第21話
テスト飛行を終えてシルバーノアが無事に港に着水出来た事に胸を撫で下ろす。船内に海水が入ってきてないか、分担して見回ったが浸水は認められなかった。
「じゃあ、今日は完成祝いだ。ご飯は何がいい?」
聞くまでも無かったがバーベキューに決定。
「いいけど、もう焼肉のタレが少ないから、醤油ベースでオリジナルで作るよ」
『頻繁にバーベキューをすれば、そりゃ無くなるわ!』
そう心の中で文句を言いながらも、まだ時間は昼を過ぎたばかりである…
「せっかく、目の前に砂浜と海があるから泳がない?」
「いいですね~。こう見えて泳ぎには自信があります」
「私は、泳ぐのが初めてだから楽しみよ」
そんな事で、異世界で初めての海水浴を楽しむ事になる。
だがここで問題が発生。自分の水着は持っていたのだが、他の二人は水着を持っていなかったので、フィーナにマジカルスパイダーの糸でフェルムの水着を作って貰う。(尻尾の部分は、丸く穴を空けた)
フィーナの水着は○○ウォーカーの夏の別冊号を持っていたので、本を持って転移で消えて行った。
そしたら、白いビキニに着替えて登場。
「どう、似合うかな?ちょっと露出が多いから恥ずかしいかな…」
『じゃなんでそんな水着を選んだんだよ!』
と、ツッコミたいが、その前に水着姿のフィーナの破壊力に悩殺され鼻血が吹き出した。
情けない…フィーナに治癒スキルの【精神の癒し】と言う精神が安定する魔法を掛けてもらった。
しかし、目のやり場に困るのでパレオとシャツを着て貰った。ようやく落ち着きはしたが、今も目に焼き付いてしまい普通に顔を合わせられない。
きっとフィーナの全裸を見たら確実に出血多量で死んでしまう自信がある…何の根拠もないが確信した。
ちなみに、プールや海水浴でこんな事になった事はない。あったら捕まるか出入り禁止だ。
異世界の海は、地球と同じで塩辛く、空を鏡の様に映し出すほど青く澄んでいてとても綺麗。
「それじゃ、ちょっと潜ってくるよ」
「溺れないように気を付けてね」
なんだか、親に昔に言われたのを思い出して、懐かしさを覚えながら素潜りをしてみると、海の中は赤やピンクを中心とした珊瑚礁があって色彩が綺麗な魚が群れを作り泳いでいた。
近づいてみても、魚は逃げ出さない所を見ると擦れていなくて感動。
ふと沖に目をやるとフェルムが、もの凄い勢いで泳いでいた。泳ぎに自信があると言っていたが本当のようだ。
なぜそんなに高速で泳げるのか潜ってよく見てみると、尻尾をスクリュー代わりにして泳いでい絶句。
『嘘だろ!こんな泳ぎ方ありえないだろ!恐らく地球だったら世界一位だろうが反則で失格間違いないが…』
それからも、泳いだり砂で城を作って楽しみながら海水浴を満喫した。
少し疲れたので、ビーチパラソルを人数分創作してスマホで目覚ましをセット。仮眠する準備をした。
砂浜に寝転がり、目にタオルを乗せてしばし仮眠。
それから数時間経ち、目覚ましが鳴ったのでバーベキューの用意を始める。
炭に火を入れると、ここで、またも笑える事件が発生。
フェルムが起きてこちらに近づいてくると、寝相が悪くタオルが変な方向にズレて顔の左右非対称に顔半分が日焼け、もう半分が日焼けしてないと言う笑える姿で登場した。
普段まじめでクールに見えるだけに、流石に笑いを堪えるのに必死。
ついに堪えきれず抱腹絶倒。暫く砂浜に転がり続けながらのたうち回り、お腹が痛くるまで笑い転げた。
「ごめん、もう笑わないから許してくれ」
「私も心の底から謝るから許して」
息を切らせながら謝ると、フェルムは自分の不注意で逆に迷惑をかけたと頭を下げた。これがオレなら絶対復讐する。
明日、反対側も焼いて対応すると言う事だったが、フィーナが冗談半分で治癒魔法を掛けると肌の色が少しづつ戻っていき5回目の治癒魔法で元に戻った。
これにはかなり驚いたが、治癒スキルの【癒しの光】は細胞を活性化させて治すとの事。魔法の世界恐るべし!
