第45話 

―― 王都の上空 ――


アンジェ王女達だけを「馬車で帰ってこい」なんて言えないのでシルバーノアに乗せてから、デニス公爵領を出発して約1時間経つと王都の上空に着く。


しばらく停泊していたので見慣れたのか、王城や王都も前の様に特に混乱も無いようで安堵のため息。


広場に降りると王子と宰相たちがこちらに向って走ってきて「ハァ、ハァ」と息を切らせながら出迎えに走って来た。


王子は深呼吸すると、開口一番に「待ち焦がれたぞ!」と、開口一番にまるで恋人を待っていたかのような言葉を言われて思いっきり全員が引いた。


「兄弟揃ってこいつらは…」と小声で聞こえたので目配せするとフィーナの顔が能面の様になっていて怖い。みっ、見なかった事にしようと思う。


「まだ1日半しか経ってないのに大袈裟じゃないですか!」


「そうですお兄様!どんだけタクト様の事が好きなんですか?」


『オマエガソレヲイウカ…』と全員がそう思った筈だ。


「馬鹿を言いうな。タクト殿を追いかけて行った、お前たちには言われたくない」


そう言っていると、勇者達も顔を見せて挨拶をする。


「殿下、ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」


「謝る必要などない。助け出すのが遅くなってすまなかった。私にもっと力があれば…」


『あの…助けたの俺なんすけど…』


「それはお互い様ですよ」


「そうだな。互いに謝り合っていても仕方が無いな。それよりも、父が話を楽しみにしておられるので会議室へと行こうか」


『そんなに急かさなくても、逃げねーよ。頭が痛くなってきた』


心の中で盛大なツッコミ大会をしながら、開かれた会議室に入ると、王侯貴族達が入って来たのを見るなり椅子が倒れる勢いで立ち上がった。


『こういっちゃ申し訳ないけど、王侯貴族の矜持とやらはどこに置いて来た…威厳もへったくりもねーな』と、オレの評価はだだ下がりだ。


「王侯貴族の皆様方。ただいま勇者アルム救出と堕天使レクトリスを捕縛して天使に引き渡しをしてきました」


「うむ、作戦を完遂していただいて心から感謝する。アルムよ、無事でなによりだ」


「ご心配おかけして、心からお詫びいたします」


「うむ。タクト殿、それでは早速で申し訳ないが状況を報告して欲しい」


そんなわけで、昨日あった出来事を簡潔に話をした。


「なるほど…堕天使だけども厄介なのに、邪神が復活したらただではすまんだろうな…なんとか阻止する手立てがあれば良いのだが」


「アルム君の話によれば、堕天使は2人?残っているそうなのですが、どこに潜伏しているのか分からない以上、阻止しようにも手立てがありません」


「アルムよ、知っている範囲でよいが、王国に封印の祠は幾つの残っておる?」


「はい。私の知る限りではティス村の付近と、ロイス辺境伯領の東の山麓にある、ラクロと言う辺境の村付近を合わせると二つでございます」


「そうか…分かった。そこの兵士、騎士長を呼べ」


「はっ!直ちに呼んで参ります」


陛下にそう指示をされた兵士は、急いで退出すると数分後にゴルさんを連れて戻ってきた。


「騎士長ゴルディル・マスティー参上いたしました」


ゴルさんが会議室にやってくると、陛下はこの国にある残り2つの封印の祠を、小屋を建てて3交代で監視するように指示。


堕天使は不死であるため、戦闘はせずに何か変化があったらすぐに連絡するようにと指示を出した。


「最後に、近くの村に迷惑を掛けないように兵士に徹底をするように。それでは人選はおまえに任せるので準備を整えさせて明朝出立せよ」


「はっ!陛下のご命令、謹んで承ります」


ゴルさんは歯切れよく返事をして、こちらをチラ見すると足早に退出していった。


「まぁ、こんなとこか。情けない事だが我々じゃ邪神どころか堕天使にも手が出ぬ。タクト殿には迷惑を掛けるかもしれないが、その時は許してほしい」


