第15話 皆穂の母親との再会

6年前の事。

俺は親父に連れられて皆穂とノアに出会った。

その後に川で溺れてしまった皆穂とノア、俺は傷を負って記憶を失い。

今に至る。


皆穂とノアに同時に告白された。

俺は.....その皆穂とノアに.....答えれないと回答保留。

だけど、俺を巡ってからバトルをするからと二人は言った。

こんな俺は.....好かれても良いのだろうか。


「.....」


皆穂とノアが話している中。

俺はトイレに向かい、個室内で生徒手帳を見ていた。

親父の遺影を、だ。

俺は.....親父の言葉を思い出す。


『良いか。吉。女の子は砂糖菓子の様に繊細だ。だから気を付ける必要が有る!俺もそうだがお前も男だ。それは知っとけ!ガッハッハ!』


その後に幼い俺は親父に砂糖菓子って.....とツッコんだ覚えが有る。

親父は、う、うるさいな!、と赤面していたっけな。

懐かしい記憶だと思いながら俺はクスクス笑う。


「.....親父。俺、アンタの言った事.....本当だと思ったよ。今更.....だけどな」


そう、皆穂もノアも。

砂糖菓子の様だ。

溶けて無くなってしまうから.....守りたくなる。

そんな感じって言える。


俺は.....親父の遺影を見ながら、そう思った。

笑顔の親父は.....俺を見ている。


「.....頑張るか」


その様に思って。

立ち上がる。

すると、扉の向こうから声がした。

皆穂の声だ。


「吉ー。ノアと一緒に外行かない?射的とか有る場所ー」


「.....おう!」


俺は返事をして生徒手帳を仕舞った。

砂糖菓子.....溶けて無くならない様に俺はしないといけない。

皆穂もノアも。

失いたくないからと思っているから。



「所で何処で遊ぶんだお前ら」


「じゃあゲーセン」


「そうだね」


「.....おう。金無いけどな」


UFOキャッチャー!とはしゃぐ、皆穂。

それをクスクスとノアも嬉しそうに見る。

何だかコイツら、告白してから吹っ切れた様な感じになったな。

更に仲が良くなった感じだ。


「ゲーセンか.....」


ふと、思い返す。

あの日を.....親父と遊んだ日を、だ。

俺の親父は.....ゲームメダルで遊ぶのが好きだったんだ。

だから.....何時も俺も遊んでいた。


夢中で増やしていたのだ。

そう、思いながら居ると皆穂の足が止まっていた。


「.....皆穂?」


目の前の皆穂は何か.....目を細めていた。

警戒している様に見える。

俺は?を浮かべながら、ノアを見た。

ノアも俺を見て?を浮かべている。


「.....どうした?」


「.....いや、ゲーセンのあのUFOキャッチャーの前に居る家族連れ.....吉。アンタも知っていると思うけど.....」


「.....え.....あ.....」


ゲーセンに入った時。

目の前の男女を見て俺は思いっきり目を見開いた。

そして.....白い布を被せられた親父を思い出す。

ただ.....俺が.....最も.....。


「お母さん.....」


「.....み.....皆穂?」


相手も直ぐに気付いた様に青ざめる。

まさかだ。


あってはならない事だった。

何故か目の前に皆穂の母親、京子.....つまり。

俺の親父を.....轢き殺して逃走した犯人が居た。


多分、旅行だろうか。

そして再婚相手だろうか一緒に居る。

京子は唖然としている。


「.....ど、どうして.....この場所に?」


「.....どうしてって。私は旅行。それだけ」


不愉快そうにそう吐き捨てて。

踵を返してゲーセンを出ようとする、皆穂。

俺は.....京子を見ながら、固まっていた。

そしてハッとして直ぐ皆穂を見る。


「皆穂!」


「み、皆穂ちゃん!」


さっさと去って行く、皆穂。

俺は京子をもう一度見る。


そしてかつての.....事を思い出しながら皆穂を追い掛けた。

まさかこんな場所で再会なんて.....そして皆穂が。

そう思いながら。

そのままゲーセンから離れて行く。



「皆穂、大丈夫か」


「.....うん」


「皆穂ちゃんのお母さんだよね?」


飲み物を渡す。

皆穂はそれを受け取って飲んだ。

俺と皆穂は.....複雑な顔付きで京子の事を思う。

殺人を犯して.....都合によって釈放された.....皆穂の母親。


確か聞いた話では。

皆穂は虐待を受けていた。

京子に、だ。

何故かと言われたら.....京子は精神面がおかしくなったから。


だから.....別れたとも聞く。

しかしまさかこんな形で再会する事に.....なるとは。

予想外過ぎて.....頭が追い付かない。


それとも何か。

母の日が近いから?神様.....それは無いだろ。

あんまりだ。


「.....こんな形で再会するとは思わなかった」


「.....そうだな」


「.....吉くん.....皆穂ちゃん.....」


あの日。

俺は.....白い布に顔を覆われた親父を見た。

ピクリとも動かない親父。


俺は.....生まれて初めて.....自分を呪った。

そして.....死のうかと思ったのだ。

相手は救護を怠って逃げた。


その事で.....京子の事を恨んでいて。

名前を絶対に忘れないと.....恨んでいた。

でもその気持ちにようやく整理が着こうとしていたのに。


神様、あんまりだ。

と思いながら皆穂を見る。

皆穂はピクリとも動かないまま、俯いていた。

皆穂の事を思うと.....何も言えない。


「.....お母さんは私を虐待したから嫌い。でも.....もう私も大人なんだよね」


「.....そうだな」


「.....お母さんは.....私を必要無いと虐めていた。そして吉を傷付けた」


「.....ああ」


駄目だこりゃ。

お互いに良い記憶は無い。


俺は.....皆穂を見ながら、空を見る。

ノアも居心地が悪そうにしていた。

取り敢えず.....どうするか。


「.....京子.....いや。皆穂.....あの人とは今も繋がりは有るのか」


「.....無い。連絡先も知りたく無かったから」


一気に旅行が天国から地獄になったな.....。

コイツらはどう思っているか知らないが。

俺達はその場で通行人を見ながら暫く動かずに居た。

何でこの場所なんだろうか.....とも思うが。


「.....確か.....吉くんのお父さんが轢き逃げされたの6年前だよね」


「.....そうだな。会社から帰って来る時に.....轢き逃げされた」


「.....皆穂ちゃんは.....虐待されたんだよね」


「.....まぁそうだね」


ノアは.....だよね、と言う。

すると、その言葉を聞いてから皆穂がグシャッとペットボトルを潰した。

そして立ち上がる。


「.....吉。ノア。居心地、悪くしてごめん。行こうか」


「.....うん.....」


「.....」


京子への怒りが湧き上がる。

これから先、俺は一生、許せないかも知れない。

でも.....もう何時迄も.....恨んでも.....と思う。

皆穂の様に.....考えないといけない。

だが.....でも.....。

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