第75話 高島さんから僕へ2回目の告白<2221.08.16>
今日体験したこと、知ったことの順番に出来事があったのだとずっと思っていた。少しも疑うことなく。でもそれだと不自然な点があることに、つい最近気付いた。
午後から高島さんと一緒に年配男性の説明を聞いた後、高島さんに実家まで送ってもらった。実家で一人で考え事をしているところに高島さんからの電話でバーベキューに誘われたものの、同級生と飲みに行く約束があるからとお断りした。同級生の寺尾君と飲んでいるときに、直前まで土井君とバーベキューの手伝いをしていたことを知った。その準備中に高島さんがやってきて、戸塚氏と話し込んでいた。その高島さんは戸塚氏に向かって「私決めた」と発言したことがわかった。
この体験したこと、知ったことの順番通りの出来事だったとすると、最後の「私決めた」の続きが何もない。何もおきていない。だから順番が間違っていることになる。
高島さんは僕を実家に送ったあと、僕をバーベキューの誘って断れた後に考えた結果、何かを”決めた”のだと思っていた。でも実際は違った。何かを”決めた”の発言の後に電話してきたのだった。そうでないと辻褄が合わない。
「私決めた」という高島さんの発言を聞かされた時の僕は、ただただ感情的にそれを受け止めていた。何を(今更)決めたのかという思いと、決めたことを言う相手を間違っているとも思った。原因そのものは高島さんにあるとはいえ、よりによって、僕の中でこの混乱の中心人物である戸塚氏に、決めたことを言っていることが許せない気持ちになっていた。
高島さんからバーベキューに誘われたのを同級生と飲む約束があるからと断ったのは事実だったけど、断ることに積極的だったのは、行ったところで居心地悪すぎることもあった。ただ、そもそもそこに戸塚氏がいること自体が癇に障っていたことも大きかった。
昨年の8月から高島さんは戸塚氏と交流のあることを隠さなくなっていた。そこに後ろめたさがないからだと理屈ではわかるものの、理屈に感情を合わせられない。理屈が合っていても、その理屈に感情を合わせられない。
こうしたことから、「私決めた」の発言について、それ以上深く考えることもなかった。
この日あったことを丁寧に掘り下げていったことで、僕の理解と実際に
「私決めた」は僕に電話する前に戸塚氏に発言したものだった。決めたから電話してきたことになる。それは高島さんの気持ちを僕に伝えることだったのだろうと思う。決めていなことを他人に話す性格ではない。決心が確かだからこそ他人にその決意を吐露した。そして、その決心したことをこの日僕は聞くことができるはずだった。
高島さんからある人の話を聞いて欲しいと電話もらってから数日間、きっとその誘われた8月16日に高島さんの気持ちを聞けるのだと希望を込めた期待をしていた。
でも現実は違っていたと思っていた。ずっと。
でも結果的に何も違わなかったことになる。期待は実現していたはずだったのだ。
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