第4話 その全てがズレ行く時

何かがおかしい、ってか、おかし過ぎる。

簡単に言えば.....俺の義妹、皆穂は.....良からぬ方向に進んでいる気がする。

良からぬ方向に進んでいるなんて考えたく無いのだが。

あの日記は.....真実で、事実を意味している。


俺は調子が悪いまま翌日になり、朝食を食べた。

少し体調が悪いが.....まぁ.....仕方が無いだろう。

そう、思っていた時だ。

立ち上がって朝食の食器を片付けようと思った時。


ガシッ


「大丈夫?.....アンタ」


突然、制服の袖を掴まれた。

俺はビックリしてその場で尻餅を着く。

これには流石の母さんと由紀治さんも驚いていた。


「大丈夫!?」


「吉くん!」


俺は膝を震えさせる。

目の前の.....怪物。

俺は.....コイツの事を話すべきなのか?

由紀治さんと母さんに.....。


「おに.....じゃ無い!き、吉!どうしたの!?」


手が差し伸ばされてきた。

俺はその手を弾いて、立ち上がる。

触るな!と言って、だ。

そして全員を振り切ってリビングを走って玄関から飛び出した。


「.....ハァハァ.....」


『あんな雌豚』


「.....何でだよ.....皆穂.....!」


俺は恐怖に怯える足を叩いて。

そのまま歩き出した。

もう.....皆穂は信じられない気がする。

駄目だ、思い出すな.....あの事を。


『雌豚が.....』


「.....」


俺はフラフラしながら歩いて行く。

皆穂だけは.....信用出来ない!

例え義妹としても.....あれは.....!

絶対に何かが狂っている。



喘息の様な感じで息を吐きながら。

学校に登校して何時もの様に騒がしいクラスを見渡して鞄から教科書を出す。

そんなテカっている教科書に俺の顔が映る。


駄目だな.....青ざめてやがる。

助けてほしい気がする.....なと、俺は思いながら。

自分自身の生徒手帳を開けて静かに見た。


そこには1枚の写真が挟まっている。

遺影の写真が、だ。

亡くなった父親がひき逃げされる.....2週間前に撮った写真。


何時もこの写真を見る旅に涙が出る。

だが同時に.....父さんが居る、安心感を得れるのだ。

その為、たまに見ている。


「.....俺は.....どうするべきだと思う?父さん.....」


父さんの遺影に相談をしてみた。

通勤帰りに車に跳ねられて.....頭を強く打って頭部強打で.....亡くなった。

これは.....そうだな、6年前の話だ。

その跳ねた車だけど.....逃走した。


信じられないだろ?

