第15話 

――  迷宮20層 ――


魔石を回収すると迷宮を出る為に、フィーナの言っていた転移の石碑を探した。


最下層のフロアだけに、次の階層が無いのでこのフロアのどこかに、転移の石碑がどこかにあると言う話だったからだ。


うろうろ歩き回っていると、フェルムが立て掛かっていた岩の付近に石碑を見つけた。


「転移の石碑ってこれじゃない?」


「ここに転移の石碑が出現したのね」


「遅くなった事だし、迷宮から出ようと思うけど何かやり残した事はある?」


「神様からの依頼も達成したから、私は特にないわよ」


「それじゃ、戻るとするか」


転移の石碑に触れると魔法陣が展開されて迷宮の外に出た。


転移スキルを使ってバベルに戻ると、割と大きな音でお腹が鳴る。恥ずかしいけど生理現象だ、自分の意志ではこれだけはどうにもならん。


「うふふ…お腹が空いているようね。あれだけの大立ち回りをしたんだから当然か」


「ごめん。温泉の前に、先にごはんにしてもいい?」


「もちろんよ、私もお腹が空いた気がするわ」


フィーナは、お腹をさすりながら言うのだが、食事を必要としない自分に合わせてくれて嬉しい。


「肉も大量に手に入ったし、バーベキューにしようか!」


「バーベキューって何?食べ物の名前?」


「野外で、肉とか野菜を網の上で焼きながら食べるんだ。美味しいと思うよ。準備するから待ってて」


フィーナに屋敷から野菜と缶ビールを持って来て貰う事になって温泉で落ち合う事になった。


バーベキューの準備をしに、大きな広場がある温泉施設へ向かい歩き始め、到着するなり廃棄されていた錆びた鉄を製錬しなおした鉄でドラム缶と網を創作。


ドラム缶は縦に半分に切ってバーベキューコンロを作成した。ドラム缶にしたのは今後簡単に持ち運びが出来るようにだ。


温泉施設用に作っておいたコンクリートブロックを台にして設置すると、ドラム缶をブロックの上に置いてからキャンプ用に買ってあった炭にバーナーで火を入れる。


『火の魔石でも代用出来そうだが、焼き肉は炭火が一番だからな…ここは譲れないな』


フィーナが転移で戻ってくると、暗がりの中から生気をなくしたフェルムがどういう訳か肩を落とし歩いて来た。


「あの…先ほどは、大変申し訳ございませんでした」


フェルムは、開口一番に謝罪の言葉を口にしながら腰を折る。


「いきなり謝られても意味が分かんないってば。それにしても、よくここが分かったな?何があったんか知らないけど、どうしんだ?」


「いやですね…この辺りで煙が見えたもので、まさかと思い来てしまいました。この神々しい塔は貴方様の持ち物でしょうか?」


先ほどの公爵らしい姿はどこへやら…


「そう言う事になってるよ。でなんで急に態度が変わったんだ?」


「今日のこの日まで、力、魔法、知識も魔人の中でも自分が一番だと言う公爵という矜持もあって自信がありました。ですが、それが傲慢だと言う事を貴方様に思い知らされたんです」


『なるほどな……』


魔人は、この世界の種族の中では全ての能力において勝っていて、プライドが高いとは神様が仰っていた。その矜持を完膚なきまでに叩き折ったのだと理解した。


「それで、なぜここに来たのか聞いてもいいか?」


「迷宮から出ると、10日ほど前には無かった筈の神々しい塔が見えたのです…あの人外な強さといい、話を聞いてくらた上に逃がすという慈悲深い姿に私は貴方達が神様ではないかと…」


