第40話 彼女からの告白_昼食

 トラックに荷物は全て積み込み終わって引っ越し先に移動を始めた。引っ越し先をこの時点では知らなかった。車に乗り込めない人達はどうすのかと心配していたものの、その心配のないことはすぐにわかった。

 転居先がわずか100mほど先だったからだ。ひょっとすると100mもなかったかもしれない。


(トラックが必要だったのだろうか?)


 今度は転居席での荷下ろし。これは早かった。

 結局全ての作業は12時より少し前に終わってしまった。


(タイミングを見計らってお暇しようかな……)


「じゃあ私お弁当買ってきますね。どういったらいいですか?」


 高島さんが事前の段取りしていたかのように浅野氏に話しかけていた。浅野氏からお店の道順を聞いた高島さんはひとりで弁当の買い出しに出掛けて行った。


(いったいつの間に段取りしてたんだ?……はぁーまだ帰れそうにないなぁー……)


 急に暇になったので、転居先の居間から外を眺めていた。道路をはさんだ反対側は一面田んぼになっていた。見える範囲に建物はひとつもなかった。


(のどかだ……)


 よほど近くにお店があったのか、思いのほか高島さんの帰りは早かった。居間にはまだほとんど荷物は置かれていない。僕が外を眺めている間、徳永氏がテレビを見れるようにしておいたので、テレビを見ながらみんなで弁当を食べた。


(弁当食べたら帰れるかな……この後やることがあるわけではないのだから、帰れるよな。……たぶん……)


 弁当とかテレビ番組とか、もうそんなことはどうでもよかった。弁当を買いにいくときも、今こうして弁当を食べているときも、高島さんは相変わらずおかしなテンションのままだった。そしてそのテンションのまま僕以外の人達とはとにかく色々な話題で絡むものの、僕にだけは一切絡んでこようとはしなかった。


(僕だけ除け者とか、何しに来たんだろ今日……面白くない……どうやって帰るきっかけをつくろかな……)


 「帰ります」と言い出す度胸もなく、ただ悶々としているしかなかった。


 昼食を食べ終わり、みんなで食べたもののかたずけをして、そのままテレビ番組の続きを見続けた。


(今絶好の帰るタイミングだったろ俺! 何してんだ俺! ハァー、駄目だ。折角の帰るタイミングを逃してしまった。これからどうしよう……この番組終わったら「帰ります」って言おう…………言えるかな…………)


 帰るタイミングを逃したため、今見ている番組終わりを待って、言い出すタイミングと言い方を考え続けていた。

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