父さんは.....ひき逃げされたのだ。

その後に直ぐに犯人は捕まったが.....その後はよくは知らない。

何故知らないのかって言えば怒りでそんな事を考える暇が無かったのだ。


俺は.....父さんの遺影を見ながら考える。

そして問いかけた。

返ってくる事は無いのに.....。

馬鹿らしいと思いながらも、だ。


「.....父さん。俺.....皆穂を信じられないんだけど.....」


当たり前だが、答えは無い。

だけどこの笑みには何時も助けられた。

突然居なくなったけど、俺に.....沢山の人生を教えてくれた。

俺は外を見て考えてみる。


「.....あんな怪物と.....皆穂と話すべきなのか?.....この事は俺だけが知っているし.....」


そう、考える。

そして考えていると先生が入って来た。

同時にキーンコーンカーンコーンと音がして。


俺は生徒手帳を直してから教卓付近を見ると、先生は出席簿を見ていた。

今日も1日が始まる。

とても憂鬱な1日が、だ。

その為に複雑な思いを.....抱きながら俺は担任を見た。



間も無くテストが有る。

俺はその事を考えて動いていた。


そしてその日の午後4時23分の事だが.....自宅に帰って勉強していて、その時にノックが聞こえてきて。

俺は見開いて、ビクッとする。

まさか.....。


コンコン


「.....皆穂か?」


「そうだけど。.....大丈夫?」


「.....すまん、今は忙しい」


「え?.....あ、そうなんだね。勉強を教えてもらおうと思ったんだけど.....」


ごめんな、それは無理だ。

俺はドアの先の皆穂に断って、そして勉強をする。

気持ちは、怖い。

.....ただ、それだけだった。


「ねえ」


「.....何だ。まだ居たのか」


「.....何で断るの?」


「.....」


何でって言われたらお前が原因だけどな。

そう、思いながら冷や汗を流す。

何をされるか分からないから。

と、思っていると。


「入りたい」


「.....何でそこまで」


「.....アンタが.....心配だから」


皆穂の言葉に俺は見開く。

そして頭に手を添えて、考えて。

それから答えた。


「じゃあもう良いよ。入って来い」


「.....ありがと」


そして、入って来た皆穂。

さっぱりした姿にパジャマ姿だ。

新鮮さが有るが.....何だろうか。


心底複雑だ。

ナイフでも出て来ないだろうな。


「.....どうしたの?アンタ.....」


「.....俺は.....別に普通だが」


「.....普通じゃ無いよ。だって.....汗が」


「.....何でも良い。早くしろ。何だ」


声が荒くなる。

しかし、本当に怖いのだ。

だから俺は.....警戒している。


皆穂は見開き、タジタジしながらも。

教科書を見せてきた。


「.....ア、の問題が分からないんだけど」


「.....これは教科書に載ってないのか?」


「先生がテストに出るって言ったけど.....聞きそびれた」


「.....」


胸元からナイフとか手榴弾とか出て来ないよな。

本当に.....頼むぜマジ。

俺は死にたく無い。


「.....ってか.....何で此処に来たんだ。勉強だけで来るとか.....今まで無かっただろ」


その言葉に、皆穂は少しだけ視線を彷徨わせてそして。

俺を見てきて答えた。

その言葉を、だ。


「.....アンタが心配だからと思ったから」


その言葉に俺は.....眉を顰める。

コイツは化け物なのか、どっちなんだ。

心配性なのか?どっちなんだ。


ただ俺は汗しか出ない。

暑くも無い癖に。


その様に考えていると俺のベッドに皆穂が腰掛けた。

俺は冷や汗を拭う。

感情が不安定だな.....と思う。

そう考えていると、皆穂が教科書を置いた。


「.....アンタさ.....」


「.....何だ」


「.....私の事、どう思ってる?」


「.....」


どう答えろと。

俺は思いながら皆穂を警戒しながら見る。

すると、皆穂は.....俺を見て俯いた。


「.....まぁ良いや。教えてもらったし、出て行くね」


「.....皆穂」


「.....何」


「.....お前は.....」


と思ったが。

言葉がやはり出て来ない。

俺は.....下唇を舐めて、そして怪しまれない様に作り笑いを見せた。


「良いや。ごめんな」


「.....?.....アンタ、最近おかしく無い?」


「.....そんな事は無い.....取り敢えず、早く部屋に帰ってくれ。俺は勉強が有る」


「.....勉強.....ね。まぁ良いや。じゃね」


そして、皆穂はドアノブを握って出て行こうとした、その時。

皆穂が何かを落とした。

俺は?と思いながら、それを拾う。

皆穂が慌てた。


「み、見るな!」


「.....落とし.....お前.....」


写真。

女性と男性と.....皆穂の幼い頃の姿が写っている。

のは良い。

問題はそこじゃ無い。

この女.....コイツ、見た事が有る。


「.....皆穂.....おい。何でお前が.....この女と仲良くしているんだ.....?」


「.....そ.....それは.....」


「この女.....確か.....京子だったな。俺の父さんを.....轢いたんだぞ」


「.....」


この写真の写り具合から言って.....これではまるで.....家族写真だ。

一体.....どうなってやがる!!!!!

俺は激昂する。

気が付くと、皆穂を押さえ付けていて問い詰めていた。


「教えろ!お前、何がどうなってやがる!」


「.....痛い.....吉.....痛い!」


「この.....クソッタレが!!!!!」


絶対に許されないだろ!!!!!

何で.....何で轢き逃げ犯の娘と夫が.....この場所に居る!

俺の親父を.....轢き逃げしたのに!


「.....今まで騙していたんだな.....」


「.....ち、違う.....吉.....お兄ちゃん.....!」


痛みかそのせいで涙を流す、皆穂。

何だ?この事は母さん、知っているのか?


嘘だろ?じゃあ.....何で話さなかったんだ?

それとも.....知らない?.....訳が無いだろ!


「.....もうお前と話さない。そして.....母さんも.....由紀治さんも信じられない!!!!!」


「話を聞いて!吉!西子さんは知っていた.....お父さんも!だけど.....私も知らなかったの.....当時、幼かったから.....信じて.....!お願い.....!」


「.....」


俺は勉強道具を投げ捨てた。

そして.....駆け出す。

部屋を出ようとした。


何を信じれば良いんだ?

この先、だ。

と思っていると。

ドアが開き、そして母さんが.....入って来た。


「.....騒がしいと思ったけど.....貴方.....知ったのね。吉」


「.....母さん.....何で....だよ.....!何でこんな結婚をしたんだよ.....!」


母さんは悲しげな顔をしていた。

罵声どころじゃ無い、どうなっている。

もしこれが本当なら家を出て行く。

俺は.....信じられない!!!


「.....吉!よく聞いてちょうだい。これには理由が有るの.....」


「うるさい!お前の話なんか.....聞きたく無い!」


母さんはビクッとしていた。

だがもうどうでも良い。

裏切り者!この.....クソッタレ!

俺は駆け出して階段を降りて靴を履いて飛び出した。


そんな事をした父さんがどれだけ悲しむか知っているのか!?

知らないだろう!!!!!

俺はもう信じない!

お前ら大人の言う事なんて.....!


うああああ!!!!!


なんで.....なんだ!

うああああ!!!と叫ぶ俺。

そしてチクショウと号泣しながら河川敷まで走って行った。

もう何も.....信じない。

そう、心に決めた絶叫だった。

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