第30話 喜ばせたい

俺達は吉武先輩と一緒にデパートへの道を歩く。

そして巨大なデパートまでやって来た。

デパートを見上げる。

そういやもう直ぐ.....6月だな。

6月と言えば.....冬服から夏服へ変わる時期も、もう直ぐだ。


思えば、この数ヶ月で相当な事が起こったと思う。

だけど.....考えさせられる事も有った。

その事を思いながら俺は目の前の二人を見る。


吉武先輩と皆穂は和かに会話しながら歩いている。

それは.....まるで仲直りした様に、だ。

俺はそれを見ながら少しだけ笑みを浮かべることが出来た。


でもまだ.....俺は完全に安心した訳では無い。

いつ皆穂が.....その素顔を見せて元に戻るのか。

その様に警戒していたのだ。

俺は.....思いながら見つめていると皆穂が寄って来た。


「.....お兄ちゃん」


「.....何だ?皆穂」


よく見ると吉武先輩はスマホを弄っている。

その間にやって来たのだろう。

俺は?を浮かべて皆穂を見ていると。


「吉武先輩.....何だかアレだね。やっぱりなんて言うか.....何か.....恋人を想っている感じ?」


「.....へ?」


何だって?

皆穂の予想外の言葉に俺は驚きの声が出た。

そして直ぐに吉武先輩を見た。

吉武先輩は.....頬を少しだけ紅潮させている。

俺は.....あ.....と考える。


「.....吉武先輩はもしかしたら.....数人に関する何かを買いに来たのかもな」


「.....え?あ、そうなんだね」


「.....多分.....数人の為に何かしたいんだろう」


そうなんだね。

私がお兄ちゃんを想っているのと同じかな、と皆穂は言う。

俺は.....まあ.....間違っては無いな、と反応した。

すると吉武先輩が近付いて来る。


「ごめんね。部員からメールが来たから」


「あ、大丈夫ですよ」


「.....そうだね。お兄ちゃん」


「何か有ったかい?」


俺達の様子に。

首を傾げる様に見てくる、吉武先輩。

皆穂と俺は顔を見合わせて首を振ってから吉武先輩を見つめる。

特に何も無いです、と言いながら。


「.....そうか。じゃあ行こうか」


「そうっすね」


「.....」


しかしずっと皆穂は顎に手を添えていた。

何かを考えている様に見えるが。

俺はそれを見ながら?を浮かべた。



私はちょっとトイレに行って来る。

その様に言ってから席を外した、吉武先輩。

デパートの休憩所で待つ。


俺と皆穂は、はい、と返事して見送った。

すると直ぐに皆穂が俺に向いてくる。


「.....お兄ちゃん。その.....」


「.....さっきからどうした?皆穂」


皆穂は少しだけ恥ずかしいのかモニョモニョしている。

俺は???を浮かべながら見つめると。

皆穂は俺に向いてきた。


「私ね、吉武先輩に迷惑を掛けたよね。だから何かしたいんだけど」


「.....え?.....ああ。.....なるほどな」


皆穂は真剣な顔で言う。

此奴なりに悪いと考えていたんだな。

俺は少しだけ嬉しく思いながら皆穂に向く。

そして、どうするんだ?、と聞いた。


「具体的には.....デパートの人にも協力してもらおうかなって」


「それはちょっとスケールがデカすぎるんじゃ無いか?大丈夫か」


「.....じゃあどうしよう」


そうだな.....と俺は顎に手を添える。

吉武先輩が.....喜ぶ事か。

だったらこれしか無いな。

俺はスマホを取り出してそして電話をする。


『もしもし』


「.....よお。数人」


『.....何。何か用』


「直球で聞くぞ。お前は外に出れるか。俺の家に来れるか」


は?と素っ頓狂な声が聞こえる。

俺は顎に手を添えながら.....回答を待った。

すると数人から答えが。


『君の家までなら可能だけど。どうするの』


「.....お前に会わせたい人が居る」


この言葉に見開いたのだろう。

数秒間だけ言葉が途切れた。

そして息を吸う音が聞こえる。


『.....僕は人に会うの嫌いなんだけど』


「.....お前の幼馴染でもか」


また言葉が思いっきり途切れた。

俺は舌舐めずりをする。

やはり駄目か?

唐突すぎたかな。


「.....数.....」


『.....分かった。会う。.....それが吉の願いなら』


「え.....マジか?」


『.....ただし、こっちの条件も飲んでもらうけど』


条件?

何だ条件って。

俺は首を傾げながら待つと。

数人はこう答えた。


『僕を.....助けて』


「.....お前なりに努力をしているんだな。数人。分かった。成立だ」


数人は.....本当に.....良い奴だな。

俺はその様に思いながら笑みを浮かべた。

皆穂はハラハラしながら見ている。

そんな皆穂に親指を立てた。


『.....じゃあいつ行けば良いの』


「.....サプライズだからな。取り敢えずは.....俺の家に向かってくれ」


『家に誰か居るの』


「.....俺の知り合いが居る。そいつに頼れ。大丈夫だからな」


分かった、その人に頼る。

と、数人は納得した様に話す。

俺は、よし、と笑みを浮かべる。

そして俺と皆穂による.....吉武先輩へのサプライズ企画がスタートした。

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