第二章 インレスティア王国編

第22話 

― シルバーノア・艦橋 ―


シルバーノアの航行が軌道に乗ると自動操縦に切り替える。


プロテクションシールドは慣性の法則と同じで、空気抵抗を無効にして飛び続けるので、速度や高度を保ちながら等速度運動を続ける。


プロベラを回す魔力消費も抑えられるが、その分はプロテクションシールドに持って相殺される。防御面やプロペラの騒音や振動が抑えられる事を考えれば、間違えなく反則的なスキルだ…


とは言っても自動操縦だからと言って、無責任に艦橋から離れる訳にはいかないので交代で休憩を取る。


適当に空いている席に腰掛けて、色々と考え事をしていると、後ろから「うふふ…」と笑い声が聞こえたので、振り返るとフィーナがテレビを見ながら笑っている。


『バラエティーでも見ているのか?』


何を見ているのか気になったので見てみると、以前ケーブルテレビで再放送していた古い時代劇を見ていた。なぜそれが笑えるのかは分からないがツボったぽい。


見ているフィーナもそうだが、録画していた自分も、何だかジジくさい趣味だなと見てつい苦笑い。


俺が見ているのを気付くと、手招きしてオレを呼ぶ。


「ねぇ、これは、タクトのいた時代と比べてどれ位前の話なの?」


「んー。約300年ぐらい前の話かな」


「それにしても、この人強いわね。タクトが刀に拘るのも納得するわね」


なぜか、桃○郎侍を見ながら、目がキラキラさせていた。


「それは、殺陣たてと言って戦闘シーンを見せる演技だよ」


「へー、そーなんだ。じゃあ模擬刀を使った、演劇でも極めてみたら面白いかもしれないわね」


「この髪の毛はいただけないけど…着物って言うの?これは素敵ね」


「あー、この時代の人は、兜を被るからムレ防止みたいな感じで…」


説明しようとすると、そこには興味がないみたいで、何かをアイテムボックスからマジカルスパイダーの糸を取り出した。


『一生懸命説明していたオレに失礼じゃねーかよ』


「このテレビに出てくる着物を作ってもいい?マジカルスパイダーの糸いっぱいあるし、島を離れる前に色々な花を採取したから天然染料もあるしダメかな?」


「別にいいけど、着る機会がないんじゃないか?」


「湯上りとかにいいんじゃないかな?」


「部屋着としてならありかも知れないな…なら好きに作ったらいいよ」


そう答えると「やった!」と言って、満面の笑みを浮かべながら仮眠室に入っていった。


オレってば甘いよな…フィーナのおねだりには、全て応えている様な気がする。

それから、暫く経つとフィーナは嬉しそうに、濃紺の浴衣ぽい着物と山吹色の帯を持ってきた。


「出来たよタクト着てみて」


「俺のかよ!」


フィーナの性格を理解しているので、諦めて仮眠室で着物に着替始めるが問題が発生。


残念ながら着付けなんぞはした事はない。彼女いなかったしな…なんだか切ない。


仕方がないので帯の締め方は素材が柔らかいので蝶々縛りと適当だ。


やっとの事で帯を締めて艦橋に戻ると、フェーナはそわそわしながら待ち受けていた。そこまで待たしてないぞっ!


「苦戦したけど着替えたよ」


「似合う似合う フェルムもそう思うでしょ」


「黒い髪、黒い瞳にとても似合ってると思います」


『やっぱり……そうきましたか』


フィーナは、とても得意げな顔をして、次は自分の番だと張り切って仮眠室に着替えに行った。もう試着室と扱い変わんない…


しばらく経つと「じゃーん」と言って、もろ某有名女子学園ブレザーと膝上のミニスカート姿で登場して、思わず「じょっ、じょしこーせ――!」と絶叫!