「はい。神様からも邪神や堕天使を討伐せよなど具体的にではないですが、似たような天命を受けていますので出来る限りは協力します」


「すまないな。それより忘れるとこじゃったが、デニスの様子はどうたあった?」


「夏風邪でしたので薬を出しておきました。また詳しい話は王女から聞いて下さい」


「私用を無理やり頼んですまなかった。神の使徒様を顎で使うのは罰当たりと分かっておきながら心からお詫びする」


「いえ、色々と得る物も多いですからね。神の使徒とてひとりじゃ生きられないのですから、そこは助け合いの精神と言う事で」


「そう言って貰えると助かるよ。それよりタクト殿は紋章を考えてはおらんのかな?」


「紋章ですか…」


「左様、紋章だ。馬車や飛空挺などに、王侯貴族のように紋章を作って書き入れると言うのはどうかと思ったんだよ。それなら一目でタクト殿と分かるんじゃないかと思うんだが…どうだ」


「それは、とても良い考えですわ。この先、タクト様が考案された物や、お作りになる製品の全ての物に紋章を入れてみては」


いやいや、これだけ何世代もブレイクスルーすりゃ誰でも分かるってばよ…


「それは名案だ。タクト殿は、製品を開発しても、褒美どころか金貨すら受け取ってくれぬ。製品の頭に名前を付けるのも拒否されたからな」


紋章を作るのはいいとしても、製品に紋章を付けるのは拒否したい。


『ヨシ!断ろう。問題はどうやって断るかだな』


「何を迷っているのよ。タクトは神の使徒よ、貴方の功績はそのまま神様の信仰心の向上に繋がるんだから引き受けたら神様が喜ぶわよ」


『くぅーっ!そんなもっともらしい理由を付けられたら断れないじゃねーかよ!』


「分かりました。それでは、今日中にサンプルを作って持ってくるので見て頂けますか?」


「言いだしたのはワシだからな。無論出来上がったら優先的に拝見させて貰うよ」


そんな話になって、王侯貴族達は、仕事が山済みになっているそうで、今日はここで解散となった。


「そう言えば、アルム君達はどうするの?勇者って国抱えじゃないんだろ?もし良かったら旅に付いてこないか?」


『ぶっちゃけ、王子や王女に構ってらんないから、付いて来てくれると嬉しいんだが…同世代の仲間が欲しかったしな』


「本当にでいいんですか?一緒だと楽しいし勉強になるから、一緒に付いて行こうかな」


「そうこなくちゃ!アルムもたまには、いい事言うじゃない!」


「たまには、余計だよ」


ローラさんは、アルム君の背中を叩きハイテンションだったが、アルム君が居ない時とはキャラがまったく違う。恐らくこれが本当の彼女の姿なんであろう。


「ほらローラ。そんなにはしゃいでいると怪我をしますよ。タクトさん。お誘いして頂いて嬉しいです。今後とも宜しくお願いしますね」


「うひゃー!あの超絶人見知りのラルーラが、酒が入っているわけじゃないのに、笑いながら喋ってるよ。こんなに短期間でこの状態に持っていくなんてタクトさん、マジ凄いっスよ!」


「そうね。まるで別人を見ているようだわ」


ラルーラさんが嬉しそうにはにかんでいると、アルム君とローラさんは驚いていたが、最近小声ではあるがよく喋りかけてくれるのでオレとしては特に驚きは無い。


「私の事も、これから宜しく頼む」


「やばいよ、タクトさん。俺達も一月に一回位しか、シェールの声を聞いた事ないのに!もう聞けるなんて!」


『月に一回って!どんだけ、レアなんだよ!勇者パーティ、個性ありすぎじゃねーか!』


勇者パーティと共に旅をする事が決まると、シルバーノアに戻る事になった。


王城を歩いていると、中庭に差し掛かったところでゴルさんが腕を組んで待っていた。


「タクト殿。もし暇があったらで良いので、兵士に稽古をつけて欲しいのだがお願い出来ぬだろうか?」


「構いませんが、理由を聞いても?」


「陛下に何もせずに逃げよと言う言葉が結構堪えてな…しかし今のままで、堕天使と戦う事になれば、陛下の仰るとおり傍観するしかない。それでは王国騎士団として情けないではないか」