「あながち間違ってないが、オレは人族であって神様じゃないよ」


「しかし…私の話を少しでも聞いていただけないでしょうか?」


こちらの力を利用しようと考えれるので事情を全て話すのは悪手だ。でも戦いを終えてなお腰を据えて話したいと思っていたので、その機会が訪れた事に運命を感じる。


「実は、フェルムと話したいと思っていたんだ。言いたい事も分かたし正論も言っていた。やり方はまずかったと思うけど悪い魔人じゃないと思ってるよ」


「そう言って頂いて救われます」


「それでどんな話を聞いて欲しいんだ?話次第では、協力は惜しむつもりはないけど」


そう答えると、フェルムは大きく息を吸い深呼吸をする。


「はい…話をする前に、是非とも私を貴方様の従者としてお仕えさせて下さい」


そう言うと、腰を90度に曲げ深々と頭を下げる。


いきなりな申し出に「へっ、えー!?」っと素っ頓狂な声を上げてしまった。


フェルムの突然の変貌にも戸惑ったが、まさか従者になると言い出すとは思わなかったので驚きを通り越して動揺する。


「何を言い出すかと思えば…いったい何が目的なのか見えないってばよ。フィーナはどう思う?」


「そーね…幸いこの島の住民も殺めてはいないみたいだから、従属契約の魔道具は持っているから判断はタクトに任せるわ」


「昨日の敵は今日の友って言うしな」


俺は少し考えてから、考えを纏めて条件を出す事にした。


まず迷宮を元どおりに直す事。利用する為の嘘であったり、話を聞いた上で協力出来ないと判断したら契約はしないし、守られない場合は契約を破棄すると言う2点である。


約束出来るなら、従者にしても良いと条件を出すとあっさりと快諾。


「フィーナ。従属契約をお願いしてもいい?」


「分かったわ。協力するかどうかは話の内容次第だけど、タクトと気持ちは同じだからいいわよ」


フィーナが、スクロールとナイフを取り出して誓約内容を読み上げる。


「汝フェルムは、主人タクト、フィーナが死するまで、裏切らないと誓約出来るか?」


『おいおい!ちゃっかり自分の名前入れてるよー』


「はい、誓います」


「それでは、この聖なるナイフで指を切り、血印をスクロールに」


フェルムは、指を少し切ってスクロールに押印すると、スクロールが光る。


「これで、誓約は結ばれた。もし誓約を破れば、汝の命を、この聖なるナイフが魂を刈り取り、汝の魂は永遠に地獄を彷徨うであろう」


『永遠に地獄を彷徨うって…結構酷すぎない?』


契約が結ばれると、スクロールとナイフは燃え始めると魔法陣が顕現して消えた。


…従属になった、フェルムの肩を叩き「フェルムさん。本当にいいのか?4種族達に喧嘩を吹っ掛けるつもりはないよ?」と最終確認。


戦い前の話を聞く限り魔人族の居場所を作る為に、この島を占領したと話していたからだ。


「私に敬称は必要ございません。私は、貴方達の従者になりました。他の者が聞いては示しがつきません」


「分かった。敬称をつけるのは止める」


「ありがとうございます。それに、世直しがしたかっただけで4種族達に戦を吹っ掛けようとまでは考えていませんでした」


フェルムは、憑き物が取れた様な穏やかな顔をしてそう言う。


「ならいいんだ。詳しい経緯はまた聞くとして、そろそろお腹が空いてきたからごはん食べよう」


「その…私も、ご相伴にあずかっても宜しいのですか?」


「いいに決まってるじゃないか。もう仲間なんだから遠慮はいらないよ」


「ありがとうございます。そういって貰えると嬉しいです」


網に肉や、野菜を乗せ焼き始めると、肉の脂が炭にかかり炎となり肉の焼ける匂いがお腹を刺激する。


「いい匂いがしてきたわ!もうそろそろ、いいんじゃないの?」


「ああ、そうだね。二人とも、お酒は飲める口かい?」


「前も言ったとうり好きだわよ」


「私も好きですが」