凄く似合っているのだが着物にしろ、女子高生姿にしろ浮世離れしすぎている。


さっきまで時代劇を見ていたので着物はまだ分かるが…なぜ女子高生?目のやり場に困るので、ロッドとは合わないと嘘を言って即座に却下した。


『女子高生姿でずっといられたら、こっちの身体が持たないよ…似合い過ぎも考え物だな』


「ちぇ、つまんないの。結構気に入ってたのにな…今度は絶対にロッドと合うように改造するわ」


何かを決意した様だが、ふて腐れてまた着替えに行った。


「じゃ、これはどう?これこそ本命よ」


タブレットを触っていたので、振り向くといきなり力が抜けて椅子から滑り落ちる。今度はくノ一の格好をして出てきた。


髪型もサイドポニーに変更し、上着は黒をベース、下は黒色のスパッツを履いてはいるが膝上のキュロットスカート姿だった。


「似合いすぎだろそれ…」


思わず、あろうことか声に出してしまっていた。


『しまった!失言しちまった!』


つい、本音がでてしまったが時すでに遅く、フィーナはフェルムに同意をと取って満面の笑みを浮かべると俺の顔を見る。


「タクトとお揃いだね!じゃ、私はこれで決定ね」


『サムライに、くノ一って、どこの時代の人だよ。でもこんなに嬉しそうにされると何も言えなくなるよな…』


「いいけど、あくまでも部屋着だよ。こんな恰好で歩いてたら目立ち過ぎだ」


「分かっているってば」


良かったとほっと溜息を吐く。着る物ひとつで振り回されるオレって…情けないよ。


「それじゃ、後はフェルムの番ね」


フィーナは服を作りに仮眠室へ…暫く経つとフィーナは、黒色の艶消しの外套に、黒のズボン、こげ茶色のエンジニアブーツに白いシャツを手渡した。


「フェルムは、そうねー、こんな感じのがいいんじゃない?着てみて!」


「はい ご命令とあらば」


フェルムは着替えに仮眠室に入ると、3分程度で頭を掻いて照れながら出て来た。


「似合うじゃない、ねーいい感じでしょ!」


「どこのダークヒーローですか? 似合うけど…」


「個人的な感想を言えばかなり気に入りました。フィーナ様、ありがとうございます」


そんなこんなフィーナに振り回され続け、最終的には俺の持っているラノベや漫画を参考にした冒険者風の恰好で落ち着いた。


フェルムの意見では、これならば浮かないと太鼓判。フィーナは、全員の新しいコスチュームを作り終えた。


ちなみに、俺は素早さ重視の黒とグレーの軽装スタイルで薄い外套。(外套はオプション扱い)


フィーナはスカートの丈が短めだが薄く白い外套を羽織った、聖女のような清楚なスタイル。(外套は来ていて欲しい)


フェルムはフィーナが最初に作った装備が気に入ったそうでそのまま使うそうだ。


それから、各人の装備にブランクの魔石を服に練りこみ?空調機能とプロテクションシールドを外套に付与してみると思惑どおり成功。


魔力が切れると付与の効果が無くなるので注意が必要だったが、魔力操作の練習にもなるし、真夏に外套を着ていても涼しい。


見た目は暑苦しいが…まっ、防御面を考えると許される範囲だ。


「タクトにお願いがあるんだけど、私も薙刀じゃなくて刀も欲しい」


「時代劇に影響されたのか?」


「恥ずかしいけどそのとおりかな…ほら、薙刀だと近距離攻撃しに弱いし」


俺も拘ったので、フィーナの気持ちも分かる。魔法も遠距離攻撃がメインだし刀があった方がいざと言う時に役に立ちそうだ。


フィーナが使うので、刃渡り60cmのいわゆる小太刀を創作。


「フィーナの体だとこの長さがいいと思って小太刀にしたよ。名前をどうする?」


「うん使いやすそうね。せっかくだから、タクトが名前付けてよ」


「じゃあ子狐丸こぎつねまるにしてもいい?」


「なになに!かわいい名前じゃない!」


名前が決まると、笑顔になって喜んでいた。


いわれは、狐の神様が手を貸して、作ったとされる神剣の名前だよ」


フィーナは早速、スキルボードで性能を確認してみると…



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



神聖歴1854年 7月19日


現在時間 AM 11:43


タクト 人族(18歳)


