第37話 彼女からの告白_野外コンサートのお誘い

 2220年の8月のある日、戸塚氏から電話が入った。

 8月23日に野外コンサートがあるので一緒に行かないかという連絡だった。コンサートには電話をくれた戸塚氏以外にも、土井君、半井氏と高島さんも行くという。既に他の参加者は行くことが確定している言い様だったので、一緒に行くメンバーの中では最後の連絡のようだった。

 野外コンサートは先日行った貸別荘の近くであるのだという。

 このコンサートにみんなでいくことを企画したのは高島さん以外には考えられなかった。このコンサートへのお誘いを戸塚氏に依頼したのも高島さんということになる。戸塚氏とは肌が合わないうえに、戸塚氏は高島さんに好意を抱いていると思っていたので、そんな戸塚氏からのお誘いの連絡をもらうこと自体殊更に面白くない。

 高島さんにとって戸塚氏は他のシンキロウの男性メンバーとは違う接し方をしていた。他の男性メンバーとは僕の知っている範囲での交流しかなかったものの、戸塚氏とは僕の知らないところで結構会っていることは確かだった。どんな目的で会っているのかは分からない。分からないから、余計にあれこれと考えを巡らせてしまう。

 そんな関係性の戸塚氏からお誘いの電話を受けるなんて面白いわけがない。その上、既に何人ものシンキロウ男性メンバーが行くことが決まっているという誘い方も気に食わない。外堀が埋められており、行かない選択をしにくくされているようで、それも面白くなかった。

 お誘いの電話と言えば聞こえがいいけど、ここまで準備された上でのお誘いは、もはや説得されているようでしかなかった。

 結局、戸塚氏からのお誘いをお受けしてコンサートに行くことにした。


              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆              


 高島さんは好意のある男性には自分の想いを悟られないように振る舞う女性なので、今回のコンサートのように多くの人を巻き込んだイベントを企画する。

 でも巻き込んだ人々の中に高島さんに好意を抱いている男性がいるために、僕と高島さんの関係にも影を落とすことになってしまう。

 昨年の5月の連休で僕が一緒に旅行に行けなかったのも、雑誌の企画の上床氏の影響を受けて告白することになったのも、高島さんのこうした性格の影響を受けている。


              ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆              


 コンサートに誘うために戸塚氏は直接僕の携帯に電話していることから、戸塚氏は僕の携帯電話番号を知っていたことになる。どうして知っていたのかは思い出せない。

 戸塚氏から電話をもらった記憶があるのは、これが最初で最後になる。

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