第47話
―― インレスティア王国 シルバーノア ――
翌朝、今日はスケジュールに余裕が出来たので、王侯貴族達を乗せて旅をしなくちゃならないので、本格的に自分達の部屋も含めて後回しのしていたVIPルームを完成させる。
今日フィーナ指導の元、アンジェ王女とセリスさんが一緒に服を作るとシルバーノアに尋ねてくると言う話なので、感想や意見を聞くには絶好のタイミングだ。
フェルムとアイラは家畜をザバル男爵の知り合いに預ける為に、荷台付きの馬車の御者をお願いして既に出かけて今この飛空艇にはオレひとりと何だか取り残された気分。
「ぼちぼちと始めるとするかな」
元々艦橋に一番近い場所に、広めの部屋を作ってあったのだが、王侯貴族相手ともなると周りの迷惑も考えて設備を設置していく。
まずは、王侯貴族ともなると執務作業や応接などもあるだろうと執務室を作る作業から入る。
教務机と接客用のソファーセットを設置して、壁面には作り付けの書棚を創作して地図を貼り付けた。
執務室が完成すると次は個室の創作に移る。
女性が多いので、洗面台、トイレ、三面鏡を設置。ベッドサイズはクイーンサイズを2つ並べた。
初めてコイルスプリング方式のマットレスを創作したので試しに腰掛けると、屋敷で使用しているベッドよりもかなり寝心地が良くなったので、ソファーにもコイルスプリングを採用。
かなり日本で売られている高反発のマットレスに近くなった気がする。
多少の水平が保たれなくても、ずれたり怪我をしない様に全ての家具を固定をしたのでチェックして完了する。
同様に計6室のVIPルームを創作していくと、同じ物を作っていだけなので、予定より早くVIPルームは出来上がった。
『ん~、完成はしたけど、物足りない気がするな…』
まだ工夫が出来ないかと寮やホテルを思い浮かべたら、不在中、睡眠中、接客中の札をドアに掛けるプレートぐらいしか思いつかない
「その都度考えて臨機応変に対応しようか…」
客室の布団は王子に相談をすると、宮殿に新品の羽毛布団の在庫があるらしいので譲って貰ったが、一般客室世用のシングルの羊毛布団は在庫がないそうなので、王都の繁華街で布団一式買い揃えてもらうように手配済みだ。
ベッドの大きさに合わせて創作で調整なくちゃならないが、これで一通り揃う事になる。
VIPルームの改築工事が終わると、小腹が空いたので食堂へと向かう。
いうのまにやら、アンジェ王女とセリスさんが食堂に来ていたようで談笑していた。
挨拶を交わして、アンジェ王女に差し入れを貰ったそうなので、お礼を言ってコーヒーを淹れて椅子に腰掛けた。
「あっ、私としたことが忘れていましたわ。つまらないものですがご笑納下さい」
王女が恥ずかしそうに、王室の紋章が入った箱を恥ずかしそうに机の上に置いた。
「お気遣い頂いてありがとうございます。不躾な質問ですがこれは?」
「朝から私達2人でクッキーを焼いたんです…お口に合うかどうか分かりませんが…その…食べて頂ければ幸いです」
いつものような阿る感じもせず、年相応の恥ずかしそうにしている。箱を空けて見ると、ジャムが中心に置かれた見た目もいいクッキーが…
がまさかの王女と令嬢がお菓子作りとは…生まれて初めての手作りのお菓子を貰ってちょっと嬉しい。俺もちょろいヤツだな。
手作りクッキーを食べてみると、かなりレベルが高い。王侯貴族でもお菓子作りなど嗜むのか尋ねてみると、王都の学園には調理実習的なものが教育の一環としてあるそうだ。
「そう言えば、旅をする最中に使って貰う部屋を完成させたから後から一緒に見て感想や意見をくれないかな?」
アンジェ王女は何を勘違いしたのかは分からないが、べかけていたクッキーを無理やり口に押し込んだ。
「今すぐ行くなんて言っていないじゃありませんか…それに作法的にも淑女として、いえ王女としてどうかと思いますが…」
セリスさんはため息を吐いてが、呆れ顔で王女を駄目だしをしながら紅茶を渡した。
「コホ、コホッ…ありがとう…そうね。お見苦しい姿を見せて申し訳ございません」
確かにそそっかしいとは思ったが、ど平民のオレからしてみれば、二人の所作は素晴らしいと思う。
少し二人の事を見直しつつ、休憩が終わると創作したてのVIPルームへと案内した。
「わーっ、素敵なお部屋ですね」
「詳しい用途や使用方法などぜひ教えて頂きたいです」