職業:魔刀士


称号 神の使徒


装備 片手剣 草薙の刀     武器クラス 神器(全属性)

   片手剣 天叢雲の刀    武器クラス 神器(全属性)

   脇差  村雨の短刀    武器クラス 神器(治癒)



<スキル>


アノース語  創作 縮地 居合い斬り(縮地合成)神威 全属性魔法 生活魔法 魔法創造 XXXXX


<武器スキル>


二刀流 剣舞 10連続斬り 治癒


<防具スキル>


プロテクションシールド 空調



フィーナ 妖精族(18歳)


職業 魔法使い 


称号 タクトの眷属


装備  子狐丸    武器クラス 神器(全属性)

 



―― 妖精 ――


<スキル>


日本語 人化 神眼(スキルボード+鑑定)転移 隠密 飛行 索敵


<武器スキル>




―― 人化 ――(魔法使い)


<スキル>


日本語 神眼(スキルボード&鑑定)全属性魔法 転移 隠蔽 索敵 蘇生 治癒 生活魔法 プロテクションシールド XXXXX XXXXX



<武器スキル>


エクステンション


<防具スキル>


プロテクションシールド 空調




フェルム 魔人、魔族ハーフ(20歳)


称号 魔人公爵


職業:タクトの従者


装備 片手鎌 ライジン  武器クラス 神器(雷属性)

   


<スキル>


人化 飛行 テイム 索敵 火属性 水属性 土属性 生活魔法


<武器スキル>


一刀両断 雷属性


<防具スキル>


プロテクションシールド 空調




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「武器スキルのエクステンションは、どんな技か分からないから、今度試すとして相変わらず神器だね」


「狙ってやってるわけじゃないし。エクステンションは、言葉どおりなら刀が伸びるよ」


こんな感じで、全て作り終えると、お昼を過ぎて慌てて昼食を作って艦橋で食べた。


その後も…フィーナは到着する間、テレビに釘付けだったのは言うまでもないが、終始怪しい笑顔だったのは、また何かを企んでいるのは間違いない。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



―― インレスティア王国・ザバル領・上空 ――


神聖歴1854年 7月20日


現在時間 AM 3:22


早朝に目的地上空へと辿り着く。


「凄いです!本当に一日で着いてしまいました」と、フェルムは感動していた。


『そりゃ、自分で飛んで10日もかかれば感動もするわな…』


「よし、まだ、朝早いから大丈夫だと思うけど、念の為に、人里離れた所に着陸してから車で移動する事にしようか?」


「そうね、それがいいわ」


「高度を下げる前に、フィーナ隠蔽を頼む」


「了解よ」


「じゃ、着陸準備。フィーナ悪いけど隠蔽のスキルをお願い」


「任されたわ」


シルバーノアは隠蔽した状態になると高度を下げ、ドローンカメラで着陸出来そうな草原を見つけた。


タラップを用意しに甲板に出ると、丁度日の出の時刻のようで甲板が茜色に染まって美しい。


当たり前の話だが、気候と時差が違い感覚だが季節は6月で時刻は朝5時ぐらいだと予想。


シルバーノアが着陸完了すると、二人も艦橋から出て来て合流してから、タラップを掛けて草原に降り立った。


「それじゃ、二人とも準備はいい?忘れ物は無いよね?」


『おかんかよ!』


フィーナはシルバーノアを、アイテムボックスに収納する…ってちょっと待て!


