繰り返される朝。きっと主人公にとっては当たり前の朝の様子。彼女を起こさない様に動き、気づかれないと分かっていても自身の存在を残して玄関をくぐる姿からは、主人公の真摯な性格が窺える。何も問題はない、理想的な愛の形。それを築けるのは、きっとそれは彼らが同じ傷を持っているから。物語は動き出す。しかし、日常は淡々と繰り返される。でも、今日はちょっとだけ違う。
過去の出来事から、共依存に陥っている主人公とその彼女。誰かの特別になりたかったのか、ただ単に愛を実感したかったのか…。最後の主人公の言葉の解釈がとても考えさせられる作品だと思いました。短編だから読みやすいですし、短編だからこそその続きを読者の想像に委ねる形でとても面白い作品だと思いました!
循環する朝の描写と、噛み跡というモチーフで愛と暴力の境界がじわじわ侵食されていく構成が、とても印象的でした。両親と彼女と友人、それぞれの「捨てられる/捨てる」記憶が折り重なっていて、短さ以上の重さが残ります。
とても繊細で、雰囲気のよい表現が、情景をありありと心の中に描かせてくれる。だからこそ終盤の出来事が、より強く心に突き刺さります。短編ですから、ぜひ自分で確かめて欲しいと思います。