4.お食事(意味深)
某コーヒーショップにて、私の目の前にいる久間は、お洒落な恰好をしている。
垢ぬけていないが、頑張ったであろうことが新品の服から伝わってくる。そこがまた
爽やかな酸味を感じさせる香りの湯気をたてるレモンティーの入ったカップをソーサーに置くと、視線を久間に向ける。
「連絡をくれてありがとう。嬉しかったな」
「はいっ」
私が微笑むと、上擦った返事が返ってくる。緊張している姿が可愛らしい。
「ふふっ、そんなに緊張しなくてもいいのに」
緊張でガチガチの久間を見て、高鳴る気持ちを抑えつつ微笑む。
「
くすくす笑う私に合わせ、久間も照れながら笑っている。
「なんで誘われたか分からないって顔してる」
「え、ええっとまあ。なんで麻琴ちゃんが僕なんかを呼び出したのかなって……」
私が指先を久間に向け笑みを浮かべて見つめると、久間は頬を右手の指で掻きながらシドロモドロに答えてくれる。頬を掻く薬指の一部に分厚くペンダコができているのが目に入る。
おそらく絵を描くときにできたものだろう。そこに彼の生き様を見た気がして嬉しくなる。
「ファンアート、沢山送ってくれるよね。嬉しいなって伝えたくって。
顔出しだとメッセージは沢山くるけど、絵を描いて送ってくれる人は少ないの」
真っ直ぐ見つめると、喉仏が動き唾を呑み込んでいるのが見え緊張の色をさらに濃く顔に映す。
「デフォルメなんかの二次元の絵も上手いけど、パステル調の絵もすごく綺麗。あれ、私のお気に入り」
「そ、そんな、僕は絵を描くぐらいしか取り柄がないから」
私は首を横に振る。
「ぐらいじゃないわ。絵を描けることは才能。尊敬するわ」
顔を近付けると頬を赤くし、そのまま手を握ると久間は耳まで真っ赤になる。
その姿に胸の奥底から沸き上がる欲望を抑えつつ、冷静に言葉を口に出す。欲望が漏れないように気を付けながら。
「お礼がしたいの」
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