「まさか、シルバーノアもアイテムボックスに入るわけ!」


「何を今更言ってんのよ。前に言ったじゃない、容量は無制限だって」


フィーナは呆れるように、ため息を吐い混じりにそう言うが、飛空艇がアイテムボックスに入る超常現象に納得がいかない。


「確かに知ってたけど、物理法則無視し過ぎじゃないのか?」


「神様が創った万能アイテムよ。理屈とか物理とかそんな常識が通用すると思う?自重って言葉を知らないのは知ってるでしょ?」


「は~。常識が通用しないのは分かっていたつもりだけど、自重と言う言葉は知っておいて欲しいよな。ありがたいちゃ、ありがたいが…」


「なら、いらないツッコミはしない方がいいわよ。神様を怒らせて制限が掛かったらタクトのせいだから」


「はい…すいません」


なぜオレが怒られるんだ…と心の中で抗議をしながら道を探し始めた。


二手に別れて辺り周辺を確認すると、草原を囲む様に一面に腰の辺りまでの柵が設けられていた。


風が緩やかに吹くと少し肌寒いが草のいい香りがして、なんだか画板を持ってスケッチに来たような錯覚に陥りそうだった。


『とても草の香りがいいな。空気が澄んで涼しいし、都会では味わえない空気だよな』


気候があの島と随分と違うが、季節と風を楽しんでいると、先行して歩いているフェルムが手を振って呼んでいる。


「フェルム、何か見つけたのか?」


フェルムの手の振る方へ行ってみると、広い街道があって人通りもないのでアイテムボックスから車を取り出した。


こうしている間にも、いつ人がやってくるか分からないので、急いで車に乗り込む。


車を隠蔽してからプロテクションシールドを掛けて貰う。


「それじゃ、準備も整った事だし、行くとしようか?」


「そうね。フェルム道案内頼んでもいいかしら」


「一本道ですからね。案内もへったくりもありませんよ」


案内を頼んでおきながら、フィーナは助手席に座る。普通道案内する人が助手席だろ…と思うが言えないよね。


後部座席に乗ったフェルムが座席の間から指を差す方向へ進路を向ける。看板がある場所まで道なりだそうだ。


「無事に着いて良かったわね。それに、まだ明け方だから人の気配は無いわ」


「丁度いいタイミングで到着したよな」


「真夜中は盗賊が出る可能性もありますからね。普通の旅人はこんな朝早く移動しません。それよりも馬がいないのに、なぜこの乗り物が動くのか気になりますがね」


「それは、また後から説明するよ」


「多分説明をされても分かりませんよ。それにもうこれぐらいでは私は驚きません。お二方が神の使徒だった事や、船が空を飛ぶほうが驚きが強かったので…」


「慣れって恐ろしいわね」


そんな話をしながら村を目指して道を走っていると草原から森へと変わる。


窓を開けて耳を澄ますと、鳥の鳴き声や虫の鳴き声がしていて初夏を感じさせる。


『そうか。時差だけを気にしていたけど、考えてみれば気候や季節も違うだろうしな…後から聞いてみよ』


そんな事を思いながら、異世界の田舎道を楽しみながらドライブをして約20分、フェルムの言っていた小さな木の板で作られた手作り感が半端ない貧相な看板が見えて来た。


看板には【ロッド村 ⇒】と書かれている。


危うく見逃しそうな看板が村へと方向を示す、分かれ林道を進んで行くと、麦畑に囲まれた村が物が遠巻きに見えてきたので、道から外れた空き地に車を停車させた。


「フェルム、この辺で車を止めて徒歩で村へ向かおうと思うがいい?」


「はい…しかし、閉門されている様なので、入村出来る時間じゃなさそうです」


双眼鏡で村の様子を伺うと村の門は閉じられていた。


って、視力1.5の俺でもそこまで見えないのにフェルムの目はどうなってるんだ?魔人だからなのか?と驚く。


「何時ぐらいに、村の中に入れるんだ?」


「そうですね。時刻は分かりませんが日の登りからみると、あと1時間ほどで村の門兵がやってくると思います」


「じゃ、ここで1時間ほど仮眠してから村に行こっか」


「そうだね」


フィーナとフェルムは同意したので1時間程車で寝て待つ事にした。昨晩は全員が徹夜だったからだ。


アラームをセットしてから、全員がシートを倒して仮眠をすると、あっと言う間に1時間が経って、アラームと共に目が覚めて窓の外を見てみると辺りは明るくなっていた。


「フェルム、寝れなかっただろ?目が赤いままだぞ」


「ええ、アイラが無事かどうかと思うと…そろそろ行きましょう。村の門が開きます」


「そっか…そうだよな。よし!行こうか」

 