戦う場所で戦略は変わるが、純粋に堕天使対騎士団、魔人魔物軍団対自分と言った戦い方や戦力を把握するには丁度いい機会かも知れないので引き受ける。


「なるほど…私も体を動かしたいので別に構いませんが、さらに心を折るかも知れませんよ?」


「それが目的だから構わないですよ。負ける事によって得られるものが多いのは、前に経験をさせて頂きましたからね」


と、ゴルさんは自分を自虐して苦笑い。そんな話になったので全員で行く事になった。


ゴルさんに連れられて、王城内の広場に行くと、総勢300名近くの兵士達は一斉に鍛錬を止めて、こちらに集まって規則正しく整列をする。


「それでは、改めて紹介しよう。今日は、皆に稽古をつけてもらう事になったタクト殿だ」


紹介をされたので、ゴルさんの隣に立ち挨拶をする。


「それでは、今日、皆さんの相手をする事になったタクトです。対堕天使を想定と言う話だったので私対全員で勝負をしましょう」


俺の言葉に全員が驚いていたが、流石に300人全員と戦うのは無理があるので、大将のゴルさんを打ち取るか、俺が意識を失うか降参をするかで決着とする。


兵士は実戦と変わらぬ装備を身に着けて戦っていい事を前提に、武器や防具が破壊されたり、気絶、怪我をした時点で退場とする事に決まった。


「堕天使が相手だと思って殺す気で掛かってこい!自分たちの力の無さを思い知るが言い」


廚二くさい言葉で、ワザと挑発をすると兵士達はざわついた。


「強いのは知ってるが、なんて傲慢な野郎だ!少しでも憧れたオレが馬鹿だったよ!」


「おいおい、正気かよ。いくらなんでも、こっちは300人もいるんだぞ俺達を舐め過ぎじゃないのか!」


罵声や、信じられないという言葉を発しながら、兵士たちは陣形を整える為に下がって行った。


最前列には盾と槍を持つ歩兵100名、その後方に弓隊と剣を構える兵士100名、騎兵隊50名、その後ろには魔法士が50名が、戦いの準備を始めた。


めちゃめちゃ本気モードじゃねーか…って煽ったの俺だしな。


「タクト、本気でこの人数とやり合うわけ?私も加勢しようか?」


「まっ、大丈夫だろ。いざとなったら神威というぶっ壊れスキルがあるからな。それに魔人が操る何千何万の軍団が攻めてきたらこの程度の数で逃げるわけにはいかないだろ?」


「そうだけど、魔物相手なら魔法を使えばいいけど、殺すわけにはいかないから大変よ」


「一騎当千を目指すならこれぐらいじゃないと張り合いないかな…まあ、敵わない思ったら降参するよ。てなことでフィーナ、プロテクションシールドと兵士達の治癒を頼む」


そう言うと、フィーナは呆れ顔。


場外には、治癒スキル持ちの魔道団の待機が完了すると、剣舞の型を作る為に用意した、オリハルコン製の刃の無い刀二振りの柄を握り戦闘開始だ。


