ささやきの彼方

原爆によって犠牲になった人々の話..
かなり悲しいですね。

8月9日長崎。原子爆弾。
その記憶は日本人の中に鮮明に残されています。
たとえ当時生きていなくても、映像や記録を通して知ることができ、その声に耳を傾けることができます。
本作はそんなありし日の思い出を、鮮やかに蘇らせる作品です。
読むものに、忘れてはならない記憶を静かに手渡してくれます。

流れた時の中に消えた人を想ってください。

この題材は日本人、いえ、生ける全ての人間にずっと付いて回るものだと思います。

私はこの時代の原風景を知りません。すべて教科書の中の出来事です。
ただ、日本人ならば、まず第一話だけですべて脳内にありありと思い浮かんでしまうことでしょう。

その中でエンタメ、SF要素を混ぜこの文字数、話数で構築し読ませる文章になっているのはさすがプロの技、と勝手ながら思わせていただきました。

とにかく短いので、読んでみてほしい。
特に、8月は。
そう思いました。

私のTwitterを始めてフォローしてくれた方の作品ということもあり、軽い気持ちで読み始めました。

ですが読んでいくうちに、これはただの短編ではないと感じました。

この時代背景を題材にする場合、我々日本人にとっては、その扱い方次第で痛い目を見ることもあります。
それだけに、この作品がSF要素を加えつつ、純粋にエンタメとして読ませる構成になっていることに驚かされました。

読後には、様々な感情が刺激され、「読んで良かった」と心から思える一編です。

私達の世代だと、どうしてもSFというと、『スターウォーズ』や『ガンダム』、『ドラえもん』などのアニメや映画の影響が出てしまいがちなのですが、それとは全く違う形のSFを見せてくれる、珠玉の短編です。

この作品の真髄は、主人公の心理描写であり、その書き方は私小説に近いです。それをSFというジャンルを使って描かれており、９０年代の作品にも拘わらず、読後感が新しいです。
令和になった今でも、私小説はSF・ファンタジー要素を嫌う傾向があるので、こういう作品は案外SF側にも私小説側にもないと思います。

また、カクヨムという若手の書き手が多い環境にあって、このような大御所の隠れた名作があることは、とて…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（95文字）

最初に予備知識なしで読んでよかったです。
すらすら読めてしまう文章を追いかけて30秒ほど。
しっとりとその世界に引き摺り込んでくれます。
短編小説の凄まじい威力を顔面に食らった気分です。

この作品に出会えてよかったと、心の底から思いました。

ケン・リュウのように、SF的な題材を扱いながらも人間の心情を丁寧に描写するような作品が好きな方は、是非手に取ってみて下さい！

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（226文字）