第6話 家族という存在
雨が上がった。
俺は皆穂と少しだけ乾いた服で帰って来て。
直ぐに母さんと由紀治さんが飛び出して来た。
だが、俺達は怒られる事は無く。
俺と皆穂はもう一度、風呂に入って。
手の治療をした。
包帯だらけの手を見ながら、リビングにて。
俺は真剣な顔の由紀治さんと。
複雑そうな顔付きの母さんを見ていた。
「.....先ずは謝ろう。吉くん。皆穂。君達に」
「.....はい」
「.....隠すつもりは無かった.....でも事情を.....今にならないと分からないと思ったの.....ゴメンなさい.....」
母さんは泣き崩れた。
その様子を俺と皆穂は見つめる。
由紀治さんが母さんの肩に手を添えながら俺達に向いてきた。
そして、俺達に言葉を発する。
「.....もう少し早く話せば良かったんだね。僕達のミスだ」
「.....その事はもう良いです。.....何故、それが分かっていたのに再婚したのですか」
俺は膝で握り拳をつくって聞いた。
すると由紀治さんは歯切れが悪そうな感じを見せて。
そしてこっちに真剣な顔で向いてきた。
「.....話すと長いけど.....良いかな」
「.....話して。お父さん」
皆穂が真剣な顔で言う。
俺はそれを横目に、由紀治さんに向いた。
由紀治さんは意を決した様に俺に向く。
「.....じゃあ、話そう」
☆
「西子さん.....つまり、君のお母さんだね。君のお母さんとは.....京子と別れてから.....出会った。.....京子は当時.....死んでも良いかな?って言うぐらいに反省していたよ。轢き逃げした事を、ね。僕は.....轢き逃げの件が許せなかった。その為に別れたんだ。その際に実は.....京子と西子さんは.....幼馴染って事を知ってね.....その事に僕は酷く驚いたよ。当時.....僕は再婚したくは無かったんだけど、京子が.....僕に願ったんだ。西子.....彼女に寄り添ってあげて。彼女は.....彼女の子供は何も悪く無いから.....再婚してあげて.....ってね。聞きたくも無かったよ。その時は。でも.....考えたんだ。僕は.....怒りだけで解決して良いのか?ってね.....。憎悪だけが全てじゃ無い気がしたんだ。それで.....京子と西子さんと.....全てを約束したんだ。子供が大人になったら.....この事を話すって」
由紀治さんは.....水の入ったコップを見ながら話してくれた。
その事に俺は言葉が出ず。
皆穂は.....見開いていた。
「.....」
「.....そんな事が有ったの.....?」
頷く由紀治さん。
それから由紀治さんは.....俯いた。
そしてポツポツと涙を流す。
そして.....俺達に謝って来た。
「.....ごめんな.....二人とも.....もっと早くに話せば良かったんだ」
「.....」
「.....」
俺と皆穂は見合った。
そして.....頷き合う。
事情は分かった気がする。
確かに.....母さんは何も.....由紀治さんも抵抗していたんだ。
「.....顔を上げて.....お父さん。西子さん」
「.....?」
「.....俺達は.....まだ複雑です。でも.....少しだけ.....心が軽くなりました」
「.....吉くん.....皆穂.....」
由紀治さんが.....涙を拭った。
そういや、今思い出すアレじゃ無いけど。
父さんが言っていたな。
『人を.....恨むのは確かに過ちじゃ無い。だけど、人を恨んで解決するのか?全てが?それは.....違うぞ。吉。良いか。人は.....怒りを持つのも良い。だけど、怒りで全てを解決するのは間違っているのだ。ハッハッハ!』
「.....俺は.....由紀治さん。.....貴方は悪いと思ってません。でも京子は許せないです。でも.....いつかは.....分かる時が来ると思ってます」
俺はそう言ってそして.....生徒手帳を取り出した。
そして親父の写真を見る。
それから顔を上げた。
「.....有難う。母さん。戦ってくれたんだね」
「.....ごめん.....本当にごめんなさい.....!」
「お父さん」
「.....ごめんな。皆穂」
一時的だが。
家族がバラバラになりそうになった。
だけど、今。
再び、繋がった。
これも父さんの力なのだろうか。
俺は.....そう思いながら生徒手帳を胸に当てた。
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