第6話 家族という存在

雨が上がった。

俺は皆穂と少しだけ乾いた服で帰って来て。

直ぐに母さんと由紀治さんが飛び出して来た。

だが、俺達は怒られる事は無く。


俺と皆穂はもう一度、風呂に入って。

手の治療をした。


包帯だらけの手を見ながら、リビングにて。

俺は真剣な顔の由紀治さんと。

複雑そうな顔付きの母さんを見ていた。


「.....先ずは謝ろう。吉くん。皆穂。君達に」


「.....はい」


「.....隠すつもりは無かった.....でも事情を.....今にならないと分からないと思ったの.....ゴメンなさい.....」


母さんは泣き崩れた。

その様子を俺と皆穂は見つめる。

由紀治さんが母さんの肩に手を添えながら俺達に向いてきた。

そして、俺達に言葉を発する。


「.....もう少し早く話せば良かったんだね。僕達のミスだ」


「.....その事はもう良いです。.....何故、それが分かっていたのに再婚したのですか」


俺は膝で握り拳をつくって聞いた。

すると由紀治さんは歯切れが悪そうな感じを見せて。

そしてこっちに真剣な顔で向いてきた。


「.....話すと長いけど.....良いかな」


「.....話して。お父さん」


皆穂が真剣な顔で言う。

俺はそれを横目に、由紀治さんに向いた。

由紀治さんは意を決した様に俺に向く。


「.....じゃあ、話そう」



「西子さん.....つまり、君のお母さんだね。君のお母さんとは.....京子と別れてから.....出会った。.....京子は当時.....死んでも良いかな?って言うぐらいに反省していたよ。轢き逃げした事を、ね。僕は.....轢き逃げの件が許せなかった。その為に別れたんだ。その際に実は.....京子と西子さんは.....幼馴染って事を知ってね.....その事に僕は酷く驚いたよ。当時.....僕は再婚したくは無かったんだけど、京子が.....僕に願ったんだ。西子.....彼女に寄り添ってあげて。彼女は.....彼女の子供は何も悪く無いから.....再婚してあげて.....ってね。聞きたくも無かったよ。その時は。でも.....考えたんだ。僕は.....怒りだけで解決して良いのか?ってね.....。憎悪だけが全てじゃ無い気がしたんだ。それで.....京子と西子さんと.....全てを約束したんだ。子供が大人になったら.....この事を話すって」


由紀治さんは.....水の入ったコップを見ながら話してくれた。

その事に俺は言葉が出ず。

皆穂は.....見開いていた。


「.....」


「.....そんな事が有ったの.....?」


頷く由紀治さん。

それから由紀治さんは.....俯いた。

そしてポツポツと涙を流す。

そして.....俺達に謝って来た。


「.....ごめんな.....二人とも.....もっと早くに話せば良かったんだ」


「.....」


「.....」


俺と皆穂は見合った。

そして.....頷き合う。

事情は分かった気がする。

確かに.....母さんは何も.....由紀治さんも抵抗していたんだ。


「.....顔を上げて.....お父さん。西子さん」


「.....?」


「.....俺達は.....まだ複雑です。でも.....少しだけ.....心が軽くなりました」


「.....吉くん.....皆穂.....」


由紀治さんが.....涙を拭った。

そういや、今思い出すアレじゃ無いけど。

父さんが言っていたな。


『人を.....恨むのは確かに過ちじゃ無い。だけど、人を恨んで解決するのか?全てが?それは.....違うぞ。吉。良いか。人は.....怒りを持つのも良い。だけど、怒りで全てを解決するのは間違っているのだ。ハッハッハ!』


「.....俺は.....由紀治さん。.....貴方は悪いと思ってません。でも京子は許せないです。でも.....いつかは.....分かる時が来ると思ってます」


俺はそう言ってそして.....生徒手帳を取り出した。

そして親父の写真を見る。

それから顔を上げた。


「.....有難う。母さん。戦ってくれたんだね」


「.....ごめん.....本当にごめんなさい.....!」


「お父さん」


「.....ごめんな。皆穂」


一時的だが。

家族がバラバラになりそうになった。

だけど、今。


再び、繋がった。

これも父さんの力なのだろうか。

俺は.....そう思いながら生徒手帳を胸に当てた。

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