読後まっさきに思い浮かぶ言葉を口にするとネタバレになります

蟲たちが文字通り傍若無人に跋扈する世界で、健気に生きる兄妹の物語。
蠱惑的な魅力を持つ清楚な義理の妹は、憑虫と呼ばれる危険な怪物を屠る力を持っている。その名も、「天道花」。燦然と輝く花々の中で、凶悪な虫たちは清められて消える。
そんな妹の愛を一身に受ける兄もまた、虫たちとの戦いに突然に放り込まれ、数奇な運命をたどるのだった……。

と、こんな言い方をすれば、おどろおどろしい伝奇バイオレンスのようにも見えます。ところが、さにあらず。
妹が、実に可憐なのです。バトルはめちゃくちゃ強いのに、お兄ちゃんだけを一途に慕う。いや、慕いすぎというべきか。

愛するお兄ちゃんの周りをウロチョロする女どもは、許さない。生かしてはおかない。いや、原形さえも留めてはおかない……。

不思議な作品です。やっぱり、話がそっちの方へ行っちゃいますね。義理の兄妹のちょっと危険で甘々な毎日は、憎悪と暴力の世界に呑み込まれていくしかないのでしょうか。すると、待っているのは……。

思い出しませんか? あの、あまりにも有名な、あの不気味なお話を。
オチらしいオチのない、ただ、不安だけがばっくりと口を開いて読者を待ち構えているような、あの物語を。
あの結末の登場人物たちも、ひたすらに明るくはありませんでしたか?

妹の愛に応えるために、主人公が引き受けた運命。それはあまりにも残酷で、そして不条理に満ちています。
数奇な運命の行きつく先に、まさか、アレが待っているとは……。