【実話】ダメ男に一目惚れした高島れいかのリアルなキセキ~スレ違いと号泣の果てに……いつまでも~

たたら

第1章 僕から高島さんへ1回目の告白

第1話 さらば東京<2218.夏~2219.03.24>

 「よしっ、やっぱ帰るか!」

 2218年の夏の夜、東京都内のアパートで、ひとり寂しく30歳の誕生日を祝いながら、そう決めた。大声でそう叫びながら自分に喝を入れたのだ。


(もういい、東京なんてうんざりだ………)


 そもそも東京はおろか田舎から県外に就職するなんて考えたこともなかった。

 うどの大木………同級生からはそう呼ばれていた。無駄に身長が高いだけで、何もできない”だめ男”だからだ。

 ただ唯一仕事だけは出来た。田舎で普通に働いていたはずの僕が、東京に本社を置く上場企業から引き抜かれたのだ。同級生は僕のこうした才能を知らない。一緒に働いていないからだ。

 上京して7年目。疲れていた。ずっと彼女もいない。趣味は仕事だと言い張って………実際そうだった。それしか出来ないから仕方がない。出来ないことを好きにはならない。でも出来ることは好きになる。出来ることは仕事しかなかったのだ。


(決めたのなら、下手に時間を置かないほうがいい)


 誕生日の次の日、同郷の上司である石上課長に退職する旨を伝えた。

「おはようございます、石上課長」

「おはよう、布施君」

「あっ、ちょっといいですか?」

「うん、どうした?」

「実は会社を辞めて田舎に帰ろうと思っていまして………」

「えっ、どうしたんだ………何かあったのか?」

「いえっ、たいしたことではないんですが、田舎の私立短大で勉強してみようかと思いまして………」

「田舎の短大というと………あー、あの短大かぁ。しかし、あそこはかなりの難易度だろ」

「そうなんです。だから入るのをあきらめて、いけなかったんですが、社会人枠があって、それなら僕でも入れそうなんです」

「そうか。そういうことか。でも、東京の短大………そうか、そうだよな。短大ならそうなるか。仕方ない。まだ若いし、思い切るなら今だよな。わかった、後は俺に任せておけ」

「ありがとうございます。やっぱり石上課長に相談してよかったです」

「そっか。でも、まぁ、寂しくはなるな。残念だ………」

「田舎でまた飲みましょうよ。僕はそれが楽しみです」

「そうだな」

 これで帰郷するためのスタートラインにはつけた。でも、まずは短大に合格しないと話にならない。

 短大の入学手続きをすすめつつ、田舎にいる同級生の土井君に会社を辞めて帰郷することを連絡をした。帰郷するまでは頻繁に帰省することも。

「そうか、折角上場企業に勤めてたのに、もったいないな」

「だよな………でもこれ以上東京にいると一生帰れないような気がするんだよね。30歳だと切りがいいし。潮時かなと」

「ま、そうだよな。次に切りがいいって、もう40歳だしな。そりゃ帰れないな」

「だろっ」

「ところで、まだ先だけど12月6日に、子供向けイベントで紙芝居があるんだけど見に来ないか?」

「俺、子供じゃないけど?………」

「違う違う、関係者でどうかってことだよ。それに子供向けっていっても、親もいるし」

「ようわからんけど、土井がそういうなら行くよ」

 高校からの進学先を当初大学を希望していたものの、家庭の経済的事情で専門学校か短期大学の2択で進路を考えていた。

 行きたいと思った地元の私立短期大学は、短期大学としては国内屈指の難易度だったことがすぐにわかったため、あえなく専門学校に進学した。

 進学した専門学校では”歴代首位”と言われるほどの高成績で卒業した。最初に就職した地元の会社は”引き抜き”で入社したので、就職活動はしていない。その噂が元で東京の上場企業に転職することができた。この転職も引き抜きだったので、就職活動はしていない。

 東京では彼女はつくらないと決めていた。結婚するなら同郷の女性がいいと決めていたからだ。ただ、流石に30歳までひとりでいると、結婚できないのではないかから、もう結婚なんていいに心境が変わってきていた。

 そんな心境の頃、帰郷する決断をしたのだった。

 短大はあっさり合格してしまった。夜間で3年間頑張ろう!

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