第8話 3つのカケラが揃う時

写真を見てから段々と思い出してきた。

その写真が撮られたのは確か.....6年ぐらい前の事だ。

ある日、野球場に遊びに行く為に親父と2人で歩いていると少女が.....2人、河川敷で遊んでいたのだ。


廃工場の有る、いわゆる俺が逃げて来た河川敷にて石を使ってお飯事なのか、遊んでいたのだ。

もしかすると河川敷自体が思い出の場所と言っても過言じゃ無いかも知れない。

俺は野球場に向かう筈の親父に手を引かれて、その少女達の所まで行く。


当時の俺はその少女達を見つつ、可愛いなって思った。

俺は.....恋をしていたのかも知れない。

その二人の少女に、だ。


親父は止めとけば良いものをその二人の少女に俺を混ぜて遊ばせた。

そして.....その少女達と俺を遊ばせながら大丈夫と思ったのか親父はトイレに行ってくると席を外し。

俺はそれを見送ってから少女達と楽しく遊んだ。


直ぐに戻って来るからな、と話していたがその際に空を見て。

凄まじい勢いで天候が悪くなっているのを見た。

それから.....先の記憶が無い。

何故無いのか思い出せない。


一体何故、思い出せないのか分からないけど本当に全然思い出せないのだ。

悪天候だった事は知っていて.....ぼんやり、川が氾濫した?筈だ、という事を多分の認識で記憶している。

恐らくこれは.....記憶が消えている。


「.....」


「♪」


俺は.....目の前の座席に座っている皆穂を見ながら、感上げていた。

電車に乗っているのだが俺は。

その少女達は.....誰なのかと、そう考えている。

すると皆穂が覗き込んできた。


「お兄ちゃん」


「.....どうした」


「.....何?私と一緒が嫌なの?落ち込んでいるし」


「違う。アホ、考え事をしていたんだ」


何で考え事をしているの?と聞いてくる、皆穂。

俺は.....その問いに答えようとしたが、途中で止めた。

まだ分からないから、だ、色々。


「.....ん?.....お兄ちゃん。まさかと思うけど女じゃ無いよね..........?」


「.....違うって.....」


「いや、女だよね?私に黙って?有り得ないんだけど」


「.....あの、怖いんですけど?」


かなり変貌していっているんだが。

え?全然、怖く無いよ?私は至って普通だから.....と言うが。


コイツ.....レイプ目になってんぞ。

いやいや!?何だコレ!?

まさ、まさか!?


「み、皆穂さん?.....おちけつ」


「.....落ち着いてるよ?私は」


「.....目が死んでるからな。マジに」


「死んでないよ?お兄ちゃん..........?」


マジ怖い!やっぱりマジでヤンデレなのかコイツ!?

レイプ目で.....しかも何か取り出そうとしている!

俺は青ざめながら居ると。

電車が目的地に着いた。


「よ、よし着いたな!降りるぞ」


「まだ話は終わって無いけど。お兄ちゃん.....」


「皆穂.....終わったって」


と、皆穂と言った瞬間。

何か、皆穂?、と声がした気がした。

一瞬だけ人混みを見たが何も無いので。

気の所為だろうと前を見た。



やはり皆穂には欠陥が有る。

俺は.....そういう欠陥をいつも考えているが、答えは出てこない。

そもそも皆穂が何でそんな事になってしまったのか。

それすらも分からないから。


目の前の皆穂を見る。

しかし、鼻歌を歌っていて、特に異常は無い。

何故、先程はあんな目を見せたのか.....。

怖い限りだ。


「お兄ちゃん。コレ可愛く無い?」


「.....あ?.....あ、そうだな」


「ワンピースだね。本当に可愛い」


ウィンドウに張り付く、皆穂。

そんな感じでデパートのウィンドウを見て居ると。

背後から誰かが俺達に声を掛けて来た。

後ろを見る。


「.....あの.....もしかして.....皆穂ちゃん?吉くん?.....その.....!」


「.....誰だ?」


その少女を見て何故かズキッと頭が痛む。

黒髪のボブ、そして俺達を驚きながら見る、美少女。

黒子が口の周りに有り、そして.....身長は皆穂よりやや高い。

誰だ.....?


「.....電車で見掛けたけど.....私だよ.....覚えてない?山吹ノアだよ.....!」


『私、ノア!』


「.....え?.....いや.....覚えてな.....」


ズキッとする頭でそこまで言うと。

皆穂が怒った様にスクッと立ち上がった。

そしてその女の子を睨み付けて、俺の手を引く。

構わずにどんどん人混みを掻き分けて歩いて行く。


「ちょ、お、おい!」


「帰るよ。.....ってか、何?お兄ちゃんはあの子が好きなの?あんな最低な奴が.....」


「お前!知っているのか!?ノアって誰だ!?」


「.....アンタ覚えてないの!?山吹ノア!私の幼馴染で.....しかも私がイジメられる原因になった.....女の子!!」


そこで。

俺はズキンとまた頭が脈打った。


『ノアちゃん』


『キーちゃん!』


そしてイテ.....と思いながら、頭に手を添える。

その際に、頭の傷に.....触れる。

この傷.....とそうしていると皆穂が俺の頭部を指差してきた。

そして話す。


「.....その傷は.....私とノアを救った傷だよ」


「.....全然覚えてない.....」


「.....全然覚えて無いの?マジに?」


「.....ああ」


すると、背後からノアがやって来て皆穂の腕を掴んだ。

そして必死に訴え掛けてきた。

涙を流しながら、だ。

顔がグシャグシャで有る。


「皆穂ちゃん!私.....反省したよ!本当に御免なさい.....私が.....あんな事さえしなかったら.....貴方は!!!!!」


「煩いな.....」


「そんな事言わないで.....お願い.....もう一度、友達に.....!」


「煩いって言ってんでしょうが!!!!!」


バシッと平手打ち。

ノアの頬を叩いた、皆穂。

いや、嘘だろお前!?

俺は驚愕しながら、直ぐに止める。


野次馬が集まり始めていた。

美少女の喧嘩だからだろうけど。

俺は二人を仲裁する。


「お前ら.....喧嘩すんな!話を聞け。両者共に!」


「聞けない。私はコイツが嫌い!!!」


「皆穂ちゃん.....!」


ノアは必死に、皆穂は暴れる。

俺は盛大に溜息を吐いた。


見れば、近くに喫茶店が有る。

その場所まで二人を連れて行く事にした。

このままではキリが無いので、だ。

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