第六章 ノア、悩む

第27話 海外に行くかも知れない

数人と約束を交わしてそしてバスで帰宅の途についた。

俺の家に数人が来てくれるという。

とても嬉しかった。

数人が約束をしてくれた事に、だ。


これで吉武先輩に良い報告が出来るだろう。

俺は.....その様に思いながら、横で寝ている皆穂を見る。

そうしていると電話が掛かって来た。

俺は?を浮かべながら電話を見る。


皆穂も起きてしまった。

何だか申し訳無いと思いながら電話の人物を見る。

ってか.....ノア?


「.....もしもし?ノア?どうした」


『吉くん。ちょっとお話が有るんだけど.....』


「後でで良いか?ちょっと今、バスに乗っててな」


俺はその様に返事した。

これについて、うん、分かった、とノアは了承してくれたが.....。

何の話だ?俺は思いながら、皆穂を見る。

皆穂は俺に向いていた。


「.....どうしたの?」


「.....ノアだ」


「.....ノア.....ああ、どうしたの?」


「.....分からないが.....後で連絡する」


ノアの事に関してその様に言った。

しかし何だろうな。

若干、切羽詰まっている様な声だったが。

俺は?を浮かべながらスマホを見た。



バスが着いて俺と皆穂は帰宅した。

皆穂は風呂に入る。

その間にスマホを見てリビングに行ってからノアに連絡する。

すると、直ぐにノアから返事が有った。


ノアは.....有難うと小さく言う。

どうしたんだコイツ。


「ノア?どうしたんだ」


『.....実はね.....私、海外に行かなくちゃいけないかも』


「..........は?!海外?!」


俺は.....少しだけボーッとしながら黙って聞いていたが。

海外と聞いて素っ頓狂な声が出てしまった。

俺は直ぐに見開きながらスマホに言葉を発する。


「お前、どうして海外?!一体どうした!」


『.....うん.....えっとね、私.....のお父さん。心臓病が酷くなってしまって。海外で手術でその後に療養しなくちゃいけないみたいなの』


「.....!」


そう言えば少しだけ聞いた事が有る。

それは.....ノアの父親の事だ。

ノアはそんな事を度々に話す様な.....人間じゃ無いから一度だけしか聞いた事が無いのだが。


だから今まで忘れていたが.....まさかだろ。

今、海外に行くのか.....。

俺は少しだけ複雑な顔になった。


「.....何とかならないのか」


『.....何とも言えないけど.....その.....お母さんに相談した。だから.....土曜日か日曜日に.....そっちにお母さんが行くと思う。迷惑が掛かるけど.....ごめんね』


「.....土日か.....」


土日は空いているから別に良いのだが。

でも.....ノアの母親とか有った事が無いな。

今まで.....ずっと会った覚えが無いし、ノアも話をした覚えが無い。

何故だろうか.....。


「.....ノア。母親って.....確か先生だったよな?」


『そうだね.....ちょっと.....拗れるかも.....』


「.....何とかして説得しないとお前が居なくなったら.....皆穂がやばいな.....更に大変な事になるかも知れない」


『.....うん。私もちょっと.....気になるから』


さて.....どうしたものかな。

俺はスマホを持ったまま、窓から外を見る。

外は夕暮れだ。

それを見ながら.....俺は複雑な思いを馳せた。


「.....頑張ってくれ。俺も頑張るけど、身内が頑張った方が更に効果が有ると思う」


『.....うん。ごめんね。突然の相談で』


「.....いや。ちょっと衝撃だけど、大丈夫だ。だけど.....完全に説得出来るか分からない。その時は.....すまない」


『大丈夫。その時は.....うん』


ノアは涙声になっていた。

嫌なのだろうな。

俺は思いながら、気配を感じて背後を見た。

背後に服装を整えた皆穂が立っている。


「ノアどうしたの」


「.....皆穂。ノアな、海外に行くかも知れない。それを引き止める説得をしている」


しかしその皆穂の次の言葉は冷たいものだった。

俺は少しだけ悲しくなる。


「.....ノアなら行っても良いんじゃ無い?邪魔な者が消えるから」


「.....お前は本当にそれで良いのか。幼馴染だろ。ノアは」


「.....でもお兄ちゃんを取ろうとしている」


「.....そういう問題か。俺は.....どっちのものにも今はならない」


俺は皆穂の肩を掴む。

そして.....皆穂を見つめた。

皆穂は?を浮かべる。

そんな皆穂を見つめながら、俺は必死に訴えた。


「.....皆穂。.....ノアは間違い無く俺もお前にとっても無くてはならない存在だ。だから.....お前も協力してくれ」


「.....でも.....私にとっては.....」


「.....お前が元に戻る為に必要な人だ。元に戻りたく無いのか?」


皆穂は少し眉を顰めた。

俺は.....そんな皆穂を見る。

だが、次の言葉は.....俺の予想を裏切った。


「私は元に戻りたく無い。お兄ちゃんを失う」


「.....皆穂.....」


「.....だから私は.....ノアはどうでも良い。そして元に戻る気は無い」


そして皆穂は部屋を出て行ってしまった。

俺は.....目に手を当てて。

そして涙を浮かべた。


「.....どうしたら良いんだ.....」


数人の説得が効いていると思ったのだが。

予想は全て違った.....。

俺は涙を流しながら膝を丸める。

どうしたら良いのか、と悩みながら。

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