第四章 赤山数人

第20話 四人居る筈の部員

この学校。

つまり俺の通っている学校には漫画研究部と呼ばれる部活が有る。

何を目的にしているかと言えば、漫画の研究とラノベの研究だ。

目的は一応、そうという感じで知ってはいるが.....。


面がそうなのか裏がそうなのかまでは知らない。

つまり、漫画研究部の真の目的が分からないのだ。

俺は.....そんな漫画研究部に嫌々ながら入部する事になった。


5月9日の日になった。

俺は放課後になって漫画研究部、通称、漫研に行く。

そして漫画研究部と書かれた、標識の先を歩いて行く。


初めて漫研の場所を知ったのだが、東棟。

つまり、理科室やら何やら危険な部屋が有る様な場所だがその場所に。

あまり人目に目立たずの場所に漫研は有る。


看板が立っていたのだが、デコレーションされて女の子らしい看板だった。

それも驚きだが、俺は漫研の場所は初めて知ったのも驚き。

こんなちょっと暗い場所に有るとはと、だ。


「.....漫研を何処で知ったんだ?」


「生徒会室に用事が有って誘われた感じだね。吉武部長に」


「.....へぇ」


しかし驚きだな。

率直に、だ。

皆穂は漫画なんか読まないので。

俺の為に入部って凄い事するね.....この人。


と思いながら、教室に入る。

すると目を疑う光景が有った。

何が目を疑うのか。

それは.....ノアが居た。


「.....アンタ何で此処に居るの?」


「ノア?お前.....確か吹奏楽部に入った筈じゃ」


「辞めたよ。私。勿論、吉くんの為に、ね」


「.....お前もか.....」


ブルータス.....。

俺は頭に手を添えた。

そして溜息を吐きながら部屋を見た。

部屋の中は.....漫画や書類やパソコンやらが山積みにされている。


流石は漫研と言った所だな。

その様に思っているとノアが言った。


「あ、吉武部長はもう直ぐ来るって」


「.....ああ。分かった.....ってかお前、まさか吹奏楽部を辞めるとは.....」


「うん。吉くんを取るの、負けたく無いから」


そういう問題か?未来とか.....其処も見据えなくて良いのか?

俺はハァと思いながら.....ノアを見る。

でもまぁ楽しいけどな、それも。

三人揃うし。


ガラッ


「.....あ、吉武部長」


「.....おや。新入生の諸君は揃っている様だね」


入って来た吉武部長。

黒髪の長髪。

そして向日葵のカチューシャに顔立ちはキリッと、凛としており。

モデル並みに揃ってんな。

身長も高い、俺と同じぐらいだろこれと思う様な。


流石は生徒会副会長だな。

俺は思いながら、吉武先輩を見る。

にしてもマジだったんだな。

この人が漫研の部長とは。


「ではアイツらを待つか。小町と義輝を」


「.....部員ですか?」


ノアが質問する。

すると吉武先輩は、うむ、と頷いた。

長い黒髪を靡かせて、俺達を笑顔で見る。


「部員は少ないが、それでも良い部活だぞ。話に聞いていた二人.....ようこそ、ノア。そして吉。漫研へ。私の事は知っているだろうが。私は漫研部長の吉武香(ヨシタケコウ)だ。以後お見知り置きを」


「あ、はい!宜しくお願いします」


「宜しくお願いします」


よし、自己紹介は済んだな。

と皆穂を見る、吉武先輩。

そして例のブツを持って来てくれ、と言った。

何だ例のブツって。


「.....この部活ではラノベと漫画の好きをミーティングする様な部活が主だ。好きなラノベ、漫画、アニメ。何でも良い。紙に書いてくれ」


「あ、はい」


「はい」


ん?って言うか。

今思ったけど、ラノベとか漫画とか読むのか?ノアは。

其処だけは知らないな。

俺は思いながら、ノアを見る。

ノアは俺に柔和に微笑んだ。


「案外好きだよ。漫画とかラノベとか」


「.....意外だな。お前がそんなもの.....」


「うん。だって吉くんが教えてくれたんだよ?」


「.....え?」


俺は目を丸くする。

コイツにそんな物、教えたか?

