概要
島崎と名乗る男は、依頼人から預かった遺言状を「依頼人の死後に」配送する仕事をしているという。
亡き母からの遺言状には「常に本質を見抜ける子でいてください」と書かれていた。
そこから、夏目の生活は大きく変化を遂げてゆく。
死後に配達される遺言は、言葉とともに何を届けるのか。
遺す者と遺される者、「遺言」をめぐり交錯する人間模様を描くヒューマンドラマ。
※毎週1話ベースで更新します。
※一部の記述に引用・参考があります。引用元等は近況ノートに記載しております。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!スポットライトが当たることを願って
登録してまだ日が浅いんですが、一番の衝撃でした。
とにかく沢山の本を読んでいる方とお見受けしました。語彙力に富んでいて、表現が豊かです。地の文は多めですが、文章が上手いので苦にはなりません。
相続に関する法律の知識なども深くて、感嘆しました。題材は重いですが、誰しも避けては通れないものです。読み進めると、改めて死について自分がどう向き合うべきかを問われることになります。
キャラクターや設定に対しての掘り下げが、驚くほど深いです。設定に対して、キャラクターが忠実に動くので破綻がなく、息遣いを感じます。俯瞰の視点で物事を語るシニカルな島崎と、直感で物事を見通す感受性が豊かな夏目の対比も面…続きを読む - ★★★ Excellent!!!故人からの手紙に、遺された者は何を見るか。
死にゆく人は、何のために遺言を残すのでしょうか。
これは、生前の故人から預かった手紙を配達する、ちょっと変わった業者のお話です。
母親から、折り合いの悪かった我が子へ。
身寄りのないボランティアの男性から、かつて手を差し伸べてくれた恩人へ。
手紙を運ぶだけの配達人は、遺す者と遺される者の人生の、ほんの一幕にしか居合わせません。
人間関係の機微や場の空気感まで描き出す精緻な筆致は、本当にそんな人々が日本のどこかにいるのではないかと思わせるほどリアル。
配達人の視点からは見えない事情も、想像の余地を残しつつ、「遺される人の人生はこれからも続いていくのだ」という確かな重みを実感させます。
配…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一人でも多くの方に届いてほしい「手紙」です
あまりにも素敵な作品で、読み終えたあといつも余韻に浸ってしまいます!
遺言を巡る物語であり、まぎれもなく「死」がそこにあるんですが、暗いだけのお話ではありません。遺言を遺した方の歩んできた人生は誰かの人生と交わっていて、その交わりを経てまた先に進んでいきます。何が善であり何が悪だと割り切れないことも多いですが、交わりの数だけ人の思いは存在します。遺した人と遺された人。それぞれの思いや人生を丁寧にすくい上げる作者様の手腕は、もはや脱帽としか言いようがありません。
この素敵な小説、いえ、多くの人の思いが紡がれた「手紙」が、一人でも多くの方に届きますように。