フェルムの浮ついた気持ちを察しながら車を降りると、車をアイテムボックスに収納する。


村に向かって歩きだして林道を抜けると一面、日光に照らされ黄金に輝く麦畑や野菜畑があって人の営みを感じられる。


村が見えてくると、壁は盛り土で嵩上げされた基礎の上に木材で出来ていて、いかにも農村と感じられる印象だった。


門に向かって歩いて行くと門兵に呼び止められた。人族と思われる兵士は村人達で運営されてようで使い古した軽装で、入村を拒むように槍で行く手を遮り警戒する。


「あなた方は旅の者か?こんな朝早くからこの村にどのような用がある」


門兵はこちらを見ると、フェルムはギルドカードを提示した。


「これは、どこかで見た顔だと思ったら、フェルム殿ではないですか?いつもと格好が違うので気が付きませんでした。村長がお待ちです」


「こちらの方々は、私の仲間だ。一緒に連れて行きたいので通して頂きたいが宜しいか?」


「分かりました。それではどうぞ」


あっさり入村が認められると、フェルムを先頭に村へ入ると村長の屋敷へと向かう。


村の中へ入ると甘い香りがしたので村を見渡すと村の中に果樹園があり、村の街並みは、時代劇で出てくる江戸時代の宿場町を思わせる景観で、屋根は片流れで統一されていて、木造の平屋が綺麗に並んでいた。


村の中を歩いて行くと、村人はドアからこっそり覗いてはいるが話しかけてくる村人はいない。20日ぶりに、人族に会うと言うのにちょっと寂しく思う。


周りを散策しながら、どこか懐かしさを感じていると、その雰囲気を全てぶち壊す2階建てのレンガ作りの小さな洋館が見えてきた。


前にも聞いた話だが、村長の屋敷は国から支給された物で、執務室や来客用に部屋がいくつもあるので基本的に村には宿はない。


村長の屋敷の門をくぐると、屋敷の前で執事らしき人物が待っていて「フェルム殿、村長がお待ちです」と、予め来る事を知っていたようで執務室に通される。


「村長、フェルム殿とそのお連れ様をお連れしました」


「ご苦労であった。通せ」


「はい。畏まりました」


執事が執務室の扉を開けると、部屋は執務室というよりもリビングに近く生活感が漂っている。


村長は髪の薄い老人で、フェルムの顔を見るなり険しい顔になる。


「久しいの、フェルム。息災のようで何よりだ」


村長の表情が険しいのを見て、フェルムは「私の事はや挨拶はいい、アイラはどこに!」と村長に詰め寄る。


「すまん…実はつい先日、殿下と勇者パーティが領主の屋敷にアイラさんを連れて行ったのだ…」


「あれほどこの村で保護してくれとお願いしたのに、何故です!何故なんです!」


フェルムは声を荒げながら、村長への怒りを机にぶつけた。


「殿下と勇者様は、アイラさんを治療すると言っていたので、それならと思い…この国の王子や勇者を相手に逆らう事など無理だったんです」


「しかし、この村から出すなと約束したではないですか!」


俺は立ち上がって興奮したフェルムに「落ち着くんだ」と肩を持ち制止したが、悪い予感は当たったるもんだ。フェルムに落ち着けと言ったが、これが自分だったらと思うと気持ちを押さえられる自信は無い…


「ではアイラさんは今は、領主様の館にいると言う事で宜しいのですね」


村長は、フェルムに怒りをぶつけられて青ざめた顔で「はい」と返事。


「そう言うことなら…フェルム、急いで領主のところへ向かうぞ」


領主の屋敷のあるクロードの町へはフェルムが道案内できるそうなので、急いで村長の屋敷を離れた。




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