フィーナから受け取ったビールを片手に「じゃ、新しく仲間も増えた事だし乾杯するか」とビールのプルタブを開けてフィーナに手渡した。


フェルムには、缶のプルダブの開け方を教えてビールを手渡すと、フィーナは嬉しそうな顔をしていた。


「じゃ、乾杯と言ったら、乾杯って言ってね」


「分かったわ」「了解です」


「それでは、俺達の出会いに乾杯!」


「「乾杯!」」


そう言って、ビールを飲み干す……


「なんだか、美味しいわねこのお酒」


「よく冷えていますし、エールよコクがあって断然美味しいです」


「喜んで貰えてよかったよ。肉も焼きあがってきたから、食べるとしようか」


それぞれが、皿に肉を取り、三人とも肉を頬張る。


「これは、美味しいわね。こんな美味しいお肉、食べたの初めてよ」


「本当ですね。ありえないぐらい美味しいですよ」


二人の言うとおり、ただの塩胡椒だけだが、なかなか美味しい。


「このたれを付けて食べるとさらに美味しいよ」


フェルムは、フォークに刺さった肉を焼肉のタレに付け口に運ぶと「こっ、これはなんたる美味!」と言ったあとに無言になる。


「これは、焼肉のタレと言って、肉を美味しく食べる調味料の一つだよ」


「ただ焼くだけの単純な料理なのに物凄く美味しいわ。毎日これでも良いんじゃない?」


「同意ですよ。私も毎日これでいいです」


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど毎日は勘弁して欲しかな。醤油もこの世界にないみたいだし」


「醤油ですか?聞いたことありません」


どうやらこの世界には醤油はないみたい…欲しければ自作をしなければならない。


「どれだけでもお腹に入っていくよ。このビールとか言うお酒との相性も抜群ね」


フィーナは、ビールを片手に焼肉をとても幸せそうに頬張っていた。男前な食べ方だな…


「タクト様の従者になって、本当に良かったです」


「焼肉程度で大袈裟だよ!」


二人の胃袋をしっかり掴んだようだ。


腹一杯飲み食いをすると、折りたたみ椅子に腰かけてしばし休憩する。満天の星空を眺めていると、酔いで火照った顔に風が当たって心地よさを感じる。


「ねぇ、さっき食べる前に乾杯ってしたけど、どんな意味があるの?」


「酒を飲み干すって意味と聞いた事があるけど、飲み始めの合図だったりするかな…でも、乾杯の前に一言添えるから、その言葉が乾杯と言う言葉よりも大切じゃないかと個人的には思うよ」


「なるほどね…乾杯したあと、絆が深まった様な感じがしたのは乾杯の前の言葉が重要だったからね。相変わらず、タクトのいた世界の言葉って不思議で素敵よね」


「先程ははぐらかされましたが、お二人のお話を聞く限りでは、アノースの人族とは思えないのですが貴方達は何者なんです…」


「ん?隠しても、いずれはバレるから教えちゃってもいいかい?」


「私が説明するわ。名前は省略するけど、2人の関係は夫婦よ」


俺は少し酔っていたが、その言葉を聞くと椅子から滑り落ちそうになった。


「いや、ちょっと待て!」


「うふふ…冗談だってば」


いつもながら、フィーナの発言や行動には驚くが、流石に夫婦発言には、酔いが一気に醒めるくらい衝撃的な言葉だった。


「タクトは、地球と言う星から来た異世界人で神の使徒よ。私は神界から来た妖精よ」


「まっ、まさか!冗談ではなく本当の話なんですか!」


フィーナは、椅子から立ち上がると、妖精の姿になって神々しく光を放ち、嘘ではない事を証明してから再び人化して戻る。


フェルムは口を開けて呆然としていたので、肩を叩くと正気に戻った。


「やはり神様の関係者だったんですね。予測はしていましたが、事実となっても衝撃が強すぎて頭の中がまだ整理出来ません。ですが貴方様達の尋常ではない異次元の強さを見たので納得です」


