★★★ Excellent!!!
若狐は最強とハーレムを胸に—— 「雉鶏精一派へようこそ。島崎源吾郎君」 雅彩ラヰカ/絵を描くのが好きな字書き
九尾の血を、その力を色濃く引きつつも……外見ばかりは人間の父にそっくりになってしまったクォーターの妖狐・島崎源吾郎。彼は親族が集まる場で「最強の妖怪となり、ハーレムを築く」などと口走る。
しかしそれは、彼の出自ゆえの大きな葛藤とコンプレックスに根ざす、決して尻の青い若造の戯言というにはあまりにも深すぎる理由があった——。
——かくして雉鶏精一派の仲間入りを果たし、同一派の中でも雉妖怪最強の名をほしいままにする大妖怪・雉仙女こと紅藤の元で修行をすることとなった源吾郎だったが、そこで彼は己の思い上がりを突きつけられる。そんな中で、なおも諦めず争う泥臭い姿勢は次第に理解者を増やしていくものの、ある一件で、彼はやはり自分の若さを思い知らされるのだった。
【個人的に魅力的だと思った点】
魅力的な登場人物を深く掘り下げた『目』の良さで丁寧に描いている作品だなというのが、読了後に抱いた私の素直な感想でした。思慮深く、そして様々な学問に造詣が深くなければできない文章と筆致、そして構成力。あらゆる点においてハイレベルな作品と言えるものでした。
特にキャラクター——特に主人公の源吾郎くんの心理の揺れ動きなどが殊更に生々しく、そして青臭く人間らしいなと感じられました。妖狐であっても、いや、だからこそその血筋ゆえに九尾の血を引くことを目立つようにしない環境で育った彼は、どちらかといえば人…
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