第二章 山吹ノア、伊藤皆穂、伊藤吉が揃った時

第7話 二人の少女

その事が有っての翌日の事だ。

俺は.....皆穂と息抜きに土曜日になったので買い物に出る事になった。

複雑な事も有るけど.....大丈夫だろと思ったので、だ。


一応、来週にテストが有る。

その息抜きも有るが。

買い物ってのは.....まあ買い物だ。

デートじゃ無い。


そしてそんなこんなが有りながら、俺は自室で準備をしていた。

取り敢えず鞄に必要な物を詰めなくては。

と思っていると、ノック無しで部屋に皆穂が入って来た。


「お兄ちゃん」


「.....どうした。皆穂。ノックしてくれ」


あ、ごめん。

と言う、皆穂に向きながら鞄を閉めた。

そして皆穂を見る。


そういやいつの間にか俺の呼び方が.....お兄ちゃんになっている。

まぁ良いけど。

と思いながら居ると皆穂は困惑した様に話した。


「.....あのね、服が決まらない」


「.....は?買い物だろ?何でそんなに服装に拘るんだ」


「お兄ちゃん?どうでも良い訳が無いでしょ。お兄ちゃんと一緒に出掛けるんだし街に出るんだよ?それはおかしい」


では何を選んで何を言えと。

俺はその様に思いながら居ると、皆穂は服を取り出した。

そして俺に見せてくる。

俺は?を浮かべた。


「こっち、カジュアル。こっち、キレイ系」


「.....分からん.....違いが.....」


俺は眉を顰める。

帽子.....が有るだけで.....スカートとか違うだけで同じじゃね?

と思うのだが、皆穂は盛大に溜息を吐いた。

そして額に手を添える。


「.....うん、まぁ良いや.....とにかく、どっちが良い?」


「.....カジュアルが似合うんじゃ無いか?」


「分かった。じゃあカジュアルを選ぶね。お兄ちゃんが決めたから」


「.....」


嬉しそうに決めた皆穂。

えっと、街に行くだけだよな?と俺は.....考える。

デートじゃ無いよな?

俺はその様に顎に手を添えて考える。


「そう言えばお兄ちゃんは準備出来た?」


「.....うむ、微妙だけど準備出来たぞ」


「.....何それ.....」


全てに完璧などは無い。

だからそんな目をするなよ.....。

俺は盛大に溜息を吐いた。

そして鞄を持つ。


「とにかく、早く準備したらどうだ?」


「うん。そうだね、あ。そうだ」


「.....?」


俺の近くに寄って来る。

そしてポケットから何かを取り出した。

それを.....俺の首元に添え.....!?

うぉ!?何するんだ!


「暴れないで。お兄ちゃん」


「いや!?いきなり何するんだ!」


「これは貝笛だよ。私が昔から持っていた物。お兄ちゃんを守ってくれる様にね」


「.....!」


皆穂はそう言って俺の首に着けた。

俺は.....胸元の貝笛を見る。

大きくも無ければ小さくも無い感じで、ポツポツ小さな穴が見える。

白い紐でぶら下がっているが.....?


「.....これ、鳴るのか?」


「うん。演奏が出来るよ。オカリナみたいな感じだね」


「.....貰って良いのか?」


「うん。お兄ちゃんを守って欲しいから」


俺は笑みを浮かべる、皆穂を見る。

うーむ.....何だか悪いな。

俺はその様に考えつつ、買い物に出たら何か買ってやるか。

その様に思いつつ居ると、皆穂は手を振った。


「.....あ、着替えてくるね」


「.....おう」


貝笛を見ながら、俺は立ち去った皆穂を目で追った。

そして.....複雑な思いを.....抱く。

皆穂は良い子だとは思う。

だけど.....あの色々な事が有るから.....な。


「.....さて.....どうなるのやら」


そう、小さく呟いて窓から空を見た。

青空が広がっている。

昨日とはエライ違いだと思う。

大雨だったしな、昨日は。


「財布、携帯.....」


そう、確認していると。

6年前から変わらず使っている財布の.....隙間に何か挟まっていた。

俺は?を浮かべて財布を剥がす。

写真が.....挟まっていた。


「.....?.....誰だ?」


その人物は。

俺と、そして.....親父、少女二人。

俺は.....???を浮かべながらその写真を見た。

誰だこの女の子達は?


「え?6年前だって事か?」


裏面を見ると、6年前の4月と書かれていた。

ますます???を浮かべる。

こんな写真を撮った記憶が無いから、だ。

こんなに可愛らしい女の子達と撮ったら普通は記憶に.....残るだろ。


「.....何だ?.....誰だ?」


もう一度、呟いて写真を見る。

それで考えてみたが.....答えは出なかった。

そもそも、幼い頃に女の子の友達なんて.....居なかった筈だから。


だが、俺は知る由も無い。

これが.....新たな物語の.....始まりになる事に、だ。

あらかじめ言うなら.....それは俺が.....また悩む事態だった。

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