7.男の娘だと言われて私の頭はバグる
麻琴の名前を呼んで、喜び抱きつかれ顔が熱くなってそのままの勢いでたどり着いた場所は、ホテルではなくイタリアン料理の看板を掲げるお洒落なこじゃれた外観。
こんなホテル街のど真ん中にお店を出す人もいるものだと、変なところで関心してしまう。
だが、そんな関心も束の間、ワインボトルと思われるボトルが飾られているショーケースに挟まれた木のドアを開け入ると、もう一枚鉄のドアがありその横にあるカードリーダーに、麻琴がカードを通すとカギが開く音が響きもう一枚のドアがゆっくりと開く。
開いた先にテーブルや椅子は無く、まして食べ物の匂いもせず、代わりに受付らしきカウンターがあって、奥を見れば絨毯の敷き詰められた長い廊下に沿って、部屋番が刻まれた扉が並んでいる。
外見ではお洒落なお店に見えたが、中は高級なホテルの装いを見せるそれは、外観を偽り世間を欺くためのものだと私でも分かる。
「こ、ここ、ここって!?」
「んー? 麻琴たち高校生だけど、ここは麻琴の知り合いの物件だから大丈夫だよ」
「い、いやいやっ! ぜ、全然大丈夫じゃ」
麻琴は焦る私の両手を取ってくる。それだけでドキドキしてしまうのは、この空間のせいだと言い聞かせ気を落ち着かせる。
慣れた様子で麻琴は薄暗い受付のカウンターにある端末を操作すると、私の手を引いて歩き出す。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。麻琴は弥生ちゃんとお話するだけだから」
「そ、そう。お、お話するだけだものね」
そう、そもそも私は麻琴のことを受け入れるために来たのであって、そのために話をしに来たのだ。この場の雰囲気に呑み込まれそうになるの思考を振り払い
「無理強いはしないから安心して。でもね、出来ることなら麻琴は弥生ちゃんの全てが知りたいなぁ~って思ってる」
無邪気に笑いながら恥ずかしそうに言う麻琴の姿に、頭を撃ち抜かれたような衝撃を受け怯む私は手を引かれ、気付けばいつの間にか広いベッドの上に麻琴と並んで座っていた。
違和感を感じるほどふかふかのベッドと対照的にガチガチに固まった私の手を麻琴がそっと取る。心臓が跳ねあがり体ごと飛び上がりそうになるが、ベッドのシーツを握り体を押える。
そもそも私は女で目の前にいる麻琴も女なわけで、男女の関係とか間違ったことにはならない。同性から見ても色っぽい瞳で見つめる麻琴に惑わされないよう、必死に自分に言い聞かせ平然を装う。
「と、ところで話をするって何よ。まっ、麻琴のことを受け入れるとかそんな話でしょ。さっさと話してよ」
私の言葉に嬉しそうに微笑みながら体を寄せると、私の手を取り麻琴の頬に持ってくる。触れた頬は温かくその温度が体の芯まで伝わってくる。
顔を近付け私の頬に触れそうな位置で麻琴の唇が動く。
「あのね、麻琴は男の娘なの」
「は?」
これまで生きてきたなかで一番の意味が分からない「は?」を発した私の頭の中は、目の前にいる女の子が自分のことを男の
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