戦い開始の合図となる銅鑼が鳴り響くと同時に、矢の雨がいきなり降ってきたので、トルネードで応戦すると矢が竜巻に巻き込まれ1本も飛んでこなかった。


物理的な弓矢なんて矢がもったいないだけだと分かった。


「おい!矢がきかねーぞ!相手は剣士だ、雷槍よーいしろ!」


『ちっ、雷属性付与のファンランクスかっ』


魔法を打たれると面倒なので盾を構える兵士に特攻する。狙いは混戦状態にする為に槍と魔法を自由に使わせない事だ。


走って特攻をかけると、予想通り50ほどの黄色く光る槍を突き出す姿が見えたのでフェイント。


軽く跳躍する素振りをすると、釣られた魔法士が魔法を詠唱して、上空に様々な魔法が通り過ぎて行く。


フェイントに釣られた槍が上を向ける兵士に向かって刀を左右に横薙ぎをすると、盾が鈍い音を立てて潰れながら兵士が吹っ飛ばされて巻き込まれる兵士が多数出た。


それからは、陽動作戦から各個撃破作戦へ変更。


まず盾と槍を持つ兵士を縮地で間合いを詰めて剣舞で次々と兵士達を倒して無力化。


雷槍が効果が無いのと、間合いを詰められた瞬間に倒されて退場させられる事によって、兵士達の士気が下がって指示を出す上官たちが戦慄をしていた。


縮地で移動は出来ないが、狙いを誰かに絞る事によって高速移動が出来るのを利用して、目的相手を定めては打ち倒す。その繰り返しをすると魔法士達も狙いを定められないので沈黙。


兵士の中にも盾スキルパーリィを使って、刀を受け流そうとする兵士もいたが、刀速と力の差がありすぎるとスキルの恩恵が全く効かない。


その事を知った兵士は恐怖のあまり驚愕しながら降参する始末。


とにかく的を絞らせない様に、神出鬼没するように縮地で移動しながら、剣舞だけではなく盾に蹴りを入れて吹っ飛ばしたりして兵士達を倒しては直ぐ引くを繰り返した。


前衛をコテンパンにして壊滅させると、次は剣士達が「おー!」と雄叫びを上げて剣を振り上げて突っ込んでくるが、気合だけで隙だらけのどてっぱらに横薙ぎ一線。


縮地&二刀剣舞の前では防御すらままならずに鎧が鈍い音と共にひしゃげて、後ろから襲い掛かってくる兵士を蹴っちらしていく。


前衛と同じ様に剣士たちを退場させていくが、縮地に対応も対処も出来ない剣士達に後方で指示を出していた騎士達は歯ぎしり。


ついに堪えきれずに、軍馬に乗った騎士たちが襲ってくるが、軽く神威を放つと軍馬が暴れて振り落とされる騎士を狙い撃ちして打ち取っていく。


騎士達を倒して混戦を抜け出すと、背には敗残兵が沢山いて、何も攻撃魔法を打てない魔法士達は手を上げて降参。


人類に神威の耐性が仮にあったとしても、神威を放てば動物の本能で危険を感じとって暴れて使い物にならない事と、動きの速い相手には魔法がまったく通用しない事を証明した。


