第28話 見失った心

インターフォンが鳴る。

その鳴る音は.....スタートのピストルが鳴る様な感じに感じられた。

俺は咄嗟に身構えてしまう。


俺は.....少しだけ複雑な思いを抱えながら返事をして母親に頷きながら玄関に向かってから。

それから、家の玄関を開ける。

目の前にノアと.....ノアの母親と思われる人が立っていて。


大量の雨が降り注ぐ中。

傘を折り畳み、ノアの母親は頭を下げた。

そして何かを取り出す。

菓子箱を。


「.....これ、つまらないものですが.....」


「あ.....有難う御座います」


すると、少し遅れて母さんが出て来た。

まぁまぁと言いながら、傘を置いて下さい、と案内する。

ノアの母親は、すいません、と言いながら傘をゆっくり置いた。

それから俺と母さんを見る。


「.....ノアの件で.....お話をしに来ました.....いつもノアがお世話になっています。私の名前は.....山吹和代と言います」


「和代さん.....ノア、どうぞ」


母さんは和かに促す。

それからノアと和代さんという女性は入って来た。

俺は.....少しだけ眉を顰めて二階を見る。

アイツめ。


「ご、ごめんね。吉くん。迷惑じゃ無かった.....?」


「.....いいや。アイツがな.....ハァ.....」


俺は頭に手を添えながら。

盛大にため息を吐きつつノアと和代さんを促している母さんに付いて行った。

そして客間に案内する、母さん。

座布団に促した。


「お茶.....淹れてきます。吉。それまで宜しくね」


「.....ああ」


そして母さんはいそいそと去って行く。

俺は.....和代さんとノアを見る。

和代さんは真剣な顔だが、ノアは複雑な顔をしていた。

俺は頬を掻きながら座布団に腰掛ける。


「.....えっと.....俺と母親しか居ないんですが.....大丈夫ですか?」


「大丈夫です。.....その.....ご了解さえ頂ければ」


「.....はい」


和代さんは俺を見ながら少し俯いた。

俺も視線を外す。

そして何か視線の先を見つける為に.....部屋の.....窓を見た。


水滴の跡を追ったりしていると。

和代さんが声を出した。


「.....お母様が来られても話を致しますが.....その.....今日、この場所に来たのは.....ノアを不躾ながら預けたいという事なんです」


「.....ノアを預けたい?」


「.....それは私が話すよ。お母さん」


ジッとしていたノアは俺に向いてくる。

そして.....ノアは俺を射抜く様に見つめて.....意を決した様に言った。

俺は?を浮かべながら見つめる。


「今度、ようやっとお金が貯まったからお父さんが心臓の手術を受けるんだけど私ね.....お父さんの事も有るけど、今、海外に行きたくない。皆穂ちゃんが心配だから。その中でね.....私には事情が有って親戚が居ない。そうなるとね.....吉くんしか頼る人が居ないんだ」


心臓が悪いとは聞いていたがまさかだった。

そうなのか.....。

俺は眉を顰めながらノアの話を聞く。

すると和代さんが話をした。


「ノア.....の事はより正確に言うと.....孤立を作ったのは私で.....はい.....」


号泣し始めた、和代さん。

ハンカチで目元を抑えながら居た。

すると、母さんが戻って来て俺を見る。


「.....あ、今は.....」


「.....いや、大丈夫だよ。和代さんから話を聞いていたんだ」


「.....そう.....」


複雑な思いを抱いている様に見える....母さん。

お茶を置きながら、お茶菓子も置く。


それから和代さんの前に腰掛ける、母さん。

和代さんは母さんを見つめながら俯いて涙を拭って。

改めて俺達を見つめてきた。


「.....お母様にもご説明致しますね」


「.....はい」


そして.....和代さんは唇を噛んでそれから顔を上げた。

必死そうな顔に見える。

俺は.....顎に手を添えて考えた。



「.....ノアちゃんを預かるのは構いません。でもその.....孤立しているというのが気になります」


「.....そうですね」


俺と母さんは見合って、そう答えた。

そして.....そう質問を投げ掛ける。

和代さんはノアを見て、そして話してくれた。


「.....私は.....先生。つまり.....教師でした。その.....影響でノアを厳しく育ててしまい.....周囲にも厳しく当たって気が付けば私もママ友から.....周囲から孤立してしまって.....知り合いが居なくなってしまって.....そんな中で夫が心臓病で倒れてしまって。.....ノアが言ったんです。初めて自己主張をしたんです。私はここに居たいって。だから尊重をしたくて.....でも.....ご迷惑じゃないかって.....悩んでしまって.....ごめんなさい.....ご迷惑じゃ無いでしょうか.....」


「.....」


「.....」


「私は.....馬鹿でした.....高学歴が全てと思っていて.....自分の母親も父親もみんな見下してしまって.....孤立を生んでしまって.....馬鹿な母親なんです.....」


そのまま和代さんは土下座した。

俺と母さんは顔を見合わせて慌てる。

ノアも土下座した。


「お願いです.....失礼すら通り越して居ますが.....ノアの意見を尊重させて下さい.....!」


「.....和代さん.....」


「.....私も.....お願い」


「.....ノア.....」


俺と母さんは見合う。

そして.....頷いた。

由紀治さんには後で相談するから、と言ってくれて。

俺は.....ノアと和代さんに向いて。


「.....ノア。和代さん。その.....」


と、思っていた時だった。

襖が開いてから。

まさかの皆穂が現れた。

俺と母さんは?!と思いながら皆穂を見る。


「.....ノア」


「.....み、皆穂ちゃん!?いつから.....」


「私.....悪かった。自分の事だけを考えていた。アンタが.....その.....」


モニュモニュしながら皆穂は言葉に詰まる。

それを逆手に取って俺はノアに向いた。

皆穂の頭を撫でる。


「皆穂がオッケーだとさ。ノア。なら俺も大丈夫だ」


「.....有難う。吉くん。皆穂ちゃん」


皆穂は少し居心地が悪そうな顔をしていたが。

笑顔を見せた。

そして.....ノアが俺の家に暫く住む事になり。

俺は.....また賑やかになるな、と思った。

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