第5話 寄り添う二人

信じられない。

こんな馬鹿な話が有るなんて.....夢に思わなかった。

俺は河川敷で石を川に投げ飛ばす。

何故、こんな事になってしまったんだ。


俺か?俺が悪いのか?

嘘だろマジで。

何を信じたら良いんだよマジに。

俺はこれから.....どう生きたら良いんだ?


「.....ち.....チクショウ.....」


土を掘る様な仕草を取る。

もう駄目かも知れない.....。

ただ信じられなかった。

もう俺は.....嫌だ。


「何で.....なんで何だよ.....何で今まで俺に隠したんだ!!!!!」


地面に頭を打つける。

やり場の無い怒りが.....全身を包んでいた。

本当に父さんに申し訳が無さすぎる。


俺は.....これからどう生きよう。

轢き逃げ犯の犯人の親族と一緒に暮らすなんて.....思い付かない。

そう、思っていた矢先だった。


「お兄ちゃん!!!!!」


ザザッと土を蹴る様な音がして。

そして俺を.....懐中電灯で照らす、皆穂が居た。

俺は.....涙を拭って顔を上げる。

そして皆穂を見た。


「.....お兄ちゃん.....分かる。気持ちは分かるよ.....でも.....家に帰って来て。みんな心配している.....!」


「.....嫌だ.....」


「お兄ちゃん.....」


「嫌だっつってんだろうがこのタコ!!!ふざけるな!!!俺はもう家に帰らないっ!!!」


なんで.....何で!!!!!

俺はガンガンと地面を殴った。

そして出血するが.....もう関係無いと.....やけくそになった。

そうしていると。


後ろから抱き締められた。

懐中電灯が落ちる。

と同時に雨が.....降って来る。

懐中電灯の光が雨で反射されながら俺と皆穂を照らした。


「.....何の真似だ」


「もう止めて.....お願い.....私は.....こんな.....!」


「.....俺の勝手だろ。そもそも俺の体だから」


手からは出血が止まらない。

そんな中、そう言った瞬間だ。

まさかだ。


光の先から平手打ちが飛んで来た。

俺は手の平で.....頬を触る。

物凄く軽い平手打ちだが、俺が地面を殴るより効く。

目の前を見ると、皆穂が髪をずぶ濡れにしながら涙を流していた。


「.....お兄ちゃんだけの体だと思ってる!!?馬鹿なの!?違うし!」


「.....お前.....」


「.....お兄ちゃんだけが悲しいって思ってる!?違うから!!!私だって.....泣いていたんだから!!!お兄ちゃんを.....お兄ちゃんのお父さんを殺したのが.....私のお母さんだって知ってから!!!」


うああああん!!!!!

有り得なかった。

皆穂が.....号泣して真っ暗な空を見ている。

俺は.....平手打ちを感じながら。


地面を見ながら、話した。

皆穂に、だ。


「.....ごめん」


「.....?」


「.....まだ混乱しているけど.....お前の平手打ちで少し.....落ち着いた」


「.....ヒック.....ヒック.....」


涙を拭う、皆穂。

何度も何度も、拭う。

雨なのか涙なのか分からないぐらいになっている。


俺は.....その顔を見て立ち上がって空を見た。

そして.....少しだけ考えてから.....言う。


「.....でも俺は.....暫く帰りたく無い。マジに混乱しているから」


「.....じゃ.....あ、どうするの.....」


「.....河川敷で少しだけ休憩したい。そしたら帰る」


そうだよ。

俺は.....周りが見えなかったけど.....皆穂だって.....複雑なんだ。

もしかしたら母さんも由紀治さんも.....。

だから.....今は.....話を聞くべきだ。


でも足が竦むから.....少し休憩したい。

俺はそう思って、河川敷の廃工場のアーチに向かった。

あそこなら雨をしのげるだろうし。


「.....待って」


「.....何だ」


「.....私も一緒に行くから。お兄ちゃんが.....このまま傷付くのを放って置けない」


「.....知らんぞどうなっても」


俺はそう言い残して。

そのまま傷だらけの体で雨をしのぐ為に廃工場に向かった。

そして.....そこに腰掛ける。

皆穂が横に腰掛けた。


雨がピチョンピチョンと落ちる音を聞きながら。

先に俺が口を開いた。


「.....正直、衝撃で帰れない.....俺は」


「.....私も帰りたく無いけど.....ね」


銀髪を拭う。

そして銀髪を絞った。

その際に.....雨に濡れているせいか下着が見え。

俺は赤面で横を向く。


「.....お前さ」


「.....何」


「.....正直、聞いてからどう思った」


「.....そうだね.....簡単に言うと気が狂いそうになった」


何で隠していたのかってと言う、皆穂。

全く俺と同じだな.....。

俺は.....子供の様な行動だったのか?

少しだけ.....恥ずかしい気持ちだ。


「.....でもそれ以上に傷付いている.....お兄ちゃんを放って置けなかった。だから追い掛けて来たの」


「.....」


皆穂はそう言って。

俺に笑みを浮かべた。

何だろうな.....。


コイツの事、見直した気がした。

俺は天井を見て、そして言う。


「.....皆穂。済まなかった」


「.....それはこっちだよ。言い出そうと思ったけど.....気持ちが複雑だった」


「.....」


皆穂はそう言って懐中電灯を確認して横に置く。

それから、俺見てくる。

こうして見ると本当に美少女だなコイツ。

俺は思いながら、呟いた。


「雨上がったら帰ろうな」


「.....うん」


まだ大雨が降っているが。

いつかは止むだろう。

思いながら、俺達は.....いや。

皆穂が俺の肩に頭を置いて空を見た。

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