第9話 殺人犯の母親の娘へのイジメ

山吹ノアという俺と遊んだとされる女の子の1。

俺は.....彼女を途中まで知らなかった。

しかし、彼女の方から声を掛けてくれて俺は僅かながら記憶が.....蘇った気がする。


そう、俺は確か.....川に流された.....女の子二人を同時に救った気がする。

当時俺は.....一応、親父に勧められた空手をしていて体力が有ったから、だ。

だから一応、救う事が出来た。


でも本来なら絶対に救う事は出来ない。

奇跡と言えると思う。

この事は地元紙にも確か載ったぐらいのレベルだ。


だけど.....俺はそれらを何で忘れていたのか。

ようやっと.....分かった。

俺は.....川で確か溺れ記憶を失っていたから、だ。

でもそれに対して皆穂は。


ノアを忘れられない記憶として刻んでいた様だ。

イジメられた原因として、だ。

周りに美少女だ、と野次馬が集まる中。

俺達は喫茶店までやって来た。


そして目の前の.....ノアと対していた。

俺の横に皆穂。

そして前にノア、という形だ。

俺は.....皆穂を尻目に、目の前のノアに話す。


「.....何が有ったんだ?お前ら」


「.....簡単に言うと、目の前のノアのせいで私は.....悲痛なイジメを受けた。だから私はノアを許す気は無い」


「.....私は.....その事を.....今までずっと反省していた.....だから会えた時は.....嬉しかったの.....!」


「.....」


ちょっと現状況では分からないが、聞いた話だけ纏めると。

つまり、皆穂はイジメを受けていた。

その件に関して、ノアが関連している。

そう言う事らしいが。


「皆穂。マジに何が有った」


「.....ノアが.....無断でクラスメイトに相談して.....そのクラスメイトが、殺人鬼だー、とか言って私をイジメて来た。小学校中にそれが拡散したの。私はノアに轢き逃げの娘だって話さないでってあれ程言ったのに。裏切られた」


「.....それで.....私は反省しているの。今もずっと.....!」


それは.....そんな事が有ったのか。

俺は.....複雑な顔になった。

轢き逃げされて.....それがきっかけか.....。


何故、ノアを嫌っているのか.....と思ったが。

思っていると、皆穂がノアを睨んだ。

そして言う。


「.....それだけじゃ無い。それでお兄ちゃんを奪おうともしたから。許せない」


「違うよ!私は.....そんな事はしない!皆穂ちゃんが.....大切だから!」


「うば.....え?」


俺は目を丸くした。

そして皆穂を見つめる。

皆穂は俺を見てから、そのまま話す。


「アンタが.....好き。私はね。ノアはどうか知らないけど」


少しだけ赤くなる、皆穂。

雷が落ちた気がした。

皆穂.....が俺を?

予想はしていたが.....まさかだった。


そんな驚愕な眼差しで皆穂を見ていると。

皆穂は俺を横目にコーヒーを一口飲んで、話した。


「.....でもあの日、救われたのは私だけじゃ無かった。つまり、ノアもお兄ちゃんを好いている可能性が有るから.....私は警戒していたりした。でもまさかそんな卑怯な手を使うなんて思って無かった」


「違う.....お願い.....信じて.....そんなつもりは.....」


「.....私はアンタを許さない」


皆穂は怒りに満ち満ちている様だった。

俺は.....そんなノアと皆穂を見ながら、少し考える。

どうしたら良いのだろうか、と思いながら。


「ノア。お前は俺が好きか」


「.....うん、好きだよ。救ってくれたから」


「.....それは.....俺を異性として好きなのか?」


「.....皆穂ちゃんも言っているけど、違うよ。本当に」


俺は皆穂を見る。

皆穂はジッと、ノアを見つめていた。

そしてその場から立ち上がる。

俺の手を引いた。


「.....もう良い。話が纏まらないから帰る」


「皆穂ちゃん!待って.....お願い、許して!」


「許さないって.....言ってるでしょ。親友として裏切られた件も.....有るんだから。どれだけ悲しかったか」


「.....皆穂.....」


そして俺を引き摺る様に去って行く。

俺は.....そんな皆穂に問いかけた。

このままで良いのか、と思ったからだ。


「.....皆穂.....お前.....本当にこれで良いのか?」


「.....何が」


「.....お前な。.....実はノアと友達を辞めたく無いんだろ?手が触れてんぞ」


「.....気の所為だから」


俺は皆穂の言葉に。

盛大にその場で溜息を吐いた。

そして皆穂の手を振り払い、ノアの元に戻る。

皆穂は驚愕していた。


「.....ノア。皆穂の事だが」


「.....えっと.....どうしたの」


「.....アイツは友達を辞めたく無いんだと思う。実際は」


「お兄ちゃん!!!!!」


真実は真実だろ。

皆穂は嫌だったんだけど、それでも.....辞めたく無いんだ。

友達関係は、だ。

だから.....手が震えていたんだと思う。


「.....皆穂」


「.....何」


「仲直りしてやってくれないか。ノアは.....反省しているよ」


「.....嫌」


何でだ?と俺は聞く。

すると、皆穂は震えながら俯いた。

そして何を思ったか。

踵を返して思いっ切り走り出した。


「皆穂!?」


「.....」


バァンと喫茶店のドアを開けて去って行く。

お金をカウンターに置いて、だ。

嘘だろアイツ!


「皆穂!」


「皆穂ちゃん.....わ、私も.....!」


ここで逃げられたら.....絶対に駄目な気がする。

俺はその様に考えて、直ぐに追い掛けようとした。

皆穂とノアを和解させる為に、だが。

しかし、足が動かない。


「.....今来るか.....!」


俺の親父を殺した殺人犯の娘。

俺は.....そんな殺人犯の娘の仲を取り持つ必要が有るのか?

そう思って足が竦んだのだ。

俺は.....俺は.....!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る