兵藤晴佳

ポツダム宣言受諾から日本が降伏文書に調印するまでの間の空白に、「日本」ではなくなった場所で何が起こったか。 「日本」の端の片隅にまで、私たちはいつまでも目を向けていなければなりませ…続きを読む

どこかに時代を感じさせながらも、大人の心を爽やかにしてくれる好短編です。 自作パソコンのためにパーツを探して歩く、あの感覚と共に、気心の知れた仲間たちと、現実には絶対に存在しない、…続きを読む

笹本祐一『ARIEL』にも長崎の原子爆弾を扱ったエピソードがありますが、残虐な大量殺戮兵器の被害を切なく描き出せるのは、日本人ならではの感性でしょう。 井上ひさしのように死者の声を…続きを読む

個性あふれる異形たちが綺羅星のように次々と現れては見せ場を作ってくれる様子は、舞台に勢ぞろいして見得を切る歌舞伎役者のよう。
必読のファンタジーです！

気軽に読める、ムダ話。
この、気の抜けた雰囲気がたまりません。

蟲たちが文字通り傍若無人に跋扈する世界で、健気に生きる兄妹の物語。 蠱惑的な魅力を持つ清楚な義理の妹は、憑虫と呼ばれる危険な怪物を屠る力を持っている。その名も、「天道花」。燦然と輝…続きを読む

日本神話の神々は、大昔の日本人にとってはキャラだったのでしょう。そう考えると、身近に思えてきますね。

たぶん、そう来るだろうとは思ったんですよ。 でも、それはベタかな……と。 しかしやっぱり、そう来なくちゃダメでしょうっていう……。 たしかに、ほろ苦い。でも、温かくて気持ちのいい短…続きを読む

現実とファンタジー世界の行き来が、無機質な硬質の文章で淡々とつづられています。異世界ものというよりは、サイバーパンクのハードSFのような……。

プロの方に物語を作るプロセスを明かしてもらえる機会はなかなかないのですが、スタートラインはこういうものかと学ぶところが多くありました。 構成の妙を、もう少し読み込んで勉強させてい…続きを読む

淡々と出来事だけが述べられる、すっきりとした歴史ものです。

昔、嘉門達夫に『ビデオを返しに行かなくっちゃ』っていう歌がありましたが、ちょうどそんなノリの話です。

森羅万象、全てが神。それが日本人の根っこにある世界観です。
ひとつの世界のルールに従って、一連の出来事が川のように流れてゆきます。

どこかの小劇場で見たくなる作品です。 それぞれの女たちが２人ずつ語り合うことで、それぞれの哀しみが浮き彫りになる。 悲しみを浮き彫りにされた女はまた別の女を……。 さらにそこで現れ…続きを読む

なんともいえませんね、このヤマなしの不条理感。

　中間発表通過おめでとうございます。 　私も演劇ものをファンタジーで書いたりもしましたが、完敗です。いや、脱帽。 　舞台に携わる者の哀歓を、ここまで叙情たっぷりに描いてくださるとは…続きを読む

使えないかもしれないけれど、手は抜いていない。
なけなしの力を振り絞って、頑張ってる。
不定命（インモータル）の少女と定命（モータル）の少年が織りなす、切なくも心温まる物語です。

非存在美少女との甘い生活。
男の永遠の妄想といえばそうなんですが。

ちょっとメランコリックな文章に、地元愛と交通安全への祈りが込められています。

　これが茶道の世界です。
　派手なキャラもストーリーの起伏もない。
　ただ、日常。
　それなのに贅沢な時間が、そこにはあります。

止まってしまった列車という非日常空間の中であふれ出る感情。
押さえに抑えていたものが、蓋が取れて、一気にあふれ出す。
心の闇を見通した、好小編です。

禁断の関係を暗示するかのような題名に、つい背徳感を刺激されて読んでしまうと……。
世界の端っこに追い詰められた者の哀しみと怨念が見えてきます。

家族の絆を期待させておいて……鮮やかにうっちゃってくれました。
でも、理屈からいうと……あれ？

老いたベテランと可憐な少女との軽妙なやりとりが、「もう１人」の登場でがらりと流れを変える。コントの基本構成を使いながら、最後に「ああ、そうか」と思える名前が伏線を受けて重厚感たっぷ…続きを読む

こういう世界を待っていました。
知る人ぞ知る、バックギャモンの世界。
『長谷雄草子』で鬼が美女を賭けたあのゲームにあなたもきっと熱くなることでしょう。

　そう来ますか、の一言に尽きます。思いつきませんでしたね、このオチは。 　語り手をじっと見つめて、その運命までも知り尽くしている。 　武田泰淳『十三妹』のような魅力と凄みのあるメル…続きを読む

　この手があったか、という日帰りファンタジーです。異世界と現実の交錯が、巧妙に叙述されています。 　クライマックスは、世界的に有名な、あのエピソードみたいな……。 　その先は、言え…続きを読む

時間は、人の視界を広げていく。その世界が見えないうちは、眼の前にあっても気にもならないものはたくさんある。ある世界が見えてきて初めて、気づかないうちに失っていたものの価値が胸の痛み…続きを読む

　楽しめますね、モンスターへの蘊蓄。
　これで著作権関係の落とし穴まで言及してあれば完璧です！

レーズンって……に似てる。

セクハラぎりぎりの発言に結構ドキっとさせられますが、美味しくも上手い話の運びになっております。

がんばれ、地味な女の子。ちょっと前進。

どっと力が抜ける不条理な議論。それでもみんな大真面目です。

　来ました、ブレヒト的落語！ 　「なんだそれは」と思わせる不条理をぶつけて、世の不条理を読者自ら考えさせる手法は、ナチスにも、亡命先のアメリカにも楯突いたブレヒトの手法に通じるもの…続きを読む

　そうなんですよね。
　帰りたいと思っても、あの頃はもう、心の中にしかないんです。
　描かれる夏の風物詩のひとつひとつが、じんと胸に沁みわたります。

　あるベテラン女優が、稽古場でこう言ったそうです。
「ああ、このまま初日が来なければいいのに」

　同じ目的をもつ仲間たちと過ごす時間って、そういうものです。

樽見鉄道と薄墨桜。
この取り合わせには、人を酔わせる何かがあります。

行間に、幻想宇宙が透けて見えます。
その中を飛び交う少年少女たちの想いが、カオステラーとの戦いの中で一層際立ちます。

ありがちといえばありがちな展開なんですが……役得ですね、エクス。

自分と同じ人がひとりいるだけで、安心できる。 そんなことって、よくありますよね。 でも、それって、本当にいいことなんでしょうか？ 「私だけ違う」ことのほうが正しい時も、あるんで…続きを読む

こういう、凛とした人物がひとりいると話が引き立ちますね。

　派手なセリフ回しも波瀾万丈のストーリー展開もありませんが、おそらくいつの時代でも変わらない、学問と芸術を愛する文化系の学生生活が静かに語られます。 　 　門外漢には分からない専門…続きを読む

　何もかも知っているお得な立場の主人公が、欲望のままにお約束をひっくり返していくピカレスクロマンです。 　視点移動は忙しいかもしれませんが、こんなのは欧米マスターピースじゃ当たり…続きを読む

　先生方が主人公の学園ファンタジーというのはなかなか見られないものです。 　始まったばかりですが、ぜひ学校という空間での喜びと悲しみ、理想と現実との不条理な矛盾を読みたいと思います…続きを読む