第14話 どうしてこうなった?

(どうしてこうなった?)


 高島さんが何故「はい」と言ってくれなかったのか…………さっぱりわからない。

 頭もいい、勘もいい高島さんのことだから、どうしてこのタイミングで僕が高島さんに告白したのかは、わかっていたのだろうと思う。

 つまり、僕が高島さんの言った「布施さんに手紙書く」に背中を押されて、告白してきたのは理解していて、それだと僕の気持ちではなく、むしろ、高島さんの気持ちの裏返しのように感じられたのかもしれない。

 これでは受け入れられない…………ということなのだろうと思う。

 ただ僕の立場からすると、告白のきっかけがそうだったというだけで………………そっか、そういうことだったのかな。

 ここまでに高島さんからは分かりやすい言動で気持ちを伝えてきてくれていたと思う。でもよくよく考えたら、僕から何かそうしたこと、つまり僕の気持ちが伝わるようなことをしたのかというと、何ひとつしていなかった…………はず。

 僕の気持ちがわかるような言動もなく、それでいて高橋さんの言葉に誘われるように告白したのでは納得できなかったのだろうと思う。

 告白を受け入れないとなると、それはそれで、その先は無くなる可能性があるわけで、それを考慮してもなお、自分(高橋さん)を納得させられなかったのかもしれない。

 高島さんにとっても大きな決断を迫られたきっかけが西青ヶ島に行ったときの上床氏の振る舞いにあるわけで、それで高橋さんは上床氏に対して”相当な何か”をしたのだと思う。

 実は後日のシンキロウで高島さんと上床氏がかなり険悪になっていた。正確には上床氏が一方的な高島さんに対して攻撃的な態度をとっていただけで、高島さんは顔色ひとつ変えずに涼しい顔をしていただけだった。


(高島さん、なんかスゴイ。年長者が激怒していて今にも殴り掛からんばかりの態度を取っているのに、涼しい顔ができるとか、肝が据わっているというのはこういう人のことを言うのだろうなぁ)


 年長者というだけでなく、自分より体格のいい人が今にも目の前で自分に殴り掛かってくるのではないかという態度でいるのに、それで涼しい顔ができるというのはなかなかできることではないと思う。

 それほど西青ヶ島での出来事は高島さんにとって憤懣やるかたないことだったのだろうと思う。それは僕にとってもそうだったので気持ちはわかる。それでもその後も上床氏に対して一切感情的な振る舞いはせず、いつものようにニコニコしているポーカーフェイスの僕は、なんか人として小さい気がしてきた。

 人としてもそうだけど、男としてもどうなんだろう。

 それにしても高島さんは上床氏に何をしたのだろうか?

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