と思っていると、ゾクッと。

物凄い寒気を感じて俺は視線の方角を見た。


「.....お兄ちゃん.....どういう事かな?」


「皆穂、おちけつ」


「.....ふっふっふ。皆穂ちゃんに勝ったね。ここだけは」


ノアはニヤニヤする。

皆穂は悔しそうな顔をした。

しかし.....それは良いとして俺が何処で教えたんだろうか。

漫画とかアニメの事を。


でも良く考えるとこれは子供の頃の話だよな。

そうなると.....有り得なくもないな。

教えたのが、だ。


「.....お兄ちゃん。私にも教えて」


「.....あ、ああ。それは構わないが.....」


「私にも」


「.....」


いや、争うなお前ら。

俺は盛大に溜息を吐きながら板挟みになっていた。

その際に、少しだけ.....何か複雑な顔の吉武先輩を見て。

俺は?を浮かべた。


「ハッハッハ!モテモテだな!吉!」


「.....いや.....コイツらが勝手に.....」


「「勝手って何?」」


もうどうしろっつーんだよ。

俺は額に手を当てながら考えて居ると。

ガラッと戸が開いた。

そして誰かが入って来る。


「ウィース。姉御.....お?新入生ですか?」


「よーちゃん。新入生?」


「そうだ。名前をノアと吉と言う。以後、知っとけお前ら」


ガタイの良い柔道部にでも入っていたかの様な男と。

なよっとはしているが、ソバカスの奥の瞳はしっかりしている様な少女。

ってか、二人共に先輩だ。

何故ならば靴の色が赤いのだ。


主に、靴の色として青が一年。

緑が二年、俺。

そして三年が赤いのだ。


「先輩。宜しくお願いします」


「おう。俺は鹿島義輝だ.....ハッハッハ!お前、なよっとしてんな!」


「先輩。宜しくです」


「はい。ノアちゃんね。宜しくね。私は佐藤小町って言います」


パワフルな感じの先輩達に囲まれて。

俺達は何だか元気を貰えた。

その中で、吉武先輩だけが.....かなり嬉しそうに、簡単に言えば。

ホッとしている様に見えた。


何故だろうか.....と俺は思う。

先程から.....何か様子が。


「.....吉武先輩?」


「.....え?あ、いや、何でも無いぞ。ハッハッハ」


何か.....思う様な所が有るのだろうか。

俺は思いながら、吉武先輩を見つつ。

目線を前の書類を見ると。

何か目録が有り、部員四名在籍と書かれていた。


「.....四人?」


その四人という言葉に。

ノア、皆穂以外の部員がビクッとして動きを止めた。

その中で、吉武先輩が.....最も悲しげな表情を浮かべて。

俺を見ていた。


「.....見ちゃったんだね」


「.....え?あ、すいません!!!.....見たらマズイもんすか?」


「.....良いや。大丈夫。いずれかは話そうと思っていたから。数.....じゃ無い。赤山数人(アカヤマカズト)っていう.....今は幽霊部員の少年だよ。その少年を合わせて.....四人なんだ。この部活の部員は」


俺達は.....特に皆穂は驚いた様な感じだった。

それから皆穂は聞く。

感傷に浸っている様な吉武先輩に、だ。


「.....部員って三人かと.....思ってました」


「.....そうだろうね。三人と思うよ。普通はね」


「でも確かに四人は居ないと部活が成り立ちませんよね」


ノアがその様に声を上げた。

確かにその通りだな。

四人居ないと部活って成立しない。

その幽霊部員の枠だったんだな.....一人は。


「赤山数人って子.....一年生ですか?」


「.....良いや。二年生だ。二年になってから.....直ぐに学校に来てないんだ。家に.....閉じ籠もりがちになった」


俺は吉武先輩の言葉に思いっきり見開いた。

そして俺は昔の事を.....思い出した。

たった数ヶ月だったが.....俺も実際にそれをしてしまったのだ。


親父が亡くなった直後に、だ。

そう。

その.....行動の名前は。


「.....引き篭もりってやつなんだ。数人は.....ね」


「.....」


俺は.....引き篭もりの大変さを知っている。

何故かと言われたら.....俺が実際に.....引き篭もったから、だ。

その赤山という少年は.....何故引き篭もりになったのだろうか.....。

と思っていると、皆穂が手を挙げて聞いていた。


「何故.....引き篭もりに?」


「.....簡単に言えばイジメだ。それで.....来なくなった」


吉武先輩は口角を少しだけ上げながら苦笑した。

全てが同じだ.....。

俺は.....その少年の事に.....少し興味を持った。

目を閉じて過去を思い出す。


『親父が居ないんだって!コイツ!』


『わー。貧乏!』


『貧乏人!』


その様に.....親が居ない事でイジメられていた.....過去を思い出して。

俺は.....その数人と一瞬だけ何かを感じる気がする。

その様に考えていると義輝先輩が少しだけ控えめに言い出した。

そして通学鞄から漫画を取り出す。


「まぁその事は.....しんみり、しますし。止めときましょう」


「そうだよ。よーちゃん」


「.....それもそうだな。.....ハッハッハ!」


皆穂もノアも笑みを見せる中で。

唯一、その事実を知っている俺は.....複雑な思いを抱えた。

赤山.....数人か。

と.....思った。

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