「もちろん説明はしますよ。椅子の高さとか女性ならではの目線で、何か改善して欲しいところがあったらその都度言って欲しいかな」
三人に簡単に説明をすると、フィーナはコイルスプリングのマットレスとソファーがお気に入りのようでコイルの浮き沈みを楽しんでいた。
「このソファーとベッドを屋敷にも欲しいな~」
「無論そのつもりだよ。気に入って貰えて良かったよ。二人はどう?何か気になった事とかある?」
「気になる場所などございませんわ。見た目でけではなくてどれも使いやすくて最高ですよ!」
「アンジェの意見に同意です。今から自分の荷物持ってきて今からでも住みたいですよ」
「まだ、部屋割りをしていないからね。出発は明日の予定だからまた全員で話し合ってからね」
そう答えると、セリスさんは「へへへ…」と笑って誤魔化していたけど、特に3人から指摘も無く改善箇所は無さそうで一安心。
服も既に作り終わっていたようで、王女とセリスさんは王城に戻って行った。
昼ご飯を食べて寛いでいると、ラルーラさんが食堂へ珍しく単独でやってきた。
「珍しいですね。ひとりで来られるなんて」
「家族でも恋人でもないですから別に珍しくはありませんよ。それよりも勝手な相談なんですが、聞いてはくれないでしょうか?」
「ん?どうしたんだい?」
普段あまり喋らないラルーラさんが、そう言ったので、何事かと思って聞いてみた。
「この国の陛下の心遣いを無下にするには気が引けますが、今晩、この飛空艇に泊めて頂くわけにはいかないでしょうか?ここにあるトイレがあまりにも快適すぎて…」
『洋式便座に慣れるとやっぱきついよな…』
まだ正式にVIPルームの部屋割りもしてないし、王妃様にも懇願されていたので、余った時間で王城のトイレの改修を片っ端に行うことにした。
数時間かけて、王城のトイレの改修作業が完了。
王妃様に感涙されながら、お礼の感謝の言葉をいただいた。その後も侍女やメイド達とすれ違う度に大袈裟気味に感謝された。モテ期が来たのかと勘違いしそうになるよ。
そして、フィーナとのいつものお勤め?をこなすと、今日も濃い一日だったので早めに就寝をした。
翌日…
朝早くに起きて、シルバーノアの側面に紋章を大きなレリーフで創作。昨日作った旗を掲げると、アンジェ王女とセリスさんがマイ枕を大事そうに抱えてやって来た。
「アンジェ王女、セリスさん。おはようございます。今日から宜しくお願いします」
「おはようございます。タクト様、これから一緒に旅にでるのに敬称や敬語は不要ですわよ。私達は侍従の関係じゃないですし、タクト様は、神の使徒なんですからね」
「そうですよ。呼び捨てで結構です。っていうかそうして下さい」
「分かりました。王子と同じで人前では敬語を使いますが。それ以外では遠慮なくそうさせて頂きますね。私はそれでいいとしても、アンジェはその言葉のままなんですか?」
「ええ。王族ですから品格がどうのこうの言われ生活をしてきましたから…もう生活の一部ですから中々なおりませんが努力はいたしますわね」
隣にいたセリスも「タクト様。よろしくです」と短く言って、シルバーノアの食堂に私物を運んで行った。
その後、ザバル男爵が「それでは、今日はよろしくお願いします」と、満面の笑みでやってきた。
「こちらこそ、これから宜しくお願い致します」
ややあって、荷物などの最終チェックをしていると「ちょっと、タクト何してるのよ。皆が待ってるわよ」と、フィーナの呼ぶ声が聞こえたので甲板から下を見ると、自分以外全員が城門に集まっていた。
「ごめん。すぐに行くよ!」
急いでタラップを降り、城門に行くと王子は「全員揃いました」と報告をした。
「うむ。それでは諸君!無事に帰ってくる事を心から祈る」
校長の話よりは短かったが、5分ほど王侯貴族達から一言づついただいた。
「お父様、また直ぐ戻ってくるのに大袈裟ですよ」
「これも職務のうちなんだから我慢をするのだ。それではタクト殿、みんなを宜しく頼んだぞ」
「はい。また何かありましたら直ぐに戻って参りますので、その時は宜しくお願いします」
王侯貴族とは面倒だなと思いながら全員がシルバーノアに乗り込むと、いつものルーティンを経てザバル領へと飛びたった。
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