温泉に入る時にヒリヒリするのが嫌だったのでついでに俺達もヒール。火照った体も元に戻っていく。日焼け止めはいらねーな。
焼肉のタレのレシピを頭に浮かべながらタレを作る。
「やった。タクトが作るタレ 楽しみ!」
「初めて作るから、味は保障出来ないよ!」
醤油をベースに、チューブにんにく、りんごペースト、料理酒を混ぜ、火を掛けてアルコールを飛ばして味見しながら味を調整していく」
「タクト、こっちは準備出来たわよ」
「こっちも出来たよ」
焼肉のタレが出来たので、缶ビールと一緒に配る。
「じゃあ、シルバーノアの完成を祝して乾杯!」
「「乾杯」」
日焼けの影響なのか?ギンギンに冷えたビールを飲み物を飲み干すと最高に旨い!すっかり乾杯も定着して、なんだか異世界では無いのではないか?と言う感覚さえ覚える。
「海でビールを飲みながらバーベキューって最高かよ!」
「ほんとにね。体に染み込む~!」
「本当ですね。色々ありましたがね…」
肉が焼けてきたので、フェルムの自虐プレイは放置。オリジナルのタレを付けて食べてみると思っていた以上に美味しかった。
「タクトが作った、このタレも美味しいわねー」
「はい美味しいです」
『っていうか、マジでうまい』
それからもビールと焼肉を堪能。
片付けが終わると、フィーナからいつもの温泉のお誘いを受ける。
いつもと変わらぬ感じの会話をしながら温泉を出て、フェルムも温泉から帰ってくると、コーヒーを飲みながら屋敷のソファーで火照った体を癒す。
「明日からインレスティア王国に向かうけど、行先の詳しい情報を教えて欲しいかな」
「はい。向かう先はザバル領と言ってザバル男爵の領地になっています。ザバル領のロッド村と言う小さな村にアイラは匿って貰っています」
地図でもう一度確認して場所と方位を確かめる。
「今頃思い出したんだけど、海に巨大な魔物がいると、神様の手紙に書いてあったんだがフェルムの仕業なのか?」
「はい。リバイアサンと言う魔物をテイムしてこの島を守って貰っています。無論、島に近づかない様にしているだけで、攻撃はしないように命令をしていますが…」
『リバイアサンって竜族だよな?神獣だったってけか?、なんにしても誰かが来てバベルを見られたら面倒だ。当面は今のままの方が助かるな』
そう頭の中で結論を出すと、リバイアサンを現状維持していて欲しいと頼んだ。
明日は朝食を食べたら直ぐに出発するので、今夜は早く寝る事になった。
ベッドに入いって目を閉じる。
すると遅れてやって来たフィーナがやって来た気配が…
「ねぇ、タクト、もうそろそろ一緒に寝ちゃ駄目かな?」
『――!ついに来たよ、恐れていた、ビッグイベント!』
「フィーナ俺は…」
「何真剣になってるのよ。冗談よ」
フィーナは明らかに動揺していた俺を見て、引いてくれて正直助かった…
「でも、そのうち……」小さく声が聞こえたが、聞こえないふりをする。
「じゃ、おやすみ。タクト明日から旅が始まるね」
「そうだね。何日か分からないけど、ここで寝るのは、落ち着くまではしばらく無いかな…」
「ねぇ、少しでいいから手ぐらい握ってよ」
「ああ、そのくらいならいいよ」
強がりでそう答えたが、心臓の鼓動が跳ね上がる。未だにこれだけは慣れないのは心の中で覚悟が揺らいでいるのかも知れない。いや、ガタガタだ。
その晩、眠たかったはずなのに寝付けないので、今一度フィーナの事を真剣に考えた。
自分の事はともかくとして、フィーナはオレの事をどう思ってるんだろう…最初は、反応を見て楽しんでいるだけだと思っていた。
フィーナは妖精であって、一度死んだ俺とは違う…諦めたはずだ…本当に好きになってしまったら自分が勢いで暴走してしまわないか心配だ。
太陽と月が一定の距離を保つように、俺達二人もまた一定の距離を保つと割り切った筈だ…フィーナが太陽とするならオレは月で近づけば燃え尽きてしまう。
『フィーナは俺の眷属でずっと一緒…思ったより過酷でつらい。これならいっそ大暴投ぐらい守備範囲外の方がマシだよな…』
そんな事を考えていると、いつの間にか寝落ちしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
異世界生活十七日目
翌朝…ついに出発の朝がやってきた。
フィーナとフェルムは、珍しく俺よりも早く起きて、フィーナはお願いしておいた花を摘んできてくれて、フェルムは迷宮に立札を立てに行ってくれたそうだ。
「二人ともありがとう」
「いいのよ。約束だもん」
「そうですよ。自分のしでかした事ですから」
それから、花とアルコールを用意し「
フィーナが摘んできた花の中に、ハーゲ○ダッ○のに書いてある、バニラぽい花があった。
匂いをかいでみると、バニラのいい香りがしたので抽出した液体を見てみると、バニラエッセンスが抽出できた。
今度暇が出来たらバニラエッセンスを使って、バニラアイスやプリンを作るしかないな。
そんなこんなで、炭酸ナトリウム+消石灰+各種花のエッセンスを合成していくと石鹸が7種類出来た。
残りは香料や油としてガラスの瓶や陶磁器の壺に入れてアイテムボックスに収納した。
「じゃあ、この島でやる事やったから出発しようか」
タラップから、甲板に上り艦橋ブリッジへと入って配置に着く。
「タクト何も異常はないわ」
「こちらも異常なしです」
「それじゃ、ゆっくり10000mまで上昇。異常があったら直ぐに言ってくれ!」
「「了解!」」
シルバーノアは徐々に上昇していき、雲をつき抜けると球体なのが良く分かる。
「高度10000mに到達。出力40%、船体に異状なし。魔力は安定しているわ!」
「それでは、インレスティア王国、ザバル領に向けて発進!」
シルバーノアは、徐々に加速しながら島を離れて行くのを見て、この島での出来事を振り返った。
『ドラゴンと戦かったり、美女と混浴イベント、さらに飛空艇で旅をするなんてRPGや漫画で言うと最終章じゃねーか!』と叫びたくもなる。
異世界に転移してから17日間、凄く楽しいが濃すぎる毎日を送り、俺は三人の仲間と共に島から旅立った。まっ、転移でいつでも帰ってこれるけどね。
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