第14話 お互いの気持ち

偽りの仮面を着けていた皆穂。

何が偽りの仮面なのかと言うと。

俺に対して嫌悪だと見せかけていた仮面だ。


だが今日。

そんな仮面をぶっ壊す様なキスを皆穂は俺とした。

俺に皆穂は愛情表現をしたのだ。

見開くしか無かった。


紅葉の木の有る場所から帰りながら目の前の皆穂を見る。

皆穂は気持ちは伝えたからと気楽な感じになっている。

そんな皆穂はこれは絶対に許されない恋だからと言っていた。


俺は皆穂と同じ様に相当に複雑な心境だった。

全てにどうしたら良いのか迷っている意味で、だ。

俺は.....これから先、どう.....皆穂に向き合ったら良いのだろうか?

分からないと思っていたから。


思いながら、襖を開けて部屋に入るとノアが悲しげに居た。

俺と皆穂は顔を見合わせてノアに話し掛けるが.....。

何でこんなに悲しげな顔をしているのだ?


と思って俺はハッとする。

だが、それよりも早く皆穂が話していた。


「どうしたの?ノア」


「どうもして無いよ。皆穂ちゃん」


「お前.....」


なんか滅茶苦茶に腹を立てている様に見える。

もしかして.....あの呼び出しの事で?

抜け駆けの事で?


俺は思いつつ話そうとした、のだが。

その前にノアが言葉を発し。

俺達を見て来た。


「皆穂ちゃん」


「.....何」


「私も吉くんが好きだから」


察して来ては居たが。

計り知れない衝撃だった。

俺は思いっきり見開く。


だが皆穂に至っては、なるほどね、とそれだけ。

怒り混じりじゃ無い。

純粋に分かっていた様に、だ。

俺は?!と思いながら、皆穂を見る。


「アンタが吉を好きな可能性はあった。だからその気持ちは知ってた。だから私は全く驚かない」


「は?.....ちょ、おま.....」


ちょっと待て。

知っていたなら何故、話さなかった。

と思いながら皆穂に聞こうとしたがそれよりも早く話が進んで行く。

ノアが眉を顰めて皆穂を見た。

一歩、進む。


「.....それでいて告白したんだね。それにキスまで」


は!?と俺は見開く。

いや、何で知ってんだ!?

見ていたのかコイツ!

と思いながら皆穂を見た。

皆穂は余裕そうな感じでノアを見る。


「恋は早い方が勝ちだから。別に良いでしょ」


「.....別に私が文句とか。そう言うのは無いよ。でもこれだけは覚えておいてほしいな」


ノアは立ち上がる。

そして静かに俺の手を握って宣言した。

その宣言を、だ。


「私は皆穂ちゃん。吉くんを好きだから貴方をライバルと思ってる。だからこの先、私が告白する可能性も有るから。それは譲らない」


「.....アンタ、いつからそんな偉そうになったの。私に何をしたか知ってるの」


「うん知っている。でも皆穂ちゃんだって告白したんでしょ。貴方も同じ傷を持っているのに。だったら私がどうこうしても問題無いよね。思いを伝えても問題無いよね」


皆穂はノアを細目で見つめる。

或いは威圧の様な目で、だ。

ってか、ノアってこんな強かったっけか?

俺は女子バトルの状態に竦む。

ノアは更に続けた。


「.....私は吉くんが大好き。だから負けるつもりは無い。今まで弱気だったけど、これだけは譲らない」


「そう。でも私は吉の事をずっと前から想ってるから負けない。正直、アンタには」


なんか.....夏ですら無いのに8月並みに相当に空気が熱いんだが.....?

それ以前に美少女に好かれるとか尚更、有り得ないんだが。

コイツらかまさかそんなに想っていたなんて。


それに比べて俺は.....情けないな。

余り分からなかったから。

と思いながら居ると、ノアが俺に向いて言葉を発した。


「吉くん」


「何だ?」


「私の告白の返事は要らないよ。皆穂ちゃんの時と同じだと思うから。だけど、私と皆穂ちゃんが君を好いて、バトルをしているのは知ってね。私は負けない。皆穂ちゃんに」


「いいや、吉。アンタは私が惚れさせる」


俺を見つめてくる、二人。

何だってこんな事に?


俺は赤面で口元に手を当てた。

でもな。

本当に.....どうしよう。


何だか素直に嬉しいんだが。

俺を.....こんなに.....俺なんかを。

睨み合う二人を見ながら俺は呟いた。


「.....有難うな、お前ら」


「何が?」


「俺を愛してくれて。俺は一人じゃ無いんだな」


二人はその言葉に?を浮かべていた。

良いんだ分からなくても。

純粋に.....嬉しいのだ。


どうなるかは分からないけど未来は少なくとも悪くはならない筈だ。

俺はその様に思いながら、外を見る。

そうしていると皆穂がノアに向いて手を差し出した。

ノアは?を浮かべている様に見える。


「ノア」


「.....何?皆穂ちゃん」


「アンタ、変わったわね」


「.....そう.....だね。.....人間って不思議だね」


口角を上げて握手し合う、二人。

俺は様子に少しだけ笑みを浮かべた。


本当に.....良い感じだ。

皆穂が変わるきっかけにもなってる。

多分だけど、可能性は高い筈だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る