最後に大将のゴルさんと対峙したが、縮地を使うだけで勝負にもならなかった。喉元に刀を突きつけ「まっ、参りました…」の一言で勝負あり。あっけない幕切れだった。


結果を総括すると、堕天使や強敵相手だと、混戦に持ち込まれると集団戦では数や良い武器を揃えっても、魔法や槍は味方を巻き込むので全くの無意味。


雷属性の武器はオリハルコンが電気を通さない特性があるので無力化出来るし、水魔法を使えば防げる事がベーヒーモス戦で立証出来ているので怖くは無い。


その他の魔法属性を付与したとしても相殺可能なので魔力を消費するだけでもったいない事が分かった。


仮に今の戦いをレクトリスが騎士団相手に戦っても無双されるだけ…直接戦ったオレが一番よく分かる。


これでどうやって堕天使と戦うのだろうと思うととても残念で、疑問しか残らない結果だった。レクトリスが劣等種族と揶揄するのも当然だ。


身体強化されたこの体、縮地、神威、神器と言ったチートなオレには、もはや敵はいない。


『なーんて自意識過剰になるのではなくてここから、騎士団をどう鍛えて堕天使や魔人率いる魔獣どもと戦えるようにするのが今後の課題だな』


そんな事を思っていると、勇者パーティが真剣な顔をしてやって来た。


『まっ、そうなるよなっ』


「堕天使に通用するか試してみるかい?」


「タクトさんの、戦う姿を見ていたら居ても立ってもいられなくて…それに、一緒に旅をするんです。実力を知って貰うにはいい機会です」


「そっか、じゃ、本気で掛かってこい」


「はい!タクトさん、胸を借りますね!」


ここは実力を確認する為に、先ほど同様に一瞬で決着をつけるのではなく、スキルは使うが魔法は一切使わないと決める。


目を瞑り、精神を統一を行って、逸る心を落ち着かせると本気モードの半身で二刀流の構えをした。


「それじゃ、作戦Bで行く。いくぞ!」


「「了解」」


作戦Bってなんだ?と興味があるが、互いに武器を構えると、アルム君はいきなり後方に下がって縮地の間合から距離を取る。縮地の移動範囲を知ったようだ。


するとアルム君の影から「フレイム」と、まず後衛のローラさんが、まんま炎の形をした魔法が次々と多重展開して攻撃をしてきた。


修練所の外周を走って魔法を回避していると、戦士のシェールさんを視界に捉えると、刀に氷属性の魔力を纏わせてフレイムを振り払い相殺させる。


すると不味い事に霧のような蒸気となって、シェールさんの姿が消えなくなった。


刹那、シェールさんが、そのままフレイムの蒸気に身を隠しながら攻撃してきたので、たまらず後方に間合いを取り直す。獣人族の特性なのか、俺の気配が読めるっぽい。


対峙した形となって、じりじりと間合いを摺り足で詰めていくと、縮地を使い刀を振り下ろすが見えていたようで、刀と剣がぶつかりそのまま鍔迫り合いに。力と目の良さはレクトリスと同格。


なので、レクトリス戦と同じく、剣をいなすように刀を滑らせて一気に後方に下がる。


力の行き場を失った剣が地面に突き刺さり体勢を崩したところを、そのまま半回転して横薙ぎで鎧を打ち抜くと鈍い音と共に鎧が盛大にぶっ潰れた。


シェールさんは、口から血を流しながら地面を叩いて悔しがるが、流石は勇者パーティの一員。力と目の良さはレクトリスと互角だったのは収穫だ。


気配を感じたので目配せすると、ラルーラさんの持つ槍がオレを目掛けて高速で迫っていたが、強化された?動体視力で冷静に槍を刀で捌く。


『厄介だな…槍の軌道は見えてるから、あれをやるか』


ラルーラさんの突きが、突然上段からの振り下ろしに変化したので、力負けしないように刀をクロスさせ攻撃を防ぐと、そのまま片方の刀を離して槍の柄を掴んだ。


「嘘でしょ!そんなのあり!!」


「まじっすかっ!」


アルム君が参戦しようとフォローしにすぐ近くまでやって来ていたが、急に立ち止まって再び距離を取った。


ラルーラさんが槍を掴んだ手を振りほどく力を利用して体を反転。背後に回って首を狙って手刀で意識を刈り取った。


「うひょー!すげー!ほんと尊敬するよ」


アルム君は、そう言いながらローラさんに指示を出し、今度は「炎の刃」と短刀の形をした炎が大量に顕現すると同時に放ってきた。


『威力はないが、数がやっかいだな。これじゃまるで弾幕だ!』


修練所の外周を走りながら、炎の刃を避けていると、アルム君の姿が無いのに気が付く。


「――!後ろか?」


殺気を後ろに感じたので、咄嗟に横飛びしてその場から離れると、さっきまでいた場所に剣が突き刺さり砂煙を上げていた。当たったと思うと背筋が凍る。


「流石に、今のを避けられるとは思いませんでしたよ」


「あっぶね~!!偶然だよ。運が良かった」


もう一度やられると厄介なので数回バク転をしてローラさんを飛び越えて、後ろに回ったところでラルーラさんと同じ様に手刀で意識を刈り取った。


「ひょえー!今の動きかっこよかったです。また教えて下さい」


最後はやはり、勇者のアルム君と一騎打ちとなり対峙する。


俺は1振り納刀して半身に構え、アルム君は半身に腰を落として剣が見えない様に陽に構えた。(脇構え)


目を瞑り全神経を刀に集中させる…


「勝負!!」


目を開くと、アルム君が刀を振り下げる振る姿がゆっくりと見えたの居合で横薙ぎして刀を斜め上に振りぬく。


「――――!マジか…」


アルム君の放った剣は、刀でスパッと斬られて半分が無くなっていた。


「タクトさん、武器が無くなっちゃったんで降参です」


周りを目配せすると、癒しの光りで回復していた兵士達は、その光景を見て口を開いたまま固まっていた。

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