「いちおう言っておくが人は辞めたつもりはないからね」


勝手に神格化されちゃかなわんからここだけは主張しなくちゃな。


「それでは質問なんですが、なぜ地上にいらっしゃったんでしょうか?やはり世界の掌握ですか?」


「そんなもんに興味どころか願望もないってば。自由を愛する平民だと思ってくれていい」


そう答えると、フィーナはあきれ顔で首を横に振って、公開できる情報のみフェルムに話した。


「なるほどです…納得しました。私も、お手伝いさせて下さい」


「やっと理解をしてくれて安心したよ。ちなみにだけど、フェルムは人族に偽装出来るの?」


「はい、翼を消すだけなので…ですが、種族の特徴である尻尾は消えません」


『へー!外套で隠れて見えなかったけど尻尾ってかっ、温泉にでも誘ってみようかな』


「じゃ、私は後片付けするから二人で温泉にいってらっしゃい!今日だけはタクトをフェルムに貸してあげるわ」


『どこまで、本気で、どこまで冗談なのか分からん…ひょっとして、心が読めるのか?いや、まさかな』


心を読んだのかと思えるほどのドンピシャのタイミングで提案されたは驚きだが、フェルムと一緒に温泉へ行く事になった。


アノースには、湯につかる習慣がないのは説明をされたとおりで、温泉に辿り着くと、脱衣場で服を脱いでから、お風呂マナーを最初から教えながら入る。


「まずお湯に浸かる前に、ここでかけ湯してから体を洗ってから入るんだ」


「分かりました」


掛け湯をしていると見慣れないものが付いて、これが噂の?尻尾かと興味深く見ていたが、あまり長々と見ていると色々と誤解されそうなので目線を外す。


『なんだか凄いよ、動いていたよ』


無事?尻尾の確認をすると、隣同士で洗い場の椅子に座り、手本を見せながら髪の毛から洗っていく。


「まず髪の毛を、この頭専用のシャンプーと呼ばれるもので洗うんだ」


「いい匂いがしますね。しかしながらなぜ頭からなんです?」


「先に体から洗うと、髪の毛を洗った時に頭の汚れが体に着くからだよ」


「なるほど…言われてみれば納得です」


洗い終えてから内湯の檜風呂に入いると、フェルムはガラスを興味深そうな顔をしてノックをする。


「この温泉って言うのは思いのほかいいですね。魔素が含まれているのか魔力が回復していく様な気がします。この透明な板は何ですか?生まれてこの方見た事がないです」


『オレも尻尾や翼が生えてる人類を生まれてこの方見た事ねーよ』


この温泉を創作した経緯を話を交えてすると、目を丸くして驚いていた。


説明が終わると露天風呂へと移動して、夜空を見上げながら温泉にゆっくり浸かるとのぼせそうになったので出る事になった。


「そう言えば着替えなんかないだろ?」


「ええ。着の身着の儘、来てしまいましたので何も持っていないです」


「それじゃ、今日の戦闘で服を破損させちゃったから服を貸すから遠慮なく使ってくれ。下着は貸せないけどな」


「下着はクリーンの魔法があるので構いません。何から何まで面倒見て頂いてありがとうございます」


「いいんだよ。俺がしたいだけだからさ」


異世界初の知り合いだ。男友達になって欲しい。


Tシャツとジャージを貸すと、体型がほぼ同じなのでよく似合っている。


「ありがとうございます。なんかすごく肌触りいいし、いい匂いがします」


着替えを済ませて歩き出すと、片付けの終わったフィーナが、温泉に向かってやっきたと思いきや、フィーナがフェルムの方を凝視する。


「あら、もう出たの?私も入ったら、直ぐ行くから先に屋敷に戻ってて」


「いや待ってるよ。少しのぼせたから、夜風に当たって待ってるよ」


「あらそう?じゃ、急いで入浴してくるわね。て言うか、いーな~異世界の服…私のはないの?」


さっき、フェルムの方を凝視していたのは、貸した服が羨ましかったようだ。


アイテムボックスからTシャツを取り出して「じゃ、これでも着る?」と言って手渡すと、微笑みを浮かべて礼を言うと、大切そうに胸に抱えて温泉に向かって行った。


ベンチに腰掛けて「それで、本当はどうなんだ?話さなきゃいけない事情があるんだろ?」と、問いかけると、怒りとも落胆ともつかない面持ちで目線を下げた。


