第25話 避暑地の貸別荘へ<2220.07.22>_キス未遂事件
シンキロウのメンバー8人で避暑地の貸別荘に行くことになった。
参加メンバーは、僕と植木代表家族、土井君、高島さんと高島さんの友人女性の長谷川さん、それに半井氏の8人だ。長谷川さんは最近シンキロウの活動に参加してきていた。
別荘には高島さんと長谷川さん以外は1台の車に同乗してきていて、高島さんと長谷川さんはそれぞれ自分の車で現地の別荘で合流した。
別荘に到着してからすぐに夕食の準備にとりかかった。
夕食の準備は広い対面キッチンを中心に、みんなで作業を始めた。
この日はどうしてだったのか僕は高島さんに会いたくなかった。だから、対面キッチンで一緒にならない方法を考えた。
この日の夕食は、別荘のテラスでバーベキューをすることになっていた。バーベキューだから火をおこす必要がある。みんながキッチンでの作業に夢中になっているのをいいことに、炭の入った箱を持ってテラスに出た。幸い誰も僕がそうしていることを気にしている風ではなかった。
対面キッチンではみんな楽しそうに作業を続けている。結局最初から最後までこの作業を手伝うことはなかったので、そこで何をしていたのか、それがどんな食べ物だったのかも覚えていない。
僕も手伝っていれば楽しかったのだろうけど、そういう気分ではなかったので仕方ない。
テラスで火をおこす作業は順調にすすんでいた。あまり得意なことではないので、要領はきっとよくなかったのだろうとは思うけど、一人でやっていることなので、そこは問題にはならなかったのは助かった。
しばらくそうしていると、部屋の中から高島さんが出てきた。
(え゛っーーーー……………………)
びっくりした。まさか高島さんがひとりで出てくるとは想像もしてなかったので、本当に驚いた。
僕は角の座席に座っていて、高島さんはその斜め向かいに座った。しばらく何かの会話をした後、炭を追加したくなった。
炭の箱は僕と高島さんの間の床に置いてあった。置いておいた炭をとろうと高島さんのほうに僕の体をゆっくり傾けた。その時、僕のその動作に驚いた高島さんが体を軽く後ろにのけぞらせた。高島さんのその動作にびっくりした僕は、体を斜めに傾けたまま動きをとめて高島さんの方に視線だけを送った。動きの止まった僕と目の合った高島さんは何事もなかったかのように体を元の状態に戻した。一瞬だけ間をあけて、僕も何事もなかったかのように、炭をとる動作を続けた。
炭を取る動作を続けながら、今の彼女の反応について考えた。
(普通に考えて今の高島さんの動きは僕が高島さんに”キスをしようとした”と思った動きだよな? ほかに何がある? …………)
何をどう考えても、僕が高島さんにキスをしようとしたと思った時の体の動きであるとしか捉えられなかった。そうでないと僕の体の動きに合わせて体を後ろにのけぞるような動作にはならない。
しかしそれは少々不可解だった。それは、僕と彼女の座っている位置からして、とても座ったままキスできるような距離感ではなかったからだ。それに僕は視線を常に下に落としながら動いており、キスをしようと思った動きであれば、高島さんを見つめながら体を動かさないとできることではない。
そもそも、お付き合いもしていない女性に突然キスするってことになるのだろうか。経験が無いので分からない。
そう考えると、そもそも高島さんがそういうことを考えていたからそういう反応になったのではないのかと勘繰ってしまう。
女心なんでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます