第53話 3回目の告白<2220.10.26>

 3回目とはいえ、告白するのはやはりかなり勇気がいる。

 今日の高島さんは終始嬉しそうな表情を浮かべている。最初は緊張していて嬉しそうな表情をしていることは気にならなかったけど、今はその理由が気になって仕方がない。それにしても、これから告白しようとしている僕を何故に喫茶店に連れてきたのだろうか。

 高島さんの想いはともかく、高島さんとお話をしに来たということだけにして、できればこのまま帰りたい。そういうわけにはいかないだろうか。

 会話を終え、2人で席を立ち、代金を支払ってお店の外に出た。あまり記憶は定かではないけど、この時点で夜11時前後だったと思う。

 車で高島さんの自宅前まで送って、僕も高島さんも車を降りた。

 それぞれ車の後ろまで歩いて向き合って立った。

「僕と付き合ってもらえませんか?」

「もう少し待ってください」

「あっ………………はぁー…………そっ、そっかぁー………………」

「…………」

 やはり駄目だったという思いもあった、でも、ちょっと良くわからなかった。「……待って……」と言ったその言葉の意味を理解しようとして、頭の中が混乱していた。


(どういう意味なんだ?)


 今はとにかく、何か言ってこの場を立ち去らないと。とりあえず高島さんの言った言葉の意味は後で考えよう。高島さんは今も嬉しそうな表情を浮かべながら恥じらっているようにも見える。わずかにうつむいている高島さん。

「今日は急に押しかけてきてごめんね」

「あっ、いえ」

「…………じゃあー、また明後日ね」

「はい、明後日」

 翌々日、高島さんとあと数人シンキロウスタッフで観光名所に行く約束をしていた。

「帰るね」

「はい、気を付けて帰ってね…………」

「う、うん」

「じゃあいくね」

「…………」

 わずかにうつむいたままで少し頷いたようにも見えた。

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 かなり短い時間だったはずだけど、長く感じられた。ゆっくり運転席のドアの前まで歩いていき一瞬振り返って高島さんの様子を視界に収めた。まだ嬉しそうな表情を浮かべたまま立っていて、一瞬目が合った気がした。

 車に乗り込んで、車をゆっくり動かしはじめた。ルームミラーで高島さんの様子を見ながらゆっくりと更に車を前へすすめる。高島さんの自宅から200mくらいは僕の車は見えている。ずっとこちらを見て立っているた高島さん。200m行くとわずかだけど左に折れる。そこに建物がたっているためすぐに車は見えなくなる。ここで一気に車を加速した。

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