「本当は直ぐお話するべきですが、フィーナ様にも聞いて頂きたいので、それからでも宜しいでしょうか?」


「そうか。いきなり従者になりたいだなんて意味分からないからな。じゃ屋敷で腰を据えてから話を聞くよ」


「お気遣いありがとうございます。先ほど話さなかったのは、楽しい夕餉の時間を無粋な真似をして邪魔をしたくありませんでしたから申し訳ありません」


「謝る必要はないよ」


「それよりも…さきほど、フィーナ様の言葉の意味を考えますと、ひょっとして、毎日一緒に温泉に入られているんですか?」


「ばっ、馬鹿を言うなよ…1度だけだ…昨日できたばかりだからな」


それから色々と他愛のない話をしていると「待った…どう似合う?」と温泉施設から出て来た。


貸したオーバーサイズのTシャツがミニスカート丈のワンピース姿に。普段よりも露出が多い肌が色気を演出…その婀娜な姿に心拍数が急上昇する。


「えっ…えーと、フェルムはどう思う?」


「ええ、とてもお似合いですよ」


「ありがとうって、もぅ…タクトはどうなのよ」


「湯上がりの艶かしい姿に、つい目を奪われてしました」


ついテンパって、本音が口から出てしまったが、想定していた答えと違っていたのか、自分が煽ったくせにフィーナは赤面して恥じらう姿を見て『これじゃバカップルじゃないか』と自分まで恥ずかしくなってきた。


「お二人とも。そういうのは、二人でだけの時にやって頂けると…羨ましい限りですが、見ている私が恥ずかしいです」


「そっ、そうだね…そろそろ、屋敷に戻りましょか?」


「湯冷めしたらいけないしな。よし帰ろう!」


漫画に出てくるようなバカップルのような展開に恥ずかしくなりながらも、このままじゃ目のやり場に困るので、いつもの寝間着に着替えて貰ってから屋敷に向かって歩き出した。


フェルムに色々説明する為、夜風に当たりながら塔の入り口まで歩いて行くと、門で、フェルムの入門許可の手続きを終え、バベルの概要を説明する為に徒歩で中に入った。


「それにしても凄いです。結界もさることながら、塔の中に入るのに許可がいるなんて…これなら、どんな敵が攻めて来ても大丈夫ですね」


「この塔の防御結界は、ドラゴンでも傷一つ付けられないわよ」


と、自信たっぷりに大きな胸を張って言うと、フェルムは気まずそうにしていた。オレも違う意味で気まずくなり目線を外す。


『本人が無自覚なのは罪だ!教えなかった神様に説教してやりたいよ』


バベルの中に入ると、俺が一番最初に来たときと同じ反応を示した。


「凄いです…塔の中に入ったのに外の風景や空があるなんて」


「そりゃそうだろ、これを見たら誰だって驚くって。俺も驚いたもん」


「それじゃ、転移で一気に屋敷に行きましょうか」


「それってひ…」


転移スキルの事は秘密と言っていたので注意しようとするが、時すでに遅く詠唱し始めていて転移魔法陣が目の前に現れた。


「どうしたの?よぼーとしちゃって、二人とも行くわよ」


「はっ、はい…」


魔法陣の中に入ると「転移」と詠唱。屋敷の玄関の前に転移する。


初めて転移スキルを見たフェルムは「驚きました、どういう仕組みなんですか?」と、当然のことながら聞いた。


「仕組みもなにも転移スキルよ。魔法陣見えたでしょ?」


「いや、氷魔法もそうなんですが、転移魔法なんて御伽噺の中でなら見た事はありますが、実際にあるとは思わなかったです…」


「あの~、確か転移スキルって秘密だったって言ってなかったかな?」


頭を掻きながら「いっけなーい。秘密だったの忘れていたよ…」と、てへぺろ。美女のてへぺろの悩殺力は凄まじい。ワザとだろうが何だろうがオレの権限で許す!


「まっ、フェルムはもう仲間だからいいか。転移スキルは神力でしか発動しないから真似できないからね」


「もう、今日だけで、何度驚いたか…常識を逸脱し過ぎて、どんな反応を示したらいいか分かりません…お二人は、もう何でもありですね…逆に出来ない事を教えて欲しいぐらいです」


フェルムは苦笑しながらそう言うが、俺もそう思う。


『あっ!俺も対象か!』

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