなく見渡す久間が私に尋ねる。


「私が歌うときに収録するスタジオ。知り合いの伝手で借りてるの」


 手に持っている鍵を見せながら答えると、身を乗りだし興奮気味に話し始める。


「あ! 僕見たことある。麻琴ちゃんコスプレ以外にも『歌わせていただきました』シリーズも好評だよね!」


「ふふ、ありがとう。あっちのチャンネルも見てくれてるんだ。嬉しいっ」


 私がお礼を言うと、久間は無意識に自分が私にかなり接近していたことに気付き、顔を真っ赤にしながら慌てて後ろに下がっていく。


 後ろに下がったところにあったソファーに足が当たり、立ち止まった久間は後ろを振り返り自分の足に当たったものを確認している間にそっと近寄り彼の胸元をグッと押すと、いとも容易くバランスを崩しソファーに座り沈んでしまう。


 突然のことに目を丸くして驚く久間は、ソファーから起き上がろうとするが、柔らかいソファーに苦戦してもがいている。

 そんな久間の太ももに跨がり、胸に両手を置いて体重を掛けると、久間は背中からソファーに沈む。


 そのまま久間の背中に左手を回し、胸に左耳を当て右手で胸元をなぞる。


 緊張からかガチガチに体を硬直させる久間と対照的に、激しく動く鼓動は耳を伝い私の体で響き感じる。


「な、なに、なにを!?」


 上擦って震える声にゾクゾクする気持ちを抑えられずに、久間の耳元に唇をつけささやく。


「前に贈ってくれたパステルの絵。凄く可愛く描けてたけどぉ、衣装のライン、結構際どくないかな?」


 久間が喉を鳴らし、唾を飲み込む音が私の耳元で聞こえる。


「ねえ、どんな気持ちであの絵描いたの?」


 耳を甘噛みすると、体が大きく跳ね、緊張で硬くなった久間の耳元で囁く。


「麻琴、